【コラム】インドネシアにおける新しい農業

インドネシアは、東南アジアでも突出した農業大国で、コメやサトウキビ、トウモロコシなどをはじめとしたさまざまな農産物を栽培しています。その一方で、課題に直面していることも事実です。今回は、インドネシアの農業事情と、そこに見られる変化の兆しをご紹介します。

インドネシアの農業の課題

上述の通り農業大国であるインドネシアですが、農家一戸あたりの作付面積は比較的小規模で、技術面での改革が進んでいないことが指摘されています。また、広大な国土であるがゆえに、輸送等におけるインフラ面の課題も根強く残っています。
さらに大きな問題は人材不足です。

世界銀行のデータ(下図)を見ると、2019年のインドネシアにおける農業従事者は国内の労働人口のおよそ29%となっており、その割合は年々減少傾向にあります。

出典:The World Bank “Employment in agriculture”を参考に弊社作成
https://data.worldbank.org/indicator/SL.AGR.EMPL.ZS?locations=ID

インドネシア統計局によると、2003年から2013年の間で農業人口は510万人も減少しており、このままの傾向が続けば、2063年にはインドネシアにおける農業従事者はいなくなる計算となります。

インドネシア農業省戦略計画(2020-2024)においても、農業人材の拡充と農家へのエンパワーメントが目標の一つとして掲げられており、農業分野の人材不足が国家的な課題となっていることがうかがえます。

参考:
https://ap.fftc.org.tw/article/1842#:~:text=Based%20on%20its%20vision%20and,agricultural%20infrastructure%3B%20(4)%20Enhancing
https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/jipfa/ku57pq00002kzkw6-att/myanmar_01_data01.pdf

都市型農業のメリット

こうした問題の解決策として注目されるのが都市型農業です。都市型農業(都市農業)とは、その名の通り農地の多い地方ではなく、消費者に近い都市部で行われる農業のことです。

日本では、住宅街の空き地やビルの屋上などを有効活用した作物の栽培が各地で試みられています。また、最新のテクノロジーを利用した完全屋内型の水耕栽培を行うスタートアップ企業も現れています。

都市型農業には、以下のようなメリットがあります。

  • 消費者に新鮮な農産物を届けることができる
  • 流通コストを削減できる
  • 環境負荷が軽減される
  • 都市部の住民の農業に対する関心を高める

ここで特に注目したいのは、人口の多い都市部で農業を展開することにより、都市部の住民に農業を身近に感じさせることができるという点です。特に若年層の農業に対する関心を高めることは、将来的な農業人口確保のためにも重要であると考えられます。

参考:
https://thebridge.jp/2020/05/sunryse-insight-urban-farming
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/tosi_nougyo/t_kuwashiku.html

都市型農業を模索する動き

インドネシアにおける都市型農業の先駆者として、西ジャワ州デポックにあるSentrafarmをご紹介します。同社の特徴は、IoTを駆使して室温、水量、光量などを管理するシステムを開発し、高品質な野菜を安定的に短期間で栽培することを可能にした点です。

通常の栽培方法に比べ、水の使用を1/95に抑えており、サステナビリティの観点からもインドネシア国内では画期的な試みであるといえます。栽培されている野菜の種類は、リーフレタスやロメインレタスなど主に葉物野菜で、1日あたり10〜30kgほど生産できるとのことです。

価格は、Rp.19.500〜Rp20.000/250gと割高ではありますが、安全性や質・鮮度の高さから、都市部での需要が期待できます。

このような新しい農業のスタイルが普及していくことは、農業用地の縮小や人材不足といった問題に対する解決策のひとつとなりえるでしょう。また、特に都市部には健康面に関心の高い消費者が多くいると考えられ、安全面にアピールできる水耕栽培は、今後さらなる発展が期待されます。

参考:
https://www.sentrafarm.com/
https://foto.kompas.com/photo/read/2022/01/19/164259461644b/teknologi.penanaman.hidroponik.indoor.tanpa.cahaya.matahari

インドネシアの農業については、過去のコラムも合わせてご覧ください。



弊社では、インドネシアの農業についての調査等も行っております。関心のある方はぜひ一度お問い合わせください。

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

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