【コラム】インドネシアの経済発展とASEAN初のOECD加盟の調整

インドネシアは、豊富な天然資源、継続的な人口増加や経済政策などによって過去数十年にわたって安定的な経済成長をしてきました。現在は名目GDPが世界第16位で、ASEANでは1位、アジアでは中国、日本、インド、韓国に次ぐ経済大国で、世界から注目を浴びています。このような継続的な経済成長によって世界から評価をされてきたインドネシアは、ASEAN初のOECD加盟の方向で動いていることが最近明らかになりました。今回のコラムでは、インドネシアの経済概況とこれまでの経済発展と今後の予測、OECD加盟に関してお伝えいたします。

インドネシアの経済基本情報

一般情報
面積 約192万平方キロメートル(日本の5倍)
人口 約2.70億人(2020年、インドネシア政府統計データより)
首都 ジャカルタ
民族 約300種類(ジャワ人、スンダ人、マレー系、中華系など)
言語 インドネシア語
宗教 イスラム教86.69%、キリスト教10.72%、ヒンドゥー教1.74%、仏教0.77%、儒教0.03%、その他0.04%
経済情報
主要産業 製造業(19.2%):輸送機器、飲食品など
農林水産業(13.2%):パーム油、ゴム、コメ、キャッサバなど
卸売・小売(12.9%)
建設(10.4%)
鉱業(8.9%):LNG、石炭、スズ、石油など
運輸・通信(4.4%)
金融・保健(4.3%)
物流・倉庫(4.2%)
行政サービス・軍事・社会保障(3.4%)
その他(14.6%):不動産、教育、ホテル、飲食など
(2021年時点の情報)
一人当たりのGDP 4,349.5米ドル(2021年)
経済成長率(実質) 3.69%(2021年)
物価上昇率 1.8%(2021年)
貿易相手国(石油・ガス以外) 輸出:中国、アメリカ、日本
輸入:中国、日本、タイ
主要援助国 ドイツ(39.1%)、日本(20.7%)、フランス(14.8%)、オーストラリア(8.5%)、アメリカ(8.2%)

(出典:外務省HPより弊社作成)

参考サイト:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/data.html#section4

インドネシアの順調な経済成長は約2.7億人の豊富な人口や天然資源に支えられています。また、インドネシアの国土はマラッカ海峡や南シナ海へのシーレーンを有しており、地政学的にも重要な位置にあります。天然ガスや石炭のほか、電気自動車のバッテリー製造などに重要なニッケルなどの鉱物資源、パーム油やゴムなどの農林水産資源も豊富で、これらの資源はインドネシアの経済発展に貢献してきました。そのほか、欧米や日本などの援助にも支えられて経済発展が進展してきました。一方で、インドネシアは人口構造的に若年層が多いため、毎年200~250万人の新規労働力が発生しており、雇用を維持するためには最低6%の経済成長が必要とされています。継続的な経済成長を目標とするインドネシア政府は、国家中期計画であるインドネシア経済開発拡大・加速マスタープラン(MP3EI)において、「21世紀の先進国」、「2025年に世界の10大経済大国」になることを掲げています。

インドネシアの経済発展の歴史

(出典:世界銀行データより弊社作成)

参考サイト:https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=ID

【2022年の世界の名目GDP順位】

順位 国名 金額(百万米ドル)
1 アメリカ 25,462,700
2 中国 17,963,171
3 日本 4,231,141
4 ドイツ 4,072,192
5 インド 3,385,090
6 イギリス 3,070,668
7 フランス 2,782,905
13 韓国 1,665,246
14 メキシコ 1,414,187
15 スペイン 1,397,509
16 インドネシア 1,319,100

(出典:世界銀行データより弊社作成)

