【コラム】養鶏事業レポート②―インドネシアの養鶏場ナンタラ・ファームのご紹介

養鶏はインドネシアの重要な産業の一つであり、国内での鶏肉の消費も増加傾向にあります。今後、経済成長を受けて、インドネシア国内のタンパク質の消費はさらに増加する見込みであることから、効率的な養鶏技術の重要性はますます高まっています。今回のコラムでは、最新技術を取り入れながら安心で効率性の高い養鶏場を経営し、インドネシアで養鶏の最先端を行く企業の一つであるナンタラ・ファームの事業をご紹介いたします。

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インドネシアの養鶏場ナンタラ・ファームの概要


ナンタラ・ファームはCEOのブディ・トリ・ウィボウォ氏によって2018年に設立されました。ブディ氏はバンドン工科大学で生産工学を学び、シンガポール国立大学で経営管理について学んだという技術・経営の両方に通じるバックグラウンドを持っています。その後は18年以上多国籍企業で勤務し、エンジニアリングやITの分野で経験を積んだ後、ナンタラ・ファームを設立しました。

【ナンタラ・ファームのこれまでの歩みとこれから】

2012~2018年 2019~2022年 2023~2025年
手法 伝統的な農場 現代的な農場へ転換 他機関と事業連携
鶏の数 5000羽 20万羽 100万羽
投資額 20億ルピア 200億ルピア 1000億ルピア
年間収益 15億ルピア 600億ルピア 3000億ルピア


伝統的な養鶏場

(出典:https://nantarafarm.id/overview-bisnis/ )


現代的な養鶏場

(出典:https://nantarafarm.id/overview-bisnis/ )

【伝統的養鶏場の特徴】

・予測不能な天候や自然条件に依存しており、鶏の健康状態に悪影響がある
・給餌は手作業のため、非効率で不衛生
・鶏の死亡率が高く、生産性が低い

【現代的な養鶏場の特徴】

・鶏の成長段階に応じてケージ内の温度と空調を調整でき、鶏が健康を維持できる
・給餌・給水の自動化により効率的・衛生的な管理が可能
・鶏の死亡率を減少させ、生産性を97%まで向上。

成功要因
良好な環境条件(温度、空気、湿度)
鶏の成長に必要な栄養の補給(飼料、水、ビタミン)

ナンタラ・ファームは、2018年以前には伝統的養鶏場を用いた養鶏をしていたため、収容可能な鶏の数も限られており、衛生状態や温度管理などの要因から死亡率も高く、効率性や利益率は高いとは言えませんでした。しかし、2019年以降に効率的な管理を可能とする現代的な養鶏場を導入してからは、収容可能な鶏の数も増加し、利益率も増大しました。そして、今年2023年以降は大学などの他機関と連携を開始し、より最先端の技術を養鶏に取り入れ始めています。

参考:資料「Nantara Soken (2023-06-28)」
https://nantarafarm.id/profil-nantara-farm/

インドネシアのナンタラ・ファームが導入する現代的な養鶏場

ナンタラ・ファームは、伝統的な養鶏場から現代的な養鶏場への転換を経て、利益を増やしてきました。この現代的な養鶏場の導入によって養鶏の効率性は大幅に向上しましたが、どのような利点があるのか、以下に各観点から紹介しています。

自動給餌・給水システム

冷却パッド

排気ファン

【メンテナンスが容易】
・給餌・給水の自動化
・温度・湿度の設定の容易化、自然環境への依存を無くす

【鶏の成長を補助】
・鶏の成長に合わせたケージの調整
(子どもの鶏は温度を高く設定し、成長した後は温度を低く設定)

【死亡・病気のリスク低減】
・酸素吸入とアンモニア排出の調整の最適化
・給餌・給水・ビタミン補給の容易化

【環境への配慮】
・アンモニアや鶏の糞尿の臭気を抑制
・計画的な鶏の糞尿の処分

【収益最大化】
・飼育過程が管理・制御されているため、利益の最大化が可能

参考:https://nantarafarm.id/profil-nantara-farm/

インドネシアのナンタラ・ファームの今後の事業展望


インドネシアでは、養鶏市場の市場規模は129兆ルピアとも言われており、今後も成長が見込まれていることから、まだまだ参入や投資の余地がある注目の産業です。将来の事業成長を見込んで、ナンタラ・ファームでは以下のような目標を設定しています。今後は100万羽規模の養鶏場へ拡大することを目指しており、そのために22の養鶏場を設置することを計画しています。また、総利益3000億ルピア、市場全体の2.4%をナンタラ・ファームの鶏肉が占めることを目標としています。
養鶏は最新の技術の導入によって効率化が可能ですが、一方で専門的知識を持つ畜産業従事者も重要な存在です。優秀な畜産業従事者の確保を可能とするため、ナンタラ・ファームでは独自の畜産業従事者の育成に向けた研修センターや実習プログラム、大学との連携などの育成プログラム構築を計画しています。

参考:資料「Nantara Soken (2023-06-28)」
https://nantarafarm.id/profil-nantara-farm/


今回はインドネシアで養鶏事業を営むナンタラ・ファームの事業に関してご紹介いたしました。インドネシアでは養鶏は非常に注目されている産業の一つですが、生産プロセスを覗いてみると、鶏の飼育や管理の観点で多くの課題があります。ナンタラ・ファームではこのような課題を分析し、現代的な農場の導入によって改善を図ってきました。農業や畜産業において、限られた土地や資金で効率良く生産をするためには、テクノロジーと上手に付き合うことが重要です。インドネシアで今後も大きな成長が見込まれる養鶏や農業分野への投資や技術移転にご関心がおありの事業者の方々、ぜひ弊社までお問い合わせくださいませ。

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