【コラム】アフターコロナにおけるインドネシアの独立記念日

8月17日は、インドネシアの独立記念日です。
インドネシアは約300年にわたるオランダの植民地支配、そして約3年間の日本の支配を経て、1945年8月17日、独立とインドネシア共和国の建国を宣言しました。2023年でインドネシアは独立78周年を迎えることになります。現在8月17日は国民の祝日となっており、各地で様々な催しが行われるなど、お祝いムードに包まれます。

しかし、2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大のため、様々なイベントが中止されたり、オンラインでの開催に変更されたりしていました。しかし、今年からは、感染状況の治まりもあり、かつての賑わいを取り戻しそうです。
今回は、インドネシア独立記念日の祝い方やイベントについて、コロナ禍を経て生まれた変化を踏まえてご紹介していきます。

過去の独立記念日についての関連コラム:


2023年のインドネシア独立記念日はどうなる?


新型コロナウイルスのパンデミックが猛威を振るっていた2020年、2021年は、インドネシアでも式典などの実地開催が見送られ、地域ごとに行われるパレードや催しもオンラインコンテンツでの代替が図られました。
2022年にオンラインと実地のハイブリッド形式として対面での式典が再開され、マスクの原則着用が撤廃された今年からは、様々なお祝いや式典、パレードなどの実地開催が全面的に解禁されるとみられます。

今年7月にインドネシア政府が、新型コロナウイルスが「パンデミック(世界的流行)」から「エンデミック(一定の周期で繰り返される流行)」の段階へ移行した、として感染爆発の終息を実質的に宣言したこともあり、今年の独立記念日は一層の盛り上がりを見せることが予想されます。

2023年度にインドネシア政府が独立記念日に合わせて実施する式典の予定は以下の通りです。

8月14日 栄誉賞授与式
8月15日 国旗掲揚部隊(パスキブラカ)発足式
8月16日 人民議会、衆議院、地方代表者会議での国家演説、2024年国家予算案に関する演説
8月17日 カリバタ英雄墓地での慰霊式、インドネシア共和国独立宣言記念式典、国旗降納式

インドネシア政府はこうした式典をすべて実地解散すると発表しており、コロナ禍以前同様、独立宣言記念式典はインドネシアの大統領官邸であるムルデカ宮殿で行われる見込みです。
一般の人々も事前登録をすれば実地での参列が可能になりました。

インドネシア共和国独立宣言記念式典は、2021年、2022年はオンラインと対面のハイブリッド開催であったため、海外の来賓がオンラインで参加したりすることが可能でした。しかし今年度は完全に対面開催予定のため、来賓も含め実地での参加が原則となります。
一方で、コロナ禍で定着した式典のライブストリーミングは継続される予定のため、国外在住のインドネシア人をはじめ、海外からも式典の様子をYouTubeで見ることができます。

昨年の様子はこちら
Upacara Peringatan Detik-Detik Proklamasi Kemerdekaan RI, 17 Agustus 2022
https://www.youtube.com/live/WzWjGbrfIOA?feature=share

また、式典のほかに、インドネシア政府は文化や伝統に関する3つのサイドイベントを実施する予定です。

一連の式典に先立ち、8月5日にはAngkulung(アンクルン)というスンダ地方の伝統楽器を約1万5千人もの奏者で演奏しギネス世界記録に挑戦するというイベントが実施されます。

(画像:アンクルンを持つ子どもたち

出典:https://www.kompas.com/skola/read/2020/12/27/160000069/angklung-sejarah-jenis-dan-cara-bermain?page=all 最終アクセス:2023年8月3日)

また、8月6日には「Istana Berkebaya(イスタナ・ブルクバヤ)」(宮殿でクバヤを)というテーマを掲げた、女性の伝統衣装クバヤのファッションショーが、ムルデカ宮殿前で行われます。著名人だけでなく一般人もウォーキングに参加でき、400人以上のモデルがクバヤを披露します。
インドネシアの伝統衣装であるクバヤの文化を保存し女性の活躍を応援する取り組みは昨年も行われていましたが、このような形でファッションショーが行われるのは初めてです。インドネシア政府は、2023年4月にマレーシア、タイ、ブルネイ、シンガポールの4国とともに、クバヤを世界文化遺産に推薦しており、今回のファッションショーがその後押しになることが期待されます。

(画像:クバヤを着たインドネシアの女性

出典:https://kebayaindonesia.org/ceritakebaya/tak-mungkin-klaim-kebaya-cuma-milik-indonesia-mengapa/ 最終アクセス:2023年8月3日)

そして、独立記念日当日の8月17日に行われるのが「Gemilang Silang Monas(ゲミラン・シラン・モナス)」
というイベントで、独立記念塔にプロジェクションマッピングが行われる予定です。

参考:https://setkab.go.id/en/independence-month-to-commemorate-78th-anniversary-of-indonesian-independence-day-begins-on-1-august/
https://www.nhb.gov.sg/what-we-do/our-work/sector-development/unesco/kebaya

様々なシーンでのインドネシア独立記念日の祝い方

ここまではインドネシア政府主催のイベントについてご紹介してきましたが、インドネシアの独立記念日には、学校や街でも様々な催しが行われます。

学校

インドネシアの独立記念日は国民の祝日のため、学校の授業なども基本的にはお休みになるのですが、その代わり多くの学校では、政府の独立記念式典と同様、国旗の掲揚式を行います。
インドネシアでは、パンチャシラ教育、と呼ばれる愛国心とモラルを育み文化への理解を深める教育が重視されており、こうした学校での国旗掲揚式もそうした愛国心を育む教育の一環と言えます。
多民族が共生するインドネシアだからこそ、統一国家としてのインドネシアへの愛着を持ち、国是の「Bhinneka Tenggal Ika」(多様性の中の統一)を実現させられる人材を育成したいという狙いがあります。

パンチャシラ(国家原則)についてはこちらの記事でもご紹介しています。

学校で国旗掲揚に携わることができるのは、優秀な成績を残した上級生の生徒であることが多く、国旗掲揚を行う生徒は憧れの存在となっています。
また、国旗掲揚以外にも伝統のスポーツやコンテスト、パフォーマンスなどが生徒によって行われることもあり、学校の一大行事と言えるでしょう。

都市部

インドネシアの各地方の都市部では、独立記念日に合わせて地方自治体などが中心となってパレードを行います。独立記念日に合わせて街はインドネシア国旗の赤と白に飾り付けられ、住人が各々の家の前に国旗を掲げるなどして、街全体が華やかな雰囲気に包まれます。

地域の学校やNGO、有志団体などからなる人々が、地域の伝統衣装や、インドネシアの赤と白をあしらった衣装で盛装し、街のメインストリートを練り歩きます。地域によってパレードの内容は様々で、独立戦争を戦った英雄の仮装をして歩くものや、伝統的な竹やりなどの武器を持って歩くものもあります。内容は様々ですが、インドネシアの独立を祝い、歴史上の人々に感謝するとともに、各地域の文化を改めて盛り上げていく機会となっています。

農村部
農村部では、子どもや若者を中心としたさまざまな伝統的なゲームが行われるのが一般的です。学校などでも同様のゲームが行われることもあります。農村部など地方のコミュニティにとって独立記念日は、独立を祝うのはもちろん、コミュニティのメンバーが一堂に会し、様々なゲームなどを通じて親睦を深める機会となっています。

いくつかの代表的なゲームをご紹介します。
・Panjat Pinang
ビンロウという東南アジアにみられるヤシを使う競技で、8m-9m の細いビンロウの幹に油を塗って立て、誰が一番早く登って頂上の景品を取れるか競争します。油で滑りやすくなった幹を登るのは至難の業ですが、数人で協力して登る人から単身挑戦する人まで様々で、非常に盛り上がります。

Embed from Getty Images

(出典:https://www.ripleys.com/weird-news/panjat-pinang-pole-party/ 最終アクセス:2023年8月3日)

・Lomba Makan Kerupuk
紐付きクッキーの早食い競争のようなもので、日本の運動会で行われていたようなものと近い競技です。参加者は手を使わずに誰が一番早く紐の先の伝統的な焼き菓子を食べきることができるか競い、優勝者には賞品が与えられます。

・Lomba Balap Karung
コメを入れる袋などの中に両足を入れてうさぎ跳びでレースを行う競技で、主に子どもが参加することが多いですが、幅広い年代が簡単に参加できるため広く行われています。学校の運動会などでも行われていますが、独立記念日のイベントで実施されるのが一般的です。

このほかにも様々なゲームが行われますが、共通しているのはどれもインドネシアで生まれた伝統的なゲームであることです