【コラム】インドネシアの社交スタイルと気を付けるべきポイント

インドネシアへの出張や駐在の際に、現地のインドネシア人と社外で食事をしたり、交流を深めたりするような場面も出てくるのではないでしょうか。人とのつながりを大切にするインドネシアでは、ビジネスの相手であっても良好な関係を築くことを重視しています。

それでは、インドネシアの人々は日常生活でどのように交流を深めているのでしょうか?今回の記事では、インドネシア特有の社交スタイル「ngopi」をはじめ、一般的にインドネシア人と交流を深めるうえでよくあるシチュエーションを取り上げ、注意すべきポイントとともに解説します。

Ngopi(ンゴピ)に誘われた場合


「ngopi」とは、インドネシア語で「コーヒーを飲む」という意味です。また、単に飲むだけでなく、友人や家族と一緒にコーヒーを楽しむ、という意味合いを持ち、日常生活の中で重要なイベントとなっています。人口の約8割をムスリムが占めるインドネシアでは、アルコールを飲む人が少ないため、日本のように「飲み会をして交流する文化」はありません。そのため、コーヒーを片手に語らう時間はインドネシアの人々にとって非常に大切なものになっていると言えます。

また、「ngopi」という言葉は、それ以外にも、「コーヒーショップに行く」ことを指したり、学生や若者の間ではディスカッションなど話し合いの場をカジュアルに指す言葉としてngopiを使ったりもします。
コーヒーショップに行く、という意味で使用する場合、実際にはパンを食べたり、アイスティーを飲んだり、ミルクセーキを飲んだり、何か他のものを飲んだりすることもあります。あくまでコーヒーショップに来る、というだけの意味なので、コーヒーが飲めなくても誘われたら参加してみるとよいでしょう。

Ngopiの際に気を付けることとして、主催者がいる場合の飲む順番への気配りが挙げられます。
コーヒーや紅茶がふるまわれたら、まず主催者が口をつけるのを見てから自分も飲むようにしましょう。インドネシアは年長者や目上の人を尊重することを大切にするため、それ以外の場でも相手を尊重する姿勢を見せることを意識すると円滑なコミュニケーションにつながります。

また、出された飲み物やスナックなどは、少なくとも一口は口をつけることが礼儀だとみなされています。

食事に誘われた場合


新型コロナウイルスの流行がインドネシアでも終息しつつある中で、以前のような大人数での食事の機会もすっかり復活してきています。
レストランでの会食からホームパーティーまでインドネシアにおける食事の在り方は様々ですが、ビジネスのシーンならまずはレストランに誘われることが多いでしょう。

ビジネスでの付き合いの相手でも、食事会などに誘われた場合はできるだけ参加するとよいでしょう。人付き合いを重んじるインドネシアでは、誘いを断るのは日本以上に失礼に当たります。
ビジネスディナーにおいても、ngopiと同様、主催者がまず口をつけ、続いてこちらに食べるようすすめてくれるのを待ちましょう。

パーティーなどの場合は立食が多く、プレゼントを持って参加するのが一般的です。

注意すべきなのは、インドネシアには「割り勘」がないということです。
インドネシアで何人かで食事やお茶をともにすると、そのグループの誰かがまとめて全員分を払うのが一般的です。この場合、通常は誘った人が支払いをすることが多いようです。
「次に食べに行った時には他の誰かが払うからお互い様」という考え方が根底にあるようです。

私たち日本人は割り勘に慣れているため、このような風習に最初は戸惑うかもしれませんが、「支払いは誰がするのだろう?割り勘にするのか?」と考えすぎずに会話を最後まで楽しみ、「ご馳走様でした」と気持ちよく席を立つのがインドネシア人のスタイルです。
ただ時に例外もあります。人数が多く、一人での負担が大きな額になると予想される場合は割り勘になる可能性があります。誘われて食事に行く場合でも、念のためお財布は持っておきましょう。

その他、インドネシアにおいては宗教に合わせた配慮も必要になります。
インドネシア人口全体の約80%を占めるムスリムは豚肉やアルコールを、またバリに多いヒンドゥ―教徒は牛肉を食べることが禁じられています。それらを使用した食品を食事の場で食べないことも気づかいとして必要でしょう。また、ムスリムはラマダン(断食月)の間日中の飲食が一切できません。こちらから食事に誘う際は、今がラマダンの時期でないか確かめたうえで誘う配慮が必要です。

インドネシアの宗教についてはこちらの記事でもご紹介しています。



その他インドネシア人との交流で気を付けるべきポイント

その他にも、インドネシア人と交流する中で特に日本と異なる部分についてご紹介します。

・Jam Karet(ジャム・カレット)

ジャム・カレットは直訳すると「ゴム時間」という意味で、約束や予定の時間に対し寛容なインドネシアの人々の気質を反映した言葉です。
インドネシア人は概して時間に対して日本人ほど厳格ではなく、締め切りに間に合わなかったり、約束の時間に遅れてきたりすることも珍しくありません。注意すべきは、インドネシアにおいてはそれがそこまで失礼に当たることではないということです。

日本では約束の時間を守る、あるいは5分前行動をすることが当たり前のこととされているため、はじめインドネシアでジャム・カレットの概念に触れると、戸惑いやいら立ちを覚えてしまうこともあるかもしれません。しかし、インドネシアでは前提が違うのだ、ということを飲み込んで、ゆとりのある気持ちで対応することがインドネシアでの良好な人間関係の構築につながるでしょう。また、そのような余裕のある気持ちでいた方が、こちらもストレスなく交流することができるはずです。

一方で、これはどうしても遅れてほしくない、というような事柄があれば、かなりしっかり念押しするだけでなく、本来の時間より早めによりアポイントや締め切りを設定することも必要です。

・右手の使用

インドネシアでは、 左手は「不浄の手」とされているため、インドネシアで物を渡したり握手する時は必ず右手を使います。また、物を食べるときなどに使う手も右手が望ましいです。

用を足した後に拭くのも左手なので、左手は衛生的にも良くないと考えられています。

日本人にはそういった左手に対するけがれの観念がないので、つい左手を使ってしまう方が多いですが、握手などで左手を差し出すのはインドネシアでは失礼にあたります。十分に注意しましょう。

・プレゼント

インドネシアにおいて、ビジネスの交渉の場については贈り物は必ずしも必須ではありませんが、人の家に招かれたときは小さな手土産を持っていくことが必要です。
小さなお菓子の詰め合わせから花束まで、手土産の内容は様々ですが、食事に誘われた際は「相手の準備が十分でない」という意味合いを持ってしまうため食品のお土産は避けましょう。

インドネシアでは、もらったプレゼントを相手の前で開封することはあまりありません。プレゼントをすぐ開けるのは、強欲さや忍耐力が無いという印象を与えてしまうので気を付けましょう。
インドネシアにおいて相手の目の前でプレゼントを開けないのには、もらった贈り物が期待外れだった時に相手の名誉を傷つけないためという配慮があります。開けてみて、と勧められた場合を除いて、基本的にお礼を言った後は封を開けずに横に置いておくのがよいでしょう。

いかがでしたでしょうか。インドネシアの社交マナーは日本と異なる部分も多く、はじめは戸惑うことも多いかもしれません。しかし、上記のようなマナーを覚えておくことで、インドネシア人とのビジネスを円滑に進めるだけでなく、プライベートでも付き合いを楽しむことができるでしょう。

この他にも、ビジネス面に限らずインドネシア人と接する上で覚えておくべきポイントが存在します。

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