【コラム】インドネシアで急成長を見せるTikTok Shop

日本でも若者を中心に利用されている動画投稿サービスTikTok(ティックトック)ですが、インドネシアではその普及率は日本よりはるかに高く、様々な場面で幅広く利用されています。なんと2023年時点のインドネシアのTikTokユーザー数は、アメリカに次いで世界2位の約1億990万人です。インドネシアの総人口は約2億7千万人なので、単純計算でインドネシアの国民の2人に1人以上がTikTokを使っていることになります。

参考:https://worldpopulationreview.com/country-rankings/tiktok-users-by-country(アクセス日:2023/08/30)

近年インドネシアではTikTok上でインフルエンサーによる商品のPRはもちろん、政党の選挙活動まで行われており、プラットフォームとしてますます重要となってきています。
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今回はそんなTikTok大国インドネシアで急拡大する新たなサービス「TikTok Shop」についてご紹介します。

TikTok Shopとは

写真:実際に弊社現地スタッフがTikTok Shopを使っている様子

TikTok Shopは2021年にリリースされた新機能で、TikTokユーザーがアプリを離れることなく、ブランドやクリエイター、企業から商品を購入できるサービスです。従来のShopping機能が、商品を発見した後、ユーザーが企業のウェブサイトなどに移動して購入する必要があったのに対し、TikTok Shopは、商品の発見から購入、支払いまでがアプリケーション内で完結するため、シームレスなソーシャルコマース体験が可能です。
写真のように一般的なECのようにも使用できるほか、TikTokの投稿やライブ配信で紹介されている商品の商品ページに直接飛んでアプリ内で購入・決済まで完了するといった使い方もできます。

TikTokは2023年現在、イギリス・アメリカ・インドネシアを含む東南アジア6ヵ国(インドネシア・シンガポール・マレーシア・フィリピン・ベトナム・タイ)にサービスを提供しています。

(参考:https://asia.nikkei.com/Business/Business-Spotlight/TikTok-takes-on-Shopee-Tokopedia-in-ASEAN-e-commerce-race アクセス日2023/09/04)

2023年現在、日本ではまだTikTok Shopのサービスは提供されていません。また、アプリケーション内でシームレスにショッピングができる機能はInstagram Shoppingにも搭載されているようですが、展開は米国市場に限られています。そのため、ひとつのアプリケーション内でシームレスにショッピングができる大手のSNSは、今のところ東南アジアではTikTokのみのようです。

(参考:https://business.instagram.com/shopping?locale=ja_JP アクセス日2023/09/04)

東南アジアでは、ShopeeやTokopediaといったECのプラットフォームが主力ですが、近年TikTok Shopはそうした既存のECプラットフォームの勢力図を塗り替える勢いで広がっており、インドネシアもその例外ではありません。

東南アジアにおけるTikTok Shopの躍進とインドネシアの存在感

2021年からインドネシアで、その後2022年に東南アジア5か国でのサービス提供を開始したTikTok Shopですが、2022年の1年で流通総取引額(GMV)はおよそ7倍に伸びました。

さらにMomentum Worksのレポートによると、東南アジアにおけるTikTokショップのGMVは2023年までに目標としていた150億米ドルに達すると予測されています。これにより、TikTok Shopは 2023年には東南アジアのEC市場で13.2%のシェアを獲得すると予測されています。これにより、同地域におけるTikTok Shopの市場シェアは、今年のTokopedia(推定13.9%)やLazada(推定17.7%)と同レベルになることになります。

参考:https://www.techinasia.com/tiktok-shop-to-capture-13-2-sea-ecommerce-market-share-report (アクセス日:2023/09/06)

現時点でのGMVは既存のECプラットフォームであるShopeeやTokopediaが上回っているものの、インドネシア、タイ、フィリピンでは、TikTok Shopでの支出の拡大を受けてShopeeでのユーザー支出が51%減少したという報道もあり、TikTok Shopの存在感は日増しに大きくなっています。

参考:https://www.cnbcindonesia.com/tech/20230626012644-37-449097/tiktok-shop-keker-rp-75-t-di-ri-shopee-tokopedia-bisa-panik (アクセス日2023/09/04)

躍進を見せるTikTok Shopの中で重要な存在感を示しているのがインドネシアです。2022年のインドネシアにおけるTikTok ShopのGMVは2021年と比べて4倍近くに増加し25億ドルに達し、東南アジアにおける総額 44 億米ドルのGMVの大部分を占めています。これは2023年にはさらに倍増すると見込まれています。

図:https://dataindonesia.id/digital/detail/gmv-tiktok-shop-di-asean-diproyeksi-tembus-us15-m-pada-2023を元に弊社作成(アクセス日2023/09/04)

インドネシアにおけるTikTok Shopの利用内訳


世界2位の膨大なユーザー数を背景に、今後も成長していくことが見込まれるインドネシアのTikTok Shopですが、実際にどのような用途で利用されているのでしょうか。