参考サイト:https://databankfiles.worldbank.org/public/ddpext_download/GDP.pdf

インドネシアは、1945年にオランダから独立後、スカルノ大統領によって国家建設が始まり、欧米諸国の所有資産を国有化し、外国資本の排除および輸入規制による国内産業の保護・振興を中心に行っていました。しかし、当時国営企業の経営は思うようにいかず、財政悪化とインフレにより経済が停滞していました。その後、スハルト大統領政権に交代すると、海外援助や外国資本の導入による経済開発を進める方針が打ち出され、国営企業主導から民間企業主導に切り替えられました。そして、1970年代から1990年代後半にかけては,経済政策・制度の整備を進め,食糧増産、工業化、社会開発を促進しました。スハルト政権時代の経済成長率は平均7%と好調で、1970~80年代のオイルショックによる原油価格高騰は産油国のインドネシアにとっては好機となりました。1980年代後半からは原油価格が低迷し、1980年に10%まで上昇した経済成長率は1982年には2.5%まで急落しました。インドネシア政府は、資源依存による経済成長に限界を感じ、石油・ガス依存から脱却し工業化による経済発展を目指し、規制緩和と民間企業への産業資本転換が進められました。その結果、資源依存から脱却し、GDPに占める製造業の比率が高まり、1980年代後半には経済成長率は約5〜7%まで回復しました。その後は、1990年代も海外からの短期資金の流入などによってインドネシアの経済は成長していましたが、1997年のアジア通貨危機後の経済成長率は一気に落ち込み、2004年頃まで停滞していました。2000年代前半は短期政権が続き経済成長率も5%に届かない年が続きました。2008年のリーマンショック時のインドネシアは、輸出依存度が低く内需主導型であったため、安定的な経済成長を維持することができました。2014年に現インドネシア大統領のジョコ・ウィドド大統領が選出されると、民主化路線を進展させ、経済成長に重点が置かれました。ジョコ・ウィドド政権では、2045年のインドネシアのあるべき姿として、①「中所得国の罠」から脱却すること、②1人あたりのGDPが3.2億ルピア(約22,400米ドル)または月2,700万ルピア(約1,890米ドル)を達成すること、③名目GDPを7兆ドルにし、世界の5大経済国になること、④国民の貧困率をゼロとすることが掲げられました。

参考サイト:https://www.seijo.ac.jp/research/economics/publications/reserch-report/jtmo420000000mul-att/a1679447502805.pdf

インドネシアのOECD加盟と今後の予測

【購買力平価GDPの予測世界順位(単位:10億米ドル)】

順位 2016年 2030年 2050年
1 中国 21,269 中国 38,008 中国 58,499
2 アメリカ 18,562 アメリカ 23,475 インド 44,128
3 インド 8,721 インド 19,511 アメリカ 34,102
4 日本 4,932 日本 5,606 インドネシア 10,502
5 ドイツ 3,979 インドネシア 5,424 ブラジル 7,540
6 ロシア 3,745 ロシア 4,736 ロシア 7,131
7 ブラジル 3,135 ドイツ 4,707 メキシコ 6,863
8 インドネシア 3,028 ブラジル 4,439 日本 6,779
9 イギリス 2,788 メキシコ 3,661 ドイツ 6,138
10 フランス 2,737 イギリス 3,638 イギリス 5,369

(出典:PwC「The Long View How will the global economic order change by 2050?」より弊社作成)

参考サイト:https://www.pwc.com/gx/en/world-2050/assets/pwc-world-in-2050-summary-report-feb-2017.pdf

インドネシアは過去数十年において堅調な経済成長を持続しており、2020年のコロナ禍では経済成長は停滞気味でしたが、2022年のGDPの成長率は5.31%となっており、2013年以来9年ぶりの高い伸び率を記録しました。新型コロナウイルス関連の各種規制の解除による消費活動復活や、ロシアのウクライナ侵攻などの影響による国際商品価格の上昇に伴い資源国のインドネシアの輸出は好調でした。このように世界的な景気情勢の悪化の中でも成長をし続けるインドネシアですが、今後も世界経済における存在感を増していく予想です。PwCの予測によると、購買力平価GDPの世界順位でインドネシアは2030年には5位、2050年には日本も追い抜き4位になると予測されています。2022年にバリ島で開催されたG20では、インドネシアは東南アジア初の参加国であり議長国になり、インドネシアの経済発展は着実に世界的な評価を受けています。このような流れの中、2023年7月にはインドネシアがASEAN諸国で初のOECD加盟をする方向で調整が進められていることが明らかになりました。OECDは世界の経済的、社会的、環境的な課題の共有・解決のための先進国の情報交換の場となっており、先進国としての1つの指標でもあります。OECD加盟が実現した場合は、アジアでは日本、韓国に次いで3か国目(※)になります。

※現在のOECD加盟国は、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、エストニア、スロベニア、ラトビア、日本、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、韓国、チリ、イスラエル、リトアニア、コロンビア、コスタリカの全38か国

参考サイト:
https://jp.reuters.com/article/indonesia-gdp-idJPKBN2UG08J
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/eng/o/E0115.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/acc260823f6e91d91061ad1ae8e3da1f6e53a8d5
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/11/caf716ea9b1769e7.html

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今回のコラムでは、インドネシアのこれまでの経済発展の歴史と今後の予測、先進国入りに近づくためのOECD加盟の調整に関してお伝えいたしました。インドネシアはこれまでアジア通貨危機やリーマンショック、新型コロナウイルスのパンデミックなどによる経済打撃を何度も乗り越え、経済成長を実現し、今後も世界経済での存在感を増していくことが見込まれています。この波に乗り、インドネシアでの事業展開をするのは今がベストチャンスです。インドネシアでの事業展開にご興味をお持ちの事業者の方はぜひ弊社までお問い合わせくださいませ。

株式会社インドネシア総合研究所
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