【コラム】インドネシア最大のモーターショーGIIAS2023から見るインドネシアの自動車産業

先日ジャカルタ近郊にて、インドネシア最大級のモーターショーであるGAIKINDO Indonesia International Auto Show (通称:GIIAS)が8月10日から20日までの10日間にわたって開催されました。
GIIASの去年の総動員数は38万5,487人で、インドネシアの中でも有数の規模を誇ります。新型コロナウイルスの感染拡大収束もあり、今年は去年を超える盛り上がりを見せていました。

今回は、GIIASを実際に訪れた様子と、そこから見えてくるインドネシア国内での自動車産業の動向についてご紹介します。

GIIAS2023とは


GIIASは、インドネシア自動車産業協会、通称GAIKINDO (Gabungan Industri Kendaraan Bermotor Indonesia)によって、1986年に初めて開催されました。
その後、2006年には、国際自動車工業連合会の承認を得て国際規模の展示会となり、インドネシア国際モーターショー(IIMS)など何度かの名称変更を経て現在の名称に至りました。

GAASでは普通自動車に限らずバスやトラック、自動車部品なども展示しており、一般客から企業に至るまで様々な人が訪れます。休日に訪問した際には、親子連れの姿も目立ちました。一般客の多くはインドネシア人で、国内向けのイベントであることが分かります。
最新技術の展示はもちろん、その場で自動車を購入でき、様々な特典や割引も受けられるとあって、その場で自動車を購入する人も多く、各メーカーも力を入れてブースを準備します。

GIIASの動員規模は年々拡大し続けており、近年はジャカルタ近郊でのメインイベント開催に加え、スラバヤ、スマラン、バンドゥンの三都市でも開催されています。

入場料は以下の通りです。

  平日 土日
オンライン購入 50,000ルピア(約475円) 100,000ルピア(約950円)
現地購入 70,000ルピア(約665円) 120,000ルピア(約1140円)

(1ルピア=0.0095円として計算/2023年8月時点)

現地の様子から見るインドネシアの自動車産業



自動車ブースでは日本メーカーのほか、韓国、中国のメーカー、またヨーロッパのメーカーも数社ですが見られました。

ブース出展一覧:https://indonesiaautoshow.com/exhibitor-list/

実はインドネシアの自動車産業は長らく、新車、中古車市場ともに日本車がシェア90%を占めています。
インドネシアには自国の自動車メーカーがないため、輸入車や外資系企業の国内生産拠点に完全に依存しています。
インドネシアにおける2022年の新車販売台数の上位5社は以下の通りです。上位を日本メーカーが独占しているのが分かります。実は上位10社のうち8社が日本の自動車メーカーであり、市場シェアの9割以上を日本メーカーが占めています。中でもトヨタは30%以上の市場シェアを誇ります。インドネシアでは、主に家族向けの大型車が主力商品となっています。

図:Statistica https://www.statista.com/statistics/981088/indonesia-new-vehicle-sale/  を元に弊社作成(アクセス日:2023/08/21)

一方で近年、追い上げを図っているのが中国や韓国の自動車メーカーです。
例えば韓国のHYUNDAI(現代自動車)は、2022年の新車販売台数は8位の3万1,970台でありつつ、今回のGIIAS2023ではトヨタに次いで2番目に大きなブースを確保し、新たな顧客獲得を図っています。
10位の中国のウーリン(五菱)は、前年の3.9倍の2万5,564台となり、市場でのシェアを徐々に拡大しています。

参考: インドネシアの自動車販売台数、前年比66.8%増の88万台(インドネシア) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ (jetro.go.jp) (アクセス日:2023/8/22)



各社のブースで目立つのがEV車です。インドネシア政府は2030年までに二酸化炭素排出量を29%削減し、2060年までに排出量ゼロを達成するという目標を掲げており、それに合わせる形で海外の自動車メーカー各社もハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、バッテリー電気自動車などを開発、展示しています。
普通乗用車に限らず、バイクなどもEVシフトが進んでいます。

一方で、各自動車メーカーが欧州向けの自動車のように電気自動車に完全にシフトしない理由としては、選べる自動車のオプションを多く残し、価格帯に幅を持たせることでインドネシアの広い客層にアプローチする狙いがあります。

現状インドネシアにおいてEV車は非常に高価であり、一部の富裕層だけが購入可能なものとなっています。そのためすぐに市場がガソリン車からEV車へ移行することは考えづらいですが、インドネシア政府のカーボンニュートラル目標を鑑みると、EV開発に追い風が吹いている事は間違いないでしょう。

日本はEV車の分野で各国に遅れをとっているとの見方もあり、各メーカーは巻き返しを図っています。

インドネシア政府の二酸化炭素排出削減目標については、以下の記事でもご紹介しています。


インドネシアならではの車の展示も。こちらは日本の自動車メーカーのダイハツが展示していたBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)の小型商用バンです。



インドネシアでは、街の小規模な商店への飲料水の配達や野菜などの物流を、小規模な仲介業者や運送業者が担っていることも多く、道の端で果物や水を積んだバイクやトラックが止まっている光景をよく目にします。ラストワンマイルのニーズに応える小規模な物流を担う商用車に着目し、乗用車だけでなく広くEV車の販路を広げたい狙いがあります。
後部に簡易なスクリーンを付けたこちらの宅配用バンは現在コンセプトカーで販売はまだとのことですが、今後インドネシア政府の二酸化炭素削減目標に向けて、幅広い分野の自動車でEV化が目指されていくことは間違いないでしょう。

バスのブースでは、写真のようなラグジュアリーシートや個室を完備した長距離バスなど、高級志向の展示が目立ちました。経済成長にともなって中間層が拡大し都市部で高級志向が広がりつつあることや、国内の観光業がアフターコロナで徐々に活気づいてきたことを反映しているようです。


アフターコロナのインドネシアの旅行産業の動向については以前の記事でもご紹介しています。

また、自動車以外にも自動車部品や燃料などの技術も展示されていました。
こちらはバイオ燃料を展示していたブースで、インドネシアのバイオ燃料生産者協会によるものです。


インドネシアはインドネシアでは、パームオイルを絞ったあとのヤシ種殻(PKS)や、豊富な森林資源を元にしたウッドペレットがバイオマス燃料として知られています。インドネシア政府は、再生可能エネルギーへの転換を進め、エネルギーの安定供給基盤を形成するための政策上の指針を打ち出しています。ただし、バイオマス燃料の利用はそれほど普及しておらず、こうしたイベントを通じた周知が図られています。

インドネシアのアブラヤシを活用したバイオ燃料については、以前の記事でもご紹介しています。

参考:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/053f5bfaafa14821.html (アクセス日:2023/08/22)

今回の記事では、インドネシア最大のモーターショーGIIASの現地の様子から見えてきたインドネシアの自動車産業の動向についてお伝えしました。
世界第4位の人口を抱えるインドネシアは巨大なマーケットを擁しており、今後自動車産業に限らず日本との経済的な結びつきはますます強くなっていくでしょう。
弊社では様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。
セミナーの開催や現地調査なども行っておりますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-6804-6702

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