【コラム】インドネシアの人々の読書の習慣と図書館事情
読書文化は、様々な情報へのアクセスができることや、様々な分野の知識を深められることから非常に重要な役割を果たしています。
今回のコラムでは、インドネシア人の読書の習慣と、インドネシア国内の図書館事情をご紹介します。
インドネシア人の読書の習慣と読まれている本の種類
以下は年代別で見たインドネシアで過去1週間以内に読書をした人の割合を示すグラフです。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Statistik Sosial Budaya 2021(社会文化に関する統計2021)」より弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/2022/06/30/6a2dabc16d556ab9d075f918/statistik-sosial-budaya-2021.html
インドネシア中央統計局(BPS)の調査によると、学校で教育を受けている年齢層(7-18歳)が最も読書率が高いですが、年齢層が上がるにつれて読書率が下がり、60歳以上の人口の読書率が最も低いことがわかります。7-18歳の層は、学校で読書活動をしているため読書率が高く、また高齢者層の読書率の低さは読み書きができない人口が他の層と比べて多いことが理由として挙げられます。
では、インドネシアの人々はどのような本を読んでいるのでしょうか。
以下は、過去1週間以内に読書をしたと回答した人が読んだ本の種類を年代別で示したグラフです。
出典:インドネシア統計局(BPS)、「Statistik Sosial Budaya 2021(社会文化に関する統計2021)」より弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/2022/06/30/6a2dabc16d556ab9d075f918/statistik-sosial-budaya-2021.html
インドネシアはイスラム教徒が最も多いため、読まれている本もコーランが最も多いという結果になりました。全体の平均でみるとコーランに次いで多いのが専門書、その次に多いのが新聞という結果となっています。
インドネシア教育文化省は、国家開発計画庁(PPN/Bappenas)と協力して文化開発指数(IPK/Indeks Pembangunan Kebudayaan)を開発・導入しており、これは国及び地域レベルでの文化的発展の達成度を測定する手段となっています。この文化開発指数において、インドネシアの識字文化の発展度合を測定するための指標の一つが「コーラン以外を読んでいる10歳以上の人口の割合」となっています。
出典:インドネシア統計局(BPS)、「Statistik Sosial Budaya 2021(社会文化に関する統計2021)」より弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/2022/06/30/6a2dabc16d556ab9d075f918/statistik-sosial-budaya-2021.html
2021年の調査では、コーラン以外の書物をよんでいる10歳以上の割合は51.10%となっており、これは2018年の45.72%より増加していることがわかります。
インドネシア国内の図書館
読書活動を推進するための手段の一つとして図書館が挙げられますが、インドネシアにはどのくらいの図書館があり、どのくらい活用されているのでしょうか?
インドネシアには一般的な図書館のほかに、地域の読書センター(TBM、Taman Bacaan Masyarakatの略)があります。この読書センターは教育文化省のプログラムで、子供たちが本を読んだり、議論をしたり、書いたりする活動を促すことを目的としており、雑誌、新聞、コミック、その他さまざまな書籍が用意されています。読書センターの存在は、教育機関や図書館にアクセスしづらい地域での活動を支援しており、例えば、公民館や公園、モールなどでも開催されることがあります。
インドネシアにおいて過去3か月以内に図書館もしくは読書センターを活用した5歳以上の割合は以下のグラフの通りです。
出典:インドネシア統計局(BPS)、「Statistik Sosial Budaya 2021(社会文化に関する統計2021)」より弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/2022/06/30/6a2dabc16d556ab9d075f918/statistik-sosial-budaya-2021.html
新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出規制などにより、過去3か月以内に図書館もしく読書センターを活用した人の割合はこの4年で減少してしまっていますが、インドネシア国立図書館や教育省としては、今後人々の図書館や読書センターの利用を増やしていきたい意向です。
インドネシア中央統計局(BPS)によると、2021年時点でインドネシア国内には16万件以上の図書館が存在しています。
その中で、インドネシア国立図書館より認定を受けている図書館の数は2021年時点で10,794件です。
出典:databoksより弊社作成
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2022/06/20/indonesia-miliki-10794-perpustakaan-terakreditasi-pada-2021
州別でみると、東ジャワ州はインドネシア国内でも認定図書館の数が最も多く、州内に1,658の認定図書館があります。一方、マルク州と北マルク州は図書館が最も少なく、認定図書館は13しかありませんでした。
このように、図書館へのアクセスには地域差があることがわかります。
インドネシア国立図書館の局長Joko氏によると、現在インドネシア全土の公立図書館にある本の数は約2,800万部にしかすぎず、これはインドネシアの総人口2億7000万人に対して約10%にしか満たず、圧倒的に蔵書数が足りないことがわかります。
理想的な蔵書数はその国の全人口の2倍以上といわれており、例えば日本では全国の図書館の蔵書数は4億1889万冊で、これは人口一人当たりに対して3.3冊です。
Joko氏によると、読まれている本の数、頻度、読書時間やインターネットからの図書館のアクセスなどの分析に基づくと、インドネシアにおける人々の読書への関心は年々高まっている傾向にあり、最新のデータでは全人口の56%が読書に関心があるという結果が出ているようです。
インドネシア国立図書館は電子図書館「e-resources」を導入していますが、Joko氏によると最新のデータから利用している層の多くは上位中間層となっており、図書館へのアクセスの増加はコミュニティの経済的、社会的、文化的な充足を高めると考えられていることから今後は特に貧困層が多い地方での電子図書館へのアクセスを増やしていくことを課題としています。
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