【コラム】養鶏事業レポート①-インドネシアの鶏肉市場と養鶏事業
インドネシアは養鶏業が盛んな国の一つです。養鶏はインドネシアの農業部門において重要な産業の一つであり、雇用の創出や食料供給に貢献しています。インドネシアにおける鶏肉の市場は約1兆2000億円であり、これからGDPが増加するにつれてタンパク質の消費が増えると見込まれ、鶏肉の需要は高まると考えられています。今回、弊社ではインドネシアの養鶏事業や、最新テクノロジーを駆使した収益性や持続可能性が高い養鶏事業に関してシリーズに分けてお伝えいたします。今回のレポートでは、インドネシアにおける鶏肉市場と消費、そして養鶏事業の概況に関してお伝えいたします。
インドネシアにおける鶏肉市場と消費量
(出典:インドネシア中央統計局データより弊社作成)
(出典:JPFA Investor Report 2023より弊社作成)
(出典:インドネシア農業省「OUTLOOK KOMODITAS PETERNAKAN DAGING AYAM RAS PEDAGING」より弊社作成)
インドネシアは人口が多い国であり、鶏肉は一般的な食材として広く消費されています。国民の9割以上がイスラム教徒であるインドネシアにおいては、鶏肉は宗教教義上の忌避すべき食品にもあたらず、牛肉よりも安価であるため人気があります。インドネシアでの鶏肉生産額は約17兆円ともいわれており、2022年には376万5573トンのブロイラー肉が生産されました。
また、1人あたりのブロイラーの消費量ものびており、2012年時点では年間1人あたり3.49kg程度であったのが、2021年時点では6.55kgと、約2倍弱になっています。アジア圏における家禽肉(鶏・七面鳥・アヒルなどの鳥の肉)の消費量も、年間1人あたり8.2kgで第5位です。インドネシアは経済成長も著しく、GDPも年々成長していることから、食肉消費も増えると見込まれます。
日本との関わりにおいても、2004年に鳥インフルエンザの発生により10年ほどインドネシアからの鶏肉の輸入が禁止されていましたが2014年に日本への輸出も再開されました。日本においてもインドネシアの鶏肉も私たちの身近な存在となりつつあり、インドネシアの鶏肉市場からは今後も目を離せません。インドネシアにおける鶏肉の流通や消費に関する詳細は、関連記事「【コラム】インドネシアにおける鶏肉の流通とその特徴」や「【コラム】クラウドキッチンは鶏肉料理が正解?!な理由」をご覧ください。
参考サイト:
https://www.bps.go.id/indicator/24/488/2/produksi-daging-ayam-ras-pedaging-menurut-provinsi.html
https://jp.reuters.com/article/indonesia-japan-poultry-idJPKBN0GK12820140820
https://satudata.pertanian.go.id/assets/docs/publikasi/Outlook_Ayam_Ras_Pedaging_2022_Final.pdf
関連記事:
インドネシアにおける養鶏事業と課題
【インドネシアにおけるブロイラー5000羽あたりの養鶏コスト(単位:百万ルピア)】
粗収益 | 175.951 |
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生産コスト合計 | 127.407 |
【生産コスト内訳】 | |
労働賃金 | 12.192 |
飼料 | 72.576 |
ヒナの購入 | 28.88 |
電気 | 0.745 |
水 | 0.515 |
予防接種 | 2.737 |
燃料 | 1.415 |
減価償却費 | 6.047 |
その他 | 2.297 |
(出典:インドネシア中央統計局「Peternakan Dalam Angka 2022」より弊社作成)
(出典:インドネシア中央統計局「Peternakan Dalam Angka 2022」より弊社作成)
インドネシアでは1980年代以降、食肉需要の増加をうけ、ブロイラーの飼育が盛んになりました。現在、インドネシアでは家禽類の飼育はブロイラーが8割を占め、その次に在来種の地鶏、産卵鶏が多くなっています。また、2021年のデータでは、インドネシアにおいて養鶏を営む法人は385社あり、養鶏に従事する人の数は1万9,266人います。そのほかに小規模の養鶏場は1万軒以上あるといわれています。また、ブロイラー5000羽あたりの生産コストは1億2740万ルピア(日本円で約119万円)であり、コストの内訳では飼料とヒナの購入で8割程度となっており、予防接種なども含まれています。粗収益は1億7595万ルピア(日本円で約164万円)となっています。
(出典:弊社資料より作成)
ブロイラーの飼育には上記のようなコストがかかりますが、その他にブロイラーの致死率も生産コストに影響し、養鶏場の運営における大きな課題です。一般的にインドネシアでは養鶏場の致死率は5%程度といわれています。ブロイラー死亡の原因は病気や空気循環、温度・湿度、衛生管理など複数の要因があります。1つの養鶏場でおおよそ4万羽程度が飼育されていることを考えると2000羽は死亡してしまう計算になります。
弊社では、現在養鶏場の運営に大きな影響を及ぼすブロイラーの致死率を減少させる取り組みをバンドン工科大学と教育省との共同開発で実施しています。IoTや自動センサーなどの最新技術を駆使して、ブロイラーを適切に管理して致死率を抑制する技術です。これらの最新技術導入コストや効果などの詳細は今後のコラムで改めてご紹介いたします。
参考サイト:
https://www.bps.go.id/publication/2022/06/30/4c014349ef2008bea02f4349/peternakan-dalam-angka-2022.html
http://cybex.pertanian.go.id/mobile/artikel/77311/Budidaya-Ayam-Pejantan/
https://www.bps.go.id/publication/2022/08/16/ec3a6eb4af46cfccff5d8e7f/statistik-perusahaan-peternakan-unggas-2021.html
https://hobiternak.com/mortalitas-pada-ayam-broiler/
http://www.temanc.com/berita/fisiologi-normal-ayam-dan-penyebab-ayam-mati
今回のコラムでは、インドネシアにおける鶏肉市場の概況と養鶏事業とその課題に関してお伝えいたしました。インドネシアでは宗教面や価格面から鶏肉の消費が盛んで、その消費量は年々増加しています。鶏肉はインドネシアにおいて1年を通して需要が高く、宗教行事などがある際は価格の高騰が起きることもあるため、安定した供給が重要な食肉です。また、過去には鳥インフルエンザが発生したことや、通常時もブロイラー致死率が5%程度あることから、安定供給のための飼育環境の管理が不可欠です。インドネシアの農畜産業およびアグリテックやIoTへの事業展開や投資にご興味がおありの方は、弊社までお問合わせくださいませ。
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