【コラム】インドネシアにおけるスタートアップ企業の発展
革新的なアイディアや技術をもって急速に成長を遂げる企業が世界中で注目を集めていますが、インドネシアにおいても、そのようなスタートアップ企業は年々その数を伸ばしています。中には評価額が10億USドルを超えるユニコーン企業、さらには100億USドルを超えるデカコーン企業も存在します。
今回のコラムでは、そんなインドネシアのスタートアップ企業について取り上げます。
インドネシアにおけるスタートアップ企業の傾向
現在のインドネシアにおけるスタートアップ企業の数は、2,100以上あると言われています。その規模は東南アジアの中でも大きく、東南アジアのスタートアップ企業の国別の資金調達率を見ると、その7割ほどをインドネシアが占めています(GrabやLazadaといった国をまたがる企業を除く)。業種では、オンライン決済サービスなどフィンテック関連の企業やECサービスが多く見られます。
2021年末までに、インドネシアでは9社のユニコーン企業が誕生しました。以下の表がその一覧です。これまでに、ECのbukalapakがインドネシア証券取引所に上場しているほか、インドネシア初のユニコーンとして知られていた配車サービスのGojekは、ECサービスのTokopediaと合併し、巨大企業に成長しました。さらに、Travelokaも今後上場を予定しています。J&Tエクスプレスは、東南アジアで最大の評価額となっており、以前本コラムでも紹介した電子マネーのOVOなどもすでに大企業の仲間入りを果たしています。
表:インドネシアの代表的なスタートアップ企業(ユニコーン)
企業名 | 創業年 | 業種 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
1 | Gojek | 2010年 | 配車サービス | 2021年に統合しGoTo Groupに。2022年上場予定。 |
2 | Tokopedia | 2009年 | EC | |
3 | Traveloka | 2012年 | オンライン旅行予約サービス | 上場計画中。 |
4 | Bukalapak | 2010年 | EC | 2021年インドネシア証券取引所に上場済。 |
5 | Ovo | 2017年 | フィンテック | インドネシアのNo.1オンライン決済サービス。 |
6 | J&T Express | 2015年 | 物流 | 時価評価額200億ドル。東南アジア最大のスタートアップ(2021年末時点) |
7 | Xendit | 2015年 | フィンテック | BtoB向けデジタル決済サービスを展開。フィリピン等にも進出 |
8 | Ajaib | 2019年 | オンライン投資プラットフォーム | 国内スタートアップとして最速でユニコーン入り。 |
9 | Kopi Kenangan | 2017年 | 飲食 | 国内32都市に500店舗以上を展開するコーヒーチェーン。 |
参考:
Kompas紙「Kopi Kenanganが加わった2021年インドネシアのユニコーン企業一覧」(2021年12月29日付)
https://tekno.kompas.com/read/2021/12/29/07030097/ketambahan-kopi-kenangan-ini-daftar-startup-unicorn-di-indonesia-pada-2021
また、9社中5社が2021年の1年間に新たにユニコーン入りを果たしていることも特筆すべき点としてあげられます。日本のユニコーン企業は、2021年現在、「スマートニュース」など4社のみです。それと比較しても、インドネシアにおいて昨年だけで5社のスタートアップ企業が誕生したという事実は、目を見張るものがあります。
参考:
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/01/10882d70533a726b.html
https://media.moneyforward.com/articles/6417
https://smeru.or.id/en/content/country-diagnostic-studies-selected-developing-member-countries-ecosystem-tech-startups#:~:text=Indonesia%20is%20home%20to%20a,India%2C%20UK%2C%20and%20Canada.