Kalodataが調査した結果、2023年の1月から5月にかけてのインドネシアにおけるTikTok ShopのGMVの内訳上位5位は以下の通りです。

TikTok Shop流通取引総額内訳 (2023年1月~5月)
1位 化粧品・スキンケア 5兆810億ルピア (約488億円)
2位 レディースファッション 4兆1,120億ルピア (約395億円)
3位 ムスリムファッション(スカーフなど) 3兆6,600億ルピア (約351億6千万円)
4位 メンズファッション 1兆5,800億ルピア (約151億8千万円)
5位 食料品・飲料 1兆1,200億ルピア (約107億6千万円)

1ルピア=0.0096円として計算(2023/09/04 現在)

出典:https://www.kalodata.com

6位以降には、靴、携帯・電子機器、ベビー用品、子供服などが入っています。

GMVの内訳からわかるように、インドネシアで特に売り上げの多い上位3位は主に女性向け商品です。
理由として、インドネシアのTikTokのユーザー約1億1千万人のうち、約7千300万人、およそ6割が女性であるという人口比の影響も考えられるでしょう。

参考:https://www.statista.com/statistics/1377390/indonesia-number-of-tiktok-accounts-by-gender/ (アクセス日:2023/09/06)

ただそれ以上に、主に女性向けのものが多いコスメやスキンケアなどの商品は、TikTokのライブ配信と相性がよく、インフルエンサーの配信で実際に紹介された商品をその場で買う、というスタイルが定着しやすいことが理由に挙げられます。

元々インドネシアでは、口コミやインフルエンサーのマーケティングで購入を決定する傾向が強く見られます。
インドネシアでは、68%の人々がSNSを利用しており、SNS利用者の1日の利用時間は3時間以上です。
そのため、SNSがきっかけで商品を購入する人も増加しており、オンラインで商品を購入する消費者のうち62%人々の購入のきっかけがSNSでのインフルエンサーの商品紹介であることが分かっています。

そのため、TikTokで実際に動画や配信で商品を見てそのまま購入できることは消費者側にとっても非常に合理的なのだと考えられます。

インドネシアにおけるインフルエンサーマーケティングについては以前こちらの記事でもご紹介しています。

TikTok Shopを通じた売上拡大の可能性

TikTok Shopは、ユーザー側に新しいショッピング体験を提供するだけでなく、商品を販売するブランド側にもより効率的な販売経路を提供できる可能性を持っています。

インドネシアでは、以前からECサイトでの商品販売が、ショッピングモールなどでの対面販売をはるかに上回るという状況が一般的になっています。
一例として、現在インドネシアにおいてTikTok Shopで現在最も売り上げを上げているブランドの一つであるSkintificの例をご紹介します。Skintificはインドネシアで人気のスキンケアブランドで、オンラインだけでなくショッピングモール内のコスメショップなど実店舗での対面販売も行っています。しかし、2023年1月~5月の売り上げの内訳をみると、以下のようになっています。

出典:https://www.kalodata.com

Skintificは売上のほとんどをECに依存しています。商品の購入ではアフィリエイト(インフルエンサーによるアフィリエイトマーケティングがインドネシアでは一般的)からの購入が最も多いほか、自社アカウントからの購入が約3割を占めています。
こうした状況は口コミを重視しインフルエンサーマーケティングが有効なインドネシアの傾向を反映したものと言えるでしょう。元来のECを活用した販路では、こうしたアフィリエイトを行う場合、SNSなどの投稿からTokopediaやShopeeといった販売サイトに飛んで商品の決済を行う必要がありました。

しかし、TikTok ShopではアフィリエイトのSNS投稿を見てその場で決済まで完了できるため、購入までの工数が少なくユーザーの購買意欲を促進しやすいと考えられます。また、他商品の紹介ページや自社アカウントへのアクセスもアプリ内で完結するため、各ブランドは商品同士を組み合わせてディスカウントをつけるなどして顧客当たりの購入金額を増加させています。

実店舗を持たないブランドも増える中で、購入の入り口であるSNSでの商品紹介から購入、決済までワンストップで行うことができるTikTokは、販売の機会を最大化したいブランド側にとってもメリットがあると言えるでしょう。

インドネシアにおける今後のTikTok Shopの展望

ご紹介してきたように、TikTok Shopの販売形態はインドネシアの人々のECを利用した購買行動の在り方と合っており、今後も成長が見込まれます。
しかし一方で現在の課題として、インドネシアTikTokのユーザーの大多数が若年層で購買力が弱いため、安価な消耗品などの販売は進む一方で単価の高い電子機器などの販売は伸びづらい傾向があることなどが挙げられます。ただ、インドネシアではまだユーザー数に伸びしろがあることを考えると、ユーザー層の広がりや経済発展とともに購買力が伸びていくことも考えられるでしょう。

インドネシアのEC業界のゲームチェンジャーとなりうるか、今後も要注目だと言えます。

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弊社インドネシア総合研究所では、インドネシアのECサイトを通じたテストマーケティングから開始する日本製品のインドネシア市場への参入のサポート実績もございます。また、インドネシアで製品を販売するために必要なBPOM(国家食品医薬品監督庁)の許可取得代行や、ハラル認証取得代行も承っております。
インドネシアで自社製品の販路拡大をお考えの皆様、是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問い合わせください。

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-6804-6702

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