【コラム】ムスリム大国インドネシアのクリスマス
クリスマスになると世界中の多くの国や町で消費合戦が繰り広げられますが、実はインドネシアもその例外ではありません。
インドネシアは世界最大のイスラム大国であり、クリスチャンは人口の5%ほどではありますが、クリスマスはラマダン(イスラム断食月)と並ぶ、一大消費シーズンです。
今回のコラムではインドネシアのクリスマスについてご紹介します。
クリスマスは通信機器と日用消費財の消費が増加!?
インドネシア中央銀行が発表した2017年12月小売売り上げ調査結果によると、ラマダン(断食月)と重なる5〜7月頃と同様に、クリスマス及び年末である12月も、飲料や食品などといった日用消費財の消費の上昇が見られます。
インドネシアの飲料及び食料の実質売上指数
Y軸は実質売り上げ指数で、2010年を基準(100)としています。
(インドネシア中央銀行のRetail Sales Survey December 2017より作成。https://www.bi.go.id/en/publikasi/survei/penjualan-eceran/Pages/SPE-Desember-2017.aspx)
また、スマートフォンやSIMカードなどの情報通信機器の実質売り上げ指数もクリスマスの時期に上昇しています。
インドネシアの飲料及び食料の実質売上指数
(インドネシア中央銀行のRetail Sales Survey December 2017より作成。
https://www.bi.go.id/en/publikasi/survei/penjualan-eceran/Pages/SPE-Desember-2017.aspx)
高まる国民の消費性向に合わせて、企業側もセールを盛んに行うなど、インドネシアでも日本と同じようにクリスマス商戦が繰り広げられています。
インドネシアの通信ショッピング会社大手 blibli.comのクリスマスセール
(https://www.blibli.com/promosi/kids-christmas-clearance)
このような消費増加の背景の一つに、会社勤めの人に支払われる大祭手当(Tunjangan Hari Raya)が挙げられます。
大祭手当とは、それぞれの信じる宗教の祝日に際して受け取ることができるボーナスのことです。
キリスト教もその例外ではなく、クリスチャンはクリスマスの前に大祭手当を受け取ることができます。
ちなみに、ムスリムの人にはレバランの前にTHRというボーナスが支払われます。
インドネシアにはキリスト教徒の町もある!
イスラム教が多数派のインドネシアにおいて、数少ないキリスト教の町では、クリスマスが盛大に祝われます。
中部ジャワ州の「サラティガ」は人口約18万人という小さな街ですが、クリスマスの日に多くのクリスチャンが教会やパンチャシラ広場に集まり、主イエスキリストの生誕に思いをはせます。
サラティガのキリスト教徒たちの日曜礼拝(弊社撮影)
サラティガは、他の町と比べてキリスト教徒の割合が高い町であるとともに、インドネシアの中で最も寛容な街の一つとしても有名です。
人権NGO団体のスタラ・インスティトュートによると、サラティガはインドネシアで二番目に高い寛容指数を誇っており、サラティガの人口の約21%がキリスト教徒だそうです。
http://setara-institute.org/indeks-kota-toleran-ikt-tahun-2018/
(インドネシア中央統計局“Jumlah Penduduk Menurut Kabupaten/Kota dan Agama yang Dianut di Provinsi Jawa Tengah, 2015(2015年の中部ジャワ州の町ごとの宗教分布)”より作成。
https://jateng.bps.go.id/statictable/2016/08/19/1272/jumlah-penduduk-menurut-
kabupaten-kota-dan-agama-yang-dianut–di-provinsi-jawa-tengah–2015.html)
ムスリムの反応
インドネシアのムスリムの多くは、クリスマスをイベントとして捉えて楽しんでいるようですが、中には宗教上のトラブルもあるようです。
2017年には、スラウェシ島のマカッサルのケーキ店「Chocolicious Indonesia」が「クリスマスおめでとう(selamat Natal)」とケーキに書くことを拒否したことが、BBCインドネシアに取り上げられるなど大きな議論を呼びました。
「私たちは『クリスマスおめでとう』と書くことができません」とインスタグラムに投稿
https://www.instagram.com/p/BdCvzKUgYV2/?utm_source=ig_embed
また、インドネシア・ウラマー(イスラム法学者)協会は2016年に、
「ムスリムでない人たちの信仰は尊重すべきだが、ムスリムが他の宗教に属しているかのように振る舞うのは許されない」
というファトワ(宗教的見解)を示しました。
https://www.depok.go.id/berkas-unggah/2016/12/Fatwa-MUI-No-56-Tahun-2016.pdf
日本と同様にインドネシアでも、クリスマスは大きなビジネスチャンスの一つと言えます。
しかし、ムスリムが多数派の国だけに日本では発生しないような問題を考慮する必要性もあります。
インドネシアでの思わぬビジネスのトラブルに備える上で、インドネシア総研の持つ、現地での調査やビジネスに関する豊富な経験はお役に立つことと思います。
インドネシアでビジネスをお考えの方は是非、弊社までご相談ください。
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