【コラム】インドネシアにおける都市部と地方部の教育格差とインドネシア政府のビジョン

現在インドネシアでは様々な教育サービスが展開されていますが、その一方で義務教育の学校教育すら受けられない子供がインドネシアにも一定数存在しているのが現状です。人口増加の著しい中、インドネシア政府は教育格差の問題対してどのようなビジョンを持っているのでしょう?
今回のコラムでは、インドネシアの教育格差の状況とインドネシア政府のビジョンについてご紹介いたします。

教育格差の現状

インドネシアは教育格差の問題に直面しています。例えば2021年の調査では、高等教育を修了した割合は都市部では74.17%ですが、地方部では53.85%にとどまるなど、インドネシアでは特に都市部と地方部の間で大きな差が存在しています。

図“Education completion rate in Indonesia in 2021, by education and urbanization level “より弊社作成
https://www.statista.com/statistics/1298693/indonesia-education-completion-rate-by-education-and-urbanization-level/
(閲覧日2023年7月19日)

また、広い国土を持つインドネシアでは、地方の中でも場所により教育格差の状況に違いがあります。例えば、2022年の調査データでは、15歳以上の人の識字率が最も低いエリアはインドネシアの最東端にあるパプア州で81.19%でした。パプア州は初等教育を受けた人の割合も81.66%とインドネシアの全国平均の97.88%と比べ低くなっています。一方、同じ地方部でありながら、インドネシアの最西端にあるアチェ州はインドネシアの地方都市で、インドネシアにおいて最も高い就学率を誇る州の一つです。アチェ州で初等教育を受けた人の割合は99.07%と首都ジャカルタの98.37%を上回っています。

表Basan Pusat Statistik “Statistik Pendidikan 2022”より弊社作成(閲覧日2023年7月19日)

インドネシアにおける教育格差の原因の一つは、インフラストラクチャーの不均衡です。ジャカルタなどインドネシアの都市部では近代的な学校施設や図書館、プライベートの教育サービスなどが充実しており、最新の教育資源を利用することができます。

一方、パプアなどに代表されるインドネシアの地方部では学校の整備や改善が遅れており、教育に必要な基本的な設備が不足しています。インドネシアでは、義務教育の授業料は無料ですが、制服の購入や学校までの交通費は自己負担のため、地理的な要因や交通インフラの不備も教育格差の要因となっています。

インドネシア政府のビジョン


インドネシア政府は、インドネシアの教育格差の是正に意欲的です。
2023年1月には、インドネシアはグローバル教育パートナーシップ(GPE)に新メンバーとして参加しました。そのGPEの会合で、インドネシア教育省教育基準長のAnindito Anitomo氏は「読み書きや計算などの基礎的な学力を、すべての生徒が身に着けられることがゴール」とコメントし、インドネシアにおける教育の普及へ意欲をしめしました。

参考サイト:
https://www.globalpartnership.org/news/indonesia-joins-global-partnership-education

インドネシア政府は国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向けて2030年までに高品質な教育を提供することを目指しています。更に、インドネシア独自の目標としてはIndonesia Emas 2045(「黄金のインドネシア2045年」)という長期的なビジョンを掲げています。

このビジョンIndonesia Emas 2045は、現在の人口増加を糧にインドネシアが経済的に強力な国家となり、人間の発展において真のリーダーシップを発揮することを目指すビジョンです。このビジョンの中で、高品質な教育の提供が重要な要素とされており、教育格差の解消が目指されています。Indonesia Emas 2045は、インドネシア政府が教育を通じて社会的な公正を促進し、持続可能な発展を達成するための道筋となっています。

参考サイト:
https://www.kompas.id/baca/humaniora/2023/05/04/kesenjangan-pendidikan-tantangan-indonesia-emas-2045

インドネシアの教育格差は都市部と地方部の間で顕著に存在していますが、地域により状況も異なりますので、インドネシアの教育機関について現地視察を行う際や、インドネシアで学校を作る際には現地の最新の状況を踏まえたエリアの選抜が重要です。

弊社インドネシア総研は、東京、ジャカルタ、バンドン、バリに拠点を持ち、インドネシア現地リサーチャーも多数在籍しています。弊社は調査だけでなく、日本企業様のインドネシアでの現地視察のサポートや、日本語学校の設立や運営の実績も多数ございます。
インドネシア進出にご興味がございましたら、どうぞお気軽にこちらからお問い合わせください。

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