【コラム】コロナ禍のインドネシアにおける2021年のラマダン・レバランの規制と消費活動

先日のコラムでもご紹介しましたが、イスラム教の断食月であるラマダンは4月12日から始まります。

ラマダンはイスラム教徒の義務の一つで、一ヶ月間、日の出から日の入りまでの時間の飲食国民の8-9割をイスラム教が占めるインドネシアでは、特にラマダンやレバランは年に一度の大きなイベントであり、人々の生活や経済の動向などにも大きく影響を与えます。

TOP写真は、ラマダン期間中は断食中のイスラム教徒に配慮して店内が見えないようにして通常営業している飲食店(インドネシア国内)です。

また、ラマダンが明けると1年の中で最も長期の休暇となるレバラン(断食明けの大祭)があり、日本のお盆休みや正月休みのように多くのインドネシアの人々は一般的に田舎へ帰省します。

今年のラマダンとレバランのスケジュールについては、先日のコラムでご紹介しましたが、今回はコロナ禍のインドネシアにおける2021年のラマダンとレバランの規制や、その影響で変化するラマダン時期のインドネシアの経済需要についてご紹介していきます。

 

インドネシアにおける2020年のラマダン、レバランの規制について

2021年のラマダンとレバランについてご紹介する前に、去年のコロナ禍におけるラマダンとレバランについて振り返ります。

昨年2020年のラマダン期間は4月23日〜5月23日で、ラマダンが始まった時期のインドネシア国内のコロナウイルス感染者は合計8,000人以上に達しており新型コロナウイルス蔓延の渦中にありました。

そのためラマダン、レバランにおいて政府よりコロナ禍でのラマダン・レバランの過ごし方について以下のような規制が出されました。

*お祈りはモスクでなく自宅で済ませるよう呼び掛けられる

*日没後の家族や友人との会食の禁止

*レバランの帰省の禁止
・物流以外のジャカルタからの人の移動を禁止
・バスや鉄道などの公共交通機関の運行を大幅に減少
・航空旅客輸送の国内線が6月1日まで全面的に禁止

 

お祈りについては、通常モスクに集まり行われていますが大人数で集まるとコロナ感染のリスクが高まるため自宅で行うよう呼びかけられました。また、レバラン期間中の帰省も禁止されました。

 

インドネシアにおける2021年のラマダン、レバラン時の規制について

今年4月8日時点で政府によって定められている今年のラマダン、レバランの規制は以下の通りです。

*日没後の家族や友人との会食は行っても良いが、混雑を避ける必要がある
*レストランは収容人数を最大50%にする必要がある
*レバラン期間の帰省の禁止

※公務や急用がある場合は、例外として移動が許される。

 

レバランの帰省については去年と同じく禁止されていますが、日没後の家族や友人との会食やモスクでのお祈りについては人数制限を設けることで許可されています。

日没後の家族や友人との会食については条件付きで許可されていますが、新型コロナウイルスの感染を恐れて「自粛し、家で食べる」という声もあるようです。

参考:https://www.pikiran-rakyat.com/nasional/pr-011728927/ramadhan-2021-kemenag-izinkan-warga-buka-bersama-di-restoran

コロナ禍のインドネシアにおけるイスラム教指導者によるラマダンについてのガイドライン

以下はインドネシアのイスラム教指導者がコロナ禍でのラマダンの過ごし方について示しているガイドラインになります。(4月6日更新)

 

【断食について】

・病気にかかった人、免疫状態が良くない人などを除いて、ラマダンの断食は必須である。

・サフール(断食開始前の食事)と断食は、家族のみで行うことを推奨する。

・断食を行う際は部屋の収容人数の制限を設け、収容人数のキャパシティに対する収容率の最大50%までに制限することを推奨する。

 

【モスクと礼拝所について】

モスクまたは礼拝所の管理者は、以下を遵守する必要がある。

・ お祈りの際、収容人数の制限を設け、収容キャパシティに対する収容率の最大50%までに制限することを推奨。人と人とのの距離は1m保つようにする。

・イスラム学習会(Pengajian)/講演(Ceremah)/講和(Taushiyah)/ラマダン7分間講義(Kultum Ramadhan)を最長15分に収めるようにする。

