【コラム】インドネシアにおける公的医療保険制度について

公的医療保険とは、医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことで、日本における公的医療保険制度はすべての国民が公的医療保険に加入する”国民皆保険制度”となっています。

この制度が完成した1961年から現在に至るまで、日本では誰でも保険医療を受けられる体制が整っていますが、インドネシアにおいて医療保険制度はどのようになっているのでしょうか。

今回のコラムではインドネシアにおける公的医療保険制度についてご紹介していきます。

参考: https://www.med.or.jp/people/info/kaifo/history/

インドネシアにおける公的医療保険制度

インドネシアでは、2014年以前全国民を対象とした社会保障制度は整備されておらず業種ごとに異なる組織が運営していましたが、2014年に公布された法律第40号によって社会保障制度が統一されました。

 

公的医療保険制度については、BPJS(Badan Penyelenggara Jaminan Sosial)という公共事業団体が主体となり、国民皆保険を目指した新しい公的医療保険制度が施行されました。

この制度によって全国民・6ヶ月以上インドネシアで働く外国人を対象に、加入者は窓口負担を原則無料で医療を受けることが可能となりました。

参考: https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/15/dl/t5-02.pdf

インドネシアの公的医療保険制度を担う団体BPJSとは

インドネシアの公的医療保険制度を担っているBPJSは非営利の公共事業団体で、以下の2つの機関によって構成されています。

1、 医療保険実施機関:BPJS-Kesehatan

日本の健康保険にあたる医療保障の業務を担当している機関。

2、 雇用保険実施機関:BPJS-Ketenaga kerjaan

就業中の事故や死亡における医療保障、業務や年金にあたる業務を担当している機関。

 

BPJS-Kesehatan、BPJS-Ketenaga kerjaanは機関名だけではなく、保険制度の名称としても使用されております。

以下では、医療保険(BPJS-Kesehatan)について見ていきます。

参考: https://hrnote.jp/contents/global/bpjs-indonesia200626/

医療保険制度BPJS-Kesehatanについて

2020年時点でインドネシアにおける医療保険制度BPJS-Kesehatan加入率はインドネシア全人口の約83%となっています。

 

BPJS-Kesehatanの被保険者資格は、前述の通り全国民と6ヶ月以上インドネシアで働く外国人となっています。

また、BPJS-Kesehatanが提携している医療機関は無料で利用することができますが、提携外の医療機関については全額自己負担となります。

保険料の支払いについては以下のカテゴリーに分けられ、被保険者の支払う金額や割合はどのカテゴリーに属すかによって変わってきます。

(1) 公務員、軍人、警察官等(PPU)

雇用主と被保険者が月給の5%分を保険料として支払う。(雇用主負担:3% 被保険者負担:2%)

(2) その他の賃金労働者(PD Pemda)

雇用主と被保険者が月給の5%分を保険料として支払う。(雇用主負担:3% 被保険者負担:2%)

(3) 非賃金労働者(PBPU)及び非労働者(BP)

雇用主と被保険者が月給の5%分を保険料として支払う。(雇用主負担:4% 被保険者負担:1%)

(4)貧困層(PBI JK)

政府によって全額支払われる。

また、保険料の支払いは、毎月10日までに支払うよう定められています。

参考:https://bpjs-kesehatan.go.id/bpjs/pages/detail/2014/11
https://bpjs-kesehatan.go.id/bpjs/pages/detail/2014/13

医療保険制度BPJS-Kesehatan加入により利用できるサービス・利用の流れ

医療保険制度BPJS-Kesehatanに加入すると提携している医療機関において、以下の医療行為がキャッシュレスで利用が可能となります。

 

(1)一次医療(風邪や腹痛など)日常的な疾病による外来・入院

(2)二次医療(ガンや心臓病など)専門性の高い病気による外来・入院

(3)出産時の産婦人科の利用

(4)集中治療室での治療

(5)救急車の利用(病院紹介時のみ)

参考:https://hellosehat.com/sehat/asuransi/cara-menggunakan-bpjs-kesehatan/

 

医療保険制度BPJS-Kesehatanを利用するための受診の流れ

一次医療機関として定められている保健センターなどの医療機関へ診察に行き、高度な医療行為を受ける必要がある場合は、二次医療機関として定められている医療施設への紹介状を作成してもらう必要があります。

 

ただし、救急患者は紹介状不要となっています。

BPJSに加入している日本人がインドネシア現地で病院へ行く際、BPJS提携の病院であるかという点と一次医療の医療機関に一旦赴き紹介状をもらう手順を踏む点は覚えておく必要がありそうです。

日本の公的医療保険制度と比較すると、医療保険が適応される病院が限られている点など改善すべき点が多いのが現状ですが、インドネシア政府は2021年度においても貧困層の公的医療保険制度への補助を出すことを示しており、インドネシアにおいて今後力を入れていく分野だと考えられます。

参考:https://www.cnnindonesia.com/ekonomi/20200515143938-78-503758/salah-kelola-akar-masalah-bpjs-kesehatan-bukan-iuran
https://www.bpjs-kesehatan.go.id/bpjs/post/read/2020/1768/Tahun-2021-Pemerintah-Tetap-Berikan-Bantuan-Iuran-Bagi-Peserta-JKN-KIS-Mandiri-Kelas-3

 

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