【コラム】たばこ大国インドネシアにおける今後の喫煙者数の予測と今後の展望

インドネシアは世界第3位の喫煙者数を誇るたばこ大国です。弊社のウェブニュースでは、これまでにもインドネシアのたばこ規制や電子たばこについて取り上げてきました。

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インドネシアは喫煙者数が多く、インドネシアの家庭の支出で見ると、食費の中で加工食品の次にたばこの消費が多いというデータがあります。

図:“BPS Statistics Indonesia”より弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/2023/06/23/ff7dcfef2c72cc9979b8b971/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia–september-2022.html
(閲覧日2023年7月11日)

各国の喫煙者の推移予想を行った近年の調査によると、多くの国で喫煙者が今後減少されると予測される中で、調査を行った国の中では唯一、インドネシアで喫煙者が増加傾向にあることを明らかにしました。

図:databoks “Mayoritas Negara Mengalami Penurunan Jumlah Perokok dalam Sedekade ke Depan, Kecuali Indonesia”より弊社作成
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2023/06/05/mayoritas-negara-mengalami-penurunan-jumlah-perokok-dalam-sedekade-ke-depan-kecuali-indonesia
(閲覧日2023年7月11日)

インドネシアでは、なぜ喫煙者が増えているのでしょうか?今回のコラムでは、たばこ大国インドネシアにおける今後の喫煙者数の予測と展望ついてご紹介いたします。

インドネシアの喫煙者の特徴と若年層の喫煙

まず、インドネシアのたばこ事情の1つ目の特徴として、若年層(13歳から18歳)の喫煙者率が高いことが挙げられます。インドネシアでは18歳未満へのたばこの販売は法律で禁止されていますが、インドネシアの若年層の喫煙率は38.3%と、他の東南アジア諸国と比較しても非常に高くなっています。(2019年のデータ)

インドネシア 38.8%
マレーシア 20.6%
タイ 17.2%
ミャンマー 17%

図:BPM“Public Health The influence of anti-smoking messages to Indonesian youth smoking behavior: the Indonesian 2019 Global Youth Tobacco Survey (GYTS)”より弊社作成
https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12889-023-15830-5
(閲覧日2023年7月11日)

2023年から禁止されましたが、以前は屋台などでのたばこのばら売りも行われており、経済的余裕のない未成年者のたばこ購入を可能にしていました。また、13歳以下の子供の喫煙もインドネシアでは社会問題となっています。

インドネシアのたばこ産業の状況/所得の向上とたばこの消費

インドネシアのたばこ市場は、現在成長傾向にあります。
2011年と2021年にインドネシア健康保健省はインドネシア国内の9156人を対象に成人たばこ使用調査(Global Adult Tobacco Survey – GATS)を行いました。その調査結果によると、2011年から2021年の10年間でインドネシアの成人喫煙者の数は6030万人から6910万人へと約880万人増加していました。

インドネシアにおける喫煙者増加の背景には、人口増加と所得の向上が考えられます。
所得の向上がたばこの消費に与える影響については、2021年のTID(Tabacco Induced Diseases)の調査によって、インドネシアで低所得から中所得者の層では所得が増えるほど、喫煙率と喫煙本数が増える傾向があることが分かっています。下の図からもわかるように、最高所得層を除いて、所得が増えるほど喫煙者の割合と一人当たりのたばこの喫煙本数が増加しています。つまり、経済成長により国民全体の所得が向上している現在のインドネシアの状況は、たばこ市場にとって大きな追い風になっています。

図:Tabacco Induced Diseases“Good intentions, unintended outcomes: Impact of social assistance on tobacco consumption in Indonesia”より弊社作成
http://www.tobaccoinduceddiseases.org/Good-intentions-unintended-outcomes-Impact-of-social-nassistance-on-tobacco-consumption,132966,0,2.html#f0001
(閲覧日2023年7月11日)

また、TIDは同調査の中で、所得の向上に関して、インドネシアにおいてたばこを購入できる経済状況の人が増加した要因の一つとしてインドネシア政府の社会援助プログラムを指摘しています。
調査によると、社会援助プログラムによりインドネシア政府から現金給付を受けた貧困層で、たばこの1人当たりの消費量が 1 週間で平均 2.8 本増加していました。

禁煙に向けた政府の対応

喫煙者数が増加傾向にあるインドネシアですが、政府は若年層の喫煙を憂慮しています。2020年7月に開かれたウェビナー「新型コロナウイルス感染症パンデミックにおけるタバコ文化からの子供の権利の保護と実現」において、インドネシアの社会大臣ジュリアリ氏は子供の喫煙を防ぐために以下の3つのポイントについて紹介しました。

一つ目:子供のたばこへのアクセスを制限することが必要。とくにタバコのばら売りの禁止。
二つ目:喫煙は麻薬への入り口。
三つ目:タバコの価格と税金の値上げが必要。

一つ目のたばこのばら売りについては、先にも述べたように2023年から法律で禁止されるようになりました。また、三つ目の税金の値上げについては、2023年1月1日から10%追加で値上がりしました。たばこの税率は今後も段階的に引き上げられる予定で、2024年には更に追加で10%値上がりすることが決まっています。

参考:
https://kemensos.go.id/en/social-minister-protect-indonesian-children-from-the-dangers-of-cigarettes
https://tobacconomics.org/blog/2023-brings-tobacco-tax-increases-around-the-world/#:~:text=Beginning%20in%20Asia%2C%20Indonesia%20continues,effort%20to%20reduce%20youth%20smoking.

今後の展望

これまでに見てきたように、インドネシアのたばこ市場は人口増加と経済成長によって支えられ、安定した規模を保っています。
その一方、若年層の喫煙についてはインドネシア政府も問題意識を持っており、たばこのばら売りの禁止や税率の引き上げといった施策がこの数年で次々と導入されている状況です。

若年層の人口増加、所得の増加といったインドネシアのたばこ市場へのプラスの要因は今後も続く見通しですが、政府の取り組みがどのようにインドネシアのたばこ市場に影響を与えるのか、今後の市場の動きに注目する必要があります。

弊社インドネシア総合研究所は、インドネシアのジャカルタ、バンドン、バリにもオフィスがあり、現地の状況をリアルタイムで収集し最新情報をお届けしています。市場調査やアドバイザリー、現地視察のアレンジなど、様々な形で御社のインドネシア進出をサポートいたします。ご興味がある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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