・モスク/礼拝所内外でのヌズルル・コーラン式典(Nuzulul Qur’an)の際、保健省の定めるコロナウイルス対応指針を守り、収容人数の最大50%に制限して行うようにする。

・モスク/礼拝所の管理者は保健省の定める対応指針に沿って、*コロナウイルス対策の管理をする人員を確保する必要がある。

 
*コロナウイルス対策
各場所の定期的な消毒/手洗い場の設置/マスクの着用/ソーシャルディスタンスの維持/お祈りマットを各自持参するよう呼びかけ

【コロナウイルスのワクチン接種について】

・ラマダン期間中のワクチン接種は、インドネシアのハラル認証機関MUI(インドネシア・ウラマー評議会)において許可されているため接種しても良い。

【ザカート (喜捨)について】

・保健省によって定められている新型コロナウイルス対応指針を守り、蜜を避けて行う。

【イドゥルフィトリの祈り(断食空けのお祈り)】

・保健省によって定められている新型コロナウイルス対応指針を守り、顔の知れたコミュニティ内であればモスク又は野外でのイドゥルフィトリの祈りは行って良いが、新型コロナウイルスの感染者が増えた場合は変更となる可能性がある。

参考:https://www.kompas.com/tren/read/2021/04/06/100000965/panduan-resmi-ibadah-ramadhan-dan-idul-fitri-2021-kementerian-agama?page=all

参考:https://nasional.kompas.com/read/2021/04/05/19490921/shalat-idul-fitri-berjemaah-diizinkan-menag-bisa-batal-apabila-ada

参考:https://banjarmasin.tribunnews.com/2021/04/05/pemerintah-boleh-sholat-tarawih-dan-ied-2021-berjamaah-di-masjid-begini-syaratnya?page=2

 

上記から分かるように、インドネシアにおけるラマダン中の新型コロナウイルス対策は項目別に細かく定められています。

また今年の規制は去年とは異なり、感染対策を行いながらできることは禁止せずに行う傾向のようです。

モスクでのお祈りや会食の許可はされていますが、大人数で集まると拡大する可能性はあるため、一人一人の感染対策意識も重要になります。

 

2021年のインドネシアにおけるラマダンとレバラン時期の消費活動予想

例年インドネシアではラマダンとレバランの時期は消費活動が活発になり、セールやプロモーションが頻繁に行われていますが、今年のコロナ禍における消費活動はどのような変化が見られるのでしょうか。

グローバルアドテクノロジー企業のThe Trade Deskの調査によると、レバラン期間の帰省の禁止により浮いたお金の使い道として、オンラインショッピングやフードデリバリーに使いたいと思っている人がアンケート回答者のうち過半数以上の割合となっていることが分かっています。

また、新型コロナウイルスの影響で外出を自粛する必要があるため、家で楽しめるVOD(ビデオオンデマンド)を利用する人も増加すると予想されています。

お金の支払い方法としてインドネシアではEウォレットや電子マネーなどキャッシュレス決済が近年普及しており、The Trade Deskが行ったアンケート回答者の3人に1人が利用しています。

ラマダン、レバラン期間中の消費活動の支払いについても特にECサイトやデリバリーフードの利用が増加すると予測されていることからキャッシュレス決済で支払う人が多くなると予想されており、キャッシュレス決済が利用できるかどうかでお店やネットショップの売上が変わってくる可能性も十分考えられます。

The Trade Deskは、このラマダン期間中は広告主がメディア戦略やキャッシュレス体制を強化する貴重な機会となる、と述べています。

参考:https://tekno.sindonews.com/read/382426/207/tren-belanja-ramadan-2021-konsumen-belanja-lewat-e-wallet-bayar-streaming-dan-pesan-antar-makanan-1617177836

 

今年も新型コロナウイルスの影響により、ラマダン・レバラン時のインドネシアの経済や人々の生活、消費動向などは昨年に引き続きイレギュラーなものになることが予測されます。

ご質問、お問い合わせなどございましたらお気軽にご連絡ください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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