https://en.vietnamplus.vn/indonesia-has-2100-startups/209658.vnp
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/seichosenryakukaigi/dai8/siryou1.pdf
https://tekno.kompas.com/read/2021/03/30/08280027/startup-asal-indonesia-paling-dilirik-investor-sepanjang-2020
https://startupstash.com/indonesian-startups/
今後注目すべきインドネシアのスタートアップ企業
ユニコーン入り間近のスタートアップ
インドネシアには、今後注目すべきスタートアップがさまざまありますが、その中でもユニコーン入り間近と目されている企業をご紹介します。
Ruangguru(2014年〜)
主に小中高校生向けのオンライン学習プラットフォームを運営する教育系スタートアップです。コロナ禍に急拡大し、これまでの述べユーザー数は2,200万人にのぼっています。現在は英語やスキル学習等にもサービスを広げています。2021年4月時点で、調達額5,500万USドル、シリーズDとなっています。
なお、創業者のBelva Devara氏とIman Usman氏は、2017年に、米『フォーブス』の「30歳未満の30人」コンシューマーテクノロジー部門アジア版に選出されています。
参考:
https://www.ruangguru.com/
Ruangguruについては、過去コラムでもご紹介しています。
Happy Fresh(2014年〜)
インドネシアでは、パンデミック下で生鮮食品のデリバリーサービスも急速に広がりました。そこで使われているアプリのひとつがこのHappyFreshです。複数のスーパーマーケットと契約し、アプリでの注文受付と個人宅への宅配サービスを運営し、2020年ごろから急速に業績を伸ばしています。顧客からのフィードバックを重要視しており、顧客ベースのリピート率が90%に達しています。調達額は6,500万USドル、シリーズDに分類されています。
参考:
https://www.happyfresh.com/
https://www.techinasia.com/rollercoaster-years-indonesian-egrocer-happyfresh
Halodoc.(2016年〜)
オンライン遠隔診療サービスを展開する医療系のスタートアップ企業です。20,000人以上の医師と顧客を結び、診察のほかに医薬品の配送サービスなども行っています。2021年4月には調達額が8,000万USドルに達したほか、ヘルスケア・テクノロジー・リポートにより、世界の健康関連企業コンシューマーテクノロジー部門でトップ100に選ばれています。
参考:
https://www.halodoc.com/
https://www.mobihealthnews.com/news/asia/indonesian-health-tech-startup-halodoc-scores-80m-series-c-funding
https://www.muslimterkini.com/news/pr-90978894/satu-satunya-dari-indonesia-halodoc-masuk-daftar-100-perusahaan-teknologi-kesehatan-top-dunia
以上の3企業にとって、コロナ禍はむしろ成長の後押しになっています。Halodoc.に対するAlodokterなど、ライバル企業も脅威となる中で、今後もこの成長を続けられるかどうかが課題となるでしょう。
女性創業者の活躍
2015年から2020年までの間に、創業者の少なくとも1人が女性であったインドネシアのスタートアップ企業は36社ありました。そのうち、現在までにシリーズBに到達している企業は、Lemonilo(健康食品 2015年〜)、GoWork(コワーキングスペース運営 2016年〜)、Pluang(フィンテック/投資アプリ 2016年〜)の3社のみです。しかし今後、フェムテックなど新たな価値観が広がっていく中で、インドネシアにおいても女性創業者のさらなる活躍が期待できるのではないでしょうか。
参考:
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc259.html
https://theproductguy.co/number-of-indonesian-startup-founded-by-women/
そのほかの観点として、現在著しい成長を見せているスタートアップの多くが首都ジャカルタ周辺に集中している一方で、地方での創業が今後増加すると見る動きもあります。インターネットの普及により、場所を問わない働き方やサービス提供が可能になっているほか、2024年に計画されているカリマンタン島への首都機能移転も後押しになる可能性があります。
スタートアップ企業が目覚ましい活躍を遂げているインドネシアには、ビジネスチャンスがまだまだ豊富にあると言えるでしょう。しかし、実際に起業する際には、インドネシアの最新の市場動向や複雑な法律の理解など、専門的な知識が必要となります。
弊社では、インドネシアにおける起業サポートも行っています。ご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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