【コラム】インドネシアにおけるイスラムとフェミニズム

最近は日本でも街を歩いているとヒジャーブ(スカーフ)を身に着けたイスラム教徒の外国人の女性を目にすることは珍しくなくなってきました。皆さんが抱くイスラム教徒の女性のイメージは、その見た目から分かりやすいヒジャーブを身に着けた女性ではないでしょうか。

イスラム教徒の女性の地位はしばしば議論の対象となりますが、イスラムにおける女性の地位はいかなるものでしょうか。今回のコラムでは、世界で最もイスラム教徒の人口が多いインドネシアにおけるイスラム教徒の女性の地位やフェミニズムに関してご紹介いたします。

インドネシアにおけるイスラム

イスラムというと主に中東の宗教というイメージが強いですが、実は世界で一番イスラム教徒が多い国はインドネシアです。約2億3100万人のイスラム教徒がインドネシアに暮らしています。

(出典:インドネシア内務省統計データより弊社作成)

インドネシア国内でもイスラムが圧倒的多数派の宗教であり、国の人口の86.9%がイスラム教を信仰しています。

インドネシアにおけるイスラム・フェミニズム

【インドネシア初の女性運動家・カルティニ】

カルティニは植民地時代のインドネシア初の女性運動家で、女子教育の奨励やジャワ島の男性優位の伝統的な慣習を変革するための運動を行いました。イスラムの教典であるコーランには男性と女性は神の前で平等であることが記されている一方で、植民地時代の19世紀後半から20世紀初頭のインドネシアでは一夫多妻制や幼児婚、強制結婚などが行われていました。また、当時は女子向けの教育はすべて結婚後に妻や母としての役割を全うするためのもので、男性向けの教育とは異なっていました。

西洋的な教育を受け、その価値観に触れたカルティニはこれらインドネシアの伝統的な慣習や考え方に疑問をもち、女子校の設立や一夫多妻制への反対運動を行いました。残念ながら出産後の産褥熱で25歳の若さで逝去しましたが、彼女の友人のアベンダノンによって彼女の書簡集が「Door Duisternis Tot Licht(暗闇をこえて)」が出版され、後世の女性たちやフェミニズムに大きな影響を与えました。

インドネシアではカルティニは国家的英雄とされ、小・中・高の教科書にその功績が記され、彼女の誕生日の4月21日はカルティニの日(婦人解放の日)として祝日とされています。

参考:https://theconversation.com/indonesian-muslim-women-engage-with-feminism-78424
https://www.kompas.com/stori/read/2022/04/21/080000679/apa-jasa-ra-kartini-bagi-bangsa-indonesia-?page=all
https://kokushikan.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=10394&item_no=1&attribute_id=63&file_no=3

【イスラミック・フェミニズム】

インドネシアでは1970年代に経済成長によって中間層が増え、女性の高学歴化が進み、フェミニズム思想に影響された女性たちによって女性NGOが多数組成されました。なかでも「女性のための国家委員会(Kommnas Perempuan)」は、現在でも女性NGO活動の重要な拠点となっています。そして、1998年の政変と民主化以降、ジェンダー主流化が国の重要課題と位置付けられ、ジェンダーバイアスを含む法律の見直しが進められていました。

なかでも、イスラムへの帰依を前提とし、宗教教義上の男女平等の原則を根拠としたイスラミック・フェミニズムの発展は特徴的でした。近年のイスラミック・フェミニズムの運動では女性に対する暴力の排除法案の成立が盛んに叫ばれています。近年でもインドネシアでは年間40万件以上の女性に対する暴力事件が起こっており、コロナ禍の自粛がこれら女性に対する暴力事件の更なる増加を引き起こす要因となり兼ねない状況となっています。

イスラミック・フェミニズムの団体はこれらの女性への暴力排除の法案の草稿を作成しました。彼女たちは、コーランにおいて「人間は神に創造された特別な存在であり、神の前では男女は平等である」という考えを掲げて、イスラムにおけるジェンダー平等やイスラミック・フェミニズムに関する講義を行っています。

参考:https://www.waseda.jp/inst/weekly/news/2020/11/13/80106/
https://k-kentan.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2019&item_no=1&page_id=3&block_id=34
https://k-kentan.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2019&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1
https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001201672761472

今回のコラムでは世界最多のイスラム教徒がいる国、インドネシアのイスラムとフェミニズムに関してご紹介いたしました。インドネシアにおいて円滑にビジネスを行う上で、イスラム教の考え方を理解することは欠かせません。

また、イスラム教徒の考え方や習慣を知ることにより、イスラム教徒の消費者をターゲットにした商品やサービスを提供することも可能となります。そして、今回ご紹介したインドネシアの女性のおかれている立場を理解することもインドネシア現地でビジネスを開拓するうえで不可欠です。

インドネシアで従業員を雇用されたい方や、人材ビジネスをご検討されている事業者の皆様におかれましては、女性の働く環境の改善やジェンダー平等の観点が必要となります。弊社インドネシア総合研究所はインドネシア全土に様々な業界、教育機関、政府機関等のネットワークを保持しており、多岐にわたる分野の調査を得意としており、関連業者、消費者、学術専門家などの意見や政府機関、メディアからの情報を収集して多面的な検証・分岐を加える「Pentahelix」方式の調査も可能です。

インドネシアにおける新規事業立上げやインドネシアの様々な市場への参入をご検討なさっている事業者の皆様、ぜひ事前に弊社の調査活用をご検討ください。弊社の調査はインドネシアビジネスを成功させるうえで高い効果と事前のリスク回避が図る調査内容となっています。

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-6804-6702

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