【コラム】インドネシアの人々の主食である米の最新状況と今後の課題

米はインドネシアの人々の主食であり、インドネシア料理には米に合わせて食べるおかずが数多く存在します。

インドネシアの米は日本の粘り気のある米とは違い、粒が細く粘り気が少ないのが特徴です。

インドネシアにおける2020年の米の年間消費量は一人当たり94.9kgで、これは日本の年間消費量56.5kgの約1.6倍です。

しかし、近年では人口増加から米の生産量が国内の需要に追い付かず、インドネシア農業省は米だけでなく、インドネシア国内で生産されるその他の食材も消費を増やしていく、というプログラムを発表しています。

今回のコラムでは、インドネシアの人々の食生活を支えている米の生産量や収穫量、更に主食についての今後の課題をご紹介していきます。

参考:https://ekonomi.bisnis.com/read/20200909/12/1289448/konsumsi-beras-ditargetkan-turun-177-juta-ton-pada-2024
http://www.nohken.or.jp/KOUENKAIKIROKU/No.8_2020/kobetsuPDF/2020-3_aoyagiitsuki.pdf

 

インドネシアにおける米の生産量

下図は、2018年と2019年におけるインドネシアの米の総生産量の比較です。

出典:Luas panen dan produksi padi di Indonesia 2019を基に弊社作成(閲覧日:2021年5月30日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/12/01/21930121d1e4d09459f7e195/luas-panen-dan-produksi-padi-di-indonesia-2019.html

 

インドネシアにおける2019年の米の総生産量は、31.31万トンでした。

2018年の総生産量33.94万トンと比較すると、2.26万トン減少しており、割合で見ると約7.75%の減少となります。

以下はインドネシアの2019年と2020年の月単位の米の生産量の推移です。

インドネシアの気候は高温多湿のため、1年を通して米の生産を行うことが可能です。

出典:Luas panen dan produksi padi di Indonesia 2019を基に弊社作成(閲覧日:2021年5月30日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/12/01/21930121d1e4d09459f7e195/luas-panen-dan-produksi-padi-di-indonesia-2019.html

 

上図より、インドネシアでは年間を通して2019年の生産量が減少していることが分かります。

また、年間で一番生産量が多いのは雨季(10月〜4月)に当たる3月であることが読み取れます。

 

インドネシアにおける米の収穫面積について

下図は、2018年と2019年におけるインドネシアの米の収穫面積の比較です。

出典:Luas panen dan produksi padi di Indonesia 2019を基に弊社作成(閲覧日:2021年5月30日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/12/01/21930121d1e4d09459f7e195/luas-panen-dan-produksi-padi-di-indonesia-2019.html

 

インドネシアにおいて2019年の米の総収穫面積は、1068万ヘクタールでした。

2018年の総収穫面積1138万ヘクタールと比較すると、70万ヘクタール減少しており、割合で見ると約6.15%の減少となります。

下図は、2018年と2019年のインドネシアにおける米の収穫面積の推移です。

出典:Luas panen dan produksi padi di Indonesia 2019を基に弊社作成(閲覧日:2021年5月30日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/12/01/21930121d1e4d09459f7e195/luas-panen-dan-produksi-padi-di-indonesia-2019.html

 

インドネシアにおける米の収穫面積の推移は上述の米の生産量と比例しており、最も収穫面積が多い月は2018年、2019年共に3月となります。

また、2018年と2019年の収穫面積を月毎に比較しても2019年は2018年より収穫面積が少ない月が多く見られます。

2019年の米の生産量・収穫面積が減少した理由として2019年初めに起こった異常気象による洪水や、長期の干ばつが原因と予想されています。

参考:https://www.aa.com.tr/id/ekonomi/bps-produksi-beras-selama-2019-capai-31-31-juta-ton/1723793

 

インドネシアにおける米の消費量と生産量について

インドネシアの人口は現在世界第4位で、現在も増加し続けています。

それに伴い、主食である米の消費量と需要は年々増え、2019年には1年間でインドネシア全体の米の消費量は2,960万トンとなりました。2018年時点の米の消費量は2,957万トンだったため、1年間で3万トン増加しています。

一方、2019年のインドネシアの米の生産量は1年間で3,131万トンで、消費量より生産量が153万トン上回る数字となっています。

しかし、今後更にインドネシア国内の人口が増加するにつれ米の生産量が消費量に追いつかなくなるとインドネシア政府は予想しており、インドネシアの農業省は2024年までに、全国の米の消費を7%減らすことを目標に掲げています。

 

課題「インドネシアにおける米の消費を減らす取り組み」

インドネシア農業省のアグン・ヘンドリアディ長官は、「米の消費を減らすためには、米以外の地元の食料の消費を増やす必要がある。」と述べており、日本やタイの年間の消費量を例に、地産地消を呼びかけています。

インドネシア農業省はインドネシアで米の代わりなる食料として、トウモロコシ、バナナ、キャッサバ、じゃがいも、サゴヤシ、里芋の6つを候補として挙げています。

この6つの食料が米の代替えとして期待されている理由としては、2015年から2019年にかけてインドネシア国内の消費量が停滞している一方で、生産量は徐々に増加しているためです。

インドネシア農業省は国内の米の消費量7%減という目標を達成するために、以下のような流れで計画を立てています。

 

2020年〜2021年

・米の代替え品となる上記の6つの食材の状態の良い種子・苗木を農家へ提供し、また肥料も提供することで食料を栽培する母数を増やす。

・毎月1日は米を食べないようにする運動を行ったり、地元のホテルやレストランにおいて米以外の地域の食材を提供するキャンペーンを展開する。

 

2022年〜2023年

・米の代替え品とする6つの食料の状態の良い種子・苗木を農家へ提供を引き続き行う。

・地元の食材の消費を増やすキャンペーンを引き続き行う。

 

2024年

・6つの食料の生産量の増加。

 

このように農業省は、米の消費量を減らすためにまずは上記6つの食料の生産量を増やし、段階的に米の消費量を減らす計画を立てています。

単純に米の消費量を減らすのではなく、米が唯一の炭水化物の供給源とならないよう依存度を減らし、更に地元の食材で自給自足・地産地消ができるようにすることが期待されています。

インドネシア農業省は、インドネシアは地元の食材が豊富で、食の多様性があるため、このプログラムには大きな可能性を秘められていると述べています。

参考:https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2018/10/25/data-bps-neraca-beras-nasional-2018-diperkirakan-surplus-285-juta-ton#:~:text=Adapun%20konsumsi%20beras%20nasional%20periode,mencapai%2029%2C57%20juta%20ton.
https://ekonomi.bisnis.com/read/20200909/12/1289448/konsumsi-beras-ditargetkan-turun-177-juta-ton-pada-2024
https://www.suarakarya.id/detail/115030/Genjot-Diversifikasi-Pangan-Kementan-Target-Konsumsi-Beras-Turun-7-Persen

 

インドネシアでは、元々米や麺がよく食べられていますが、「米を食べないと食事をしたことにならない」と言われるほど、米を食べる文化が強く根付いていました。

しかし、近年では、特に中間層の拡大から食生活が多様化し、パンやそれ以外の食材なども主食として徐々に消費されるようになってきています。

インドネシアは人口増加が続き、2050年には人口3億人を超えると予測されているため、安定的な食糧の供給は急務とされており、インドネシア農業省はインドネシア国内の更なる食の多様化が国内の安定的な食糧供給の課題解決策の一つとしています。

 

弊社ではインドネシアに米に関するセミナーの実績もございます。

ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

 

インドネシアの米に関する過去のコラムはこちらからご覧ください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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