【コラム】インドネシアの人々の生活に根付く伝統市場とその役割

日本では食料品や日用品の買い物をする際、スーパーマーケットやコンビニを利用することが多いですが、インドネシアでは食料品や日用品などの必需品を伝統市場で買い物をする人が多く、伝統市場はインドネシアの人々の生活に欠かせない存在となっています。

今回のコラムではインドネシアの伝統市場について紹介していきます。

本コラムの出典は全て以下のインドネシア中央統計局(BPS)の報告書からとなります。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、2019 Profil pasar traditional ,pusat perbelanjaan dan toko modern
(2019年の伝統市場、ショッピングセンターについて)、2020 Direktori pasar dan pusat perdagangan
(2020年の市場とショッピングセンターについてのディレクトリ)より弊社作成(閲覧日:2021年3月2日)

https://www.bps.go.id/publication/2019/12/20/009a7d2cfa9efb6fff751e8a/profil-pasar-tradisional–pusat-perbelanjaan–dan-toko-modern-2019.html
https://www.bps.go.id/publication/2021/02/02/be97de34912c5e34d3a14476/direktori-pasar-dan-pusat-perdagangan-2020-buku-ii–pulau-jawa–bali–nusa-tenggara–dan-kepulauan-maluku.html

 

インドネシアの伝統市場について

今回のコラムで紹介する「伝統市場」について、「買い手と売り手が交渉を通じて売り買いを行う昔ながらの市場」と定義し、ご紹介していきます。

インドネシアにおいて、伝統市場は地域だけでなく国全体の経済に貢献し、沢山の雇用を生み出しています。

また、伝統市場は政府・地方自治体・民間業社・国有企業(BUMN)・地方公営企業(BUMD)によって管理されています。

下図はインドネシアにおける小売業の形態分類別店舗件数です。

2020年の時点で、インドネシアの伝統市場は16,175件と、ショッピングモールやスーパーマーケットの数と比較しても非常に多いことが分かります。

また、インドネシアにおいて伝統市場の数が多い地域は、東ジャワ(2,359件)・中部ジャワ(1,977件)・南スラウェシ(808件)で、少ない地域は、バンカビリトン諸島(75件)・西パプア(73件)・北カリマンタン(71件)となります。

伝統市場の数はその土地の人口に比例する傾向にあるようです。

インドネシアの伝統市場の売場の分類

インドネシアの伝統市場における売場は、市場ブース(Los)、商店(Kios)、移動式屋台(Kaki Lima)の3つに分類されます。

市場ブース(Los)
市場ブース(Los)
商店(Kios)
商店(Kios)
移動式屋台(Kaki Lima)
移動式屋台(Kaki Lima)

市場ブース(Los)は市場の中心の大きな建物の中に入っているブースのことで、商店(Kios)は市場ブースのある大きな建物の周りにある小さなお店のことです。

移動式屋台(Kaki Lima)は、車輪がついていて手押し又はバイクで移動が可能な屋台になります。

売場の分類別割合は下図の通りです。

 

市場ブースと商店がそれぞれ40%の割合を占めており、常設されている場所での売場の割合が約8割を占めていることが分かります。

Kaki Limaと呼ばれる移動式屋台は、市場以外でも学校前やスーパーマーケットの前など様々な場所に移動し販売を行っています。

 

インドネシアの伝統市場で販売されている商品の種類と割合

インドネシアの伝統市場で販売されている商品は、食料品・衣類・タバコ・家電製品など多岐に渡ります。

下図はインドネシアの伝統市場の取扱商品の割合です。

取扱が一番多いのは食料品で、その次に布・衣服と続きます。その他に含まれている商品は、水産物・家電・家畜などです。

食料品の取り扱いが多いことから、インドネシアで食料調達をするうえで伝統市場が活用されていることが読み取れます。

また、インドネシアにおいて伝統市場とは、日本の昔の商店街のような役割を果たしインドネシアの人々の生活を助けていることが分かります。

 

インドネシアの人々が伝統市場で買い物をする理由

近年、インドネシアでもスーパーマーケットやショッピングモールなど便利な小売店が増えていますが、なぜ伝統市場がここまでインドネシアの人々に愛されているのでしょうか。

インドネシアの人々が伝統市場で買い物をする理由として5つの点が考えられます。

1. 取扱商品の種類が豊富

伝統市場では香辛料・家電・制服など専門的なものを扱っているお店が多く、スーパーマーケットやショッピングモールでは買えない商品があることが理由として挙げられます。

2.安価

スーパーマーケットやショッピングモールに比べて価格が安いことが挙げられます。また、値段交渉が可能なため値下げ交渉できることも魅力的なのだと考えられます。

3. 新鮮な食材を見分けやすい

伝統市場の生鮮食品は冷蔵庫に保管されていないため、痛んでいる食材が分かりやすく新鮮な食材を見分けやすいと考えられている点も理由として挙げられます。

4. 移動時間の短縮

伝統市場はその店舗数も多さから人々の家の近くにあることが多く、スーパーマーケットに行き買い物をするより時間の短縮になる点が挙げられます。

5. 社会的交流の場

伝統市場で買い物をする際売り手との会話が必要となり、おしゃべりが好きなインドネシア人にとって伝統市場は大切な社会的交流の場でもあることが挙げられます。

参照:https://www.liputan6.com/citizen6/read/2134934/6-alasan-belanja-di-pasar-tradisional-tetap-menarik

 

便利さや効率を追い求める日本の小売市場とは異なった形で、インドネシアならではの文化として伝統市場が長く続いていることが分かります。

インドネシアの人々にとって伝統市場はなくてはならない存在ですが、まだまだ衛生面やセキュリティー面については課題があります。

特に衛生面で言うと、インドネシアの伝統市場では冷蔵庫が使用されていないことが多く、肉や魚が30度を超える気温の中そのまま陳列されていることも珍しくありません。

年中高温であるインドネシアにおいて、冷凍・冷蔵設備が不十分な点は早急解決すべき課題であるといえるでしょう。

参考コラム:

弊社の冷凍・冷蔵設備に関する取り組みについては、以下の記事も併せてご覧ください。

 

その他、インドネシアの経済が発展するにつれて、衛生面やセキュリティーを気にする顧客も増える傾向にあるため、インドネシア貿易省は伝統市場の在り方を変える必要があると指摘しています。

インドネシア政府は伝統市場の特性は残しつつ、活性化させて競争力を上げていく方法模索しており、「市場の清潔さの維持」「市場の道幅の整備」など伝統市場の近代化に向けて様々な取組みを行っているようです。

参照:https://mediaindonesia.com/ekonomi/324994/pemerintah-akan-terus-lakukan-revitalisasi-pasar-tradisional

 

弊社ではインドネシアの小売市場についてのセミナー開催の経験もございます。

また、オンラインでの調査視察・ヒアリング代行なども実施しておりますので、ご興味がある方は是非お気軽にお問い合わせ下さい。

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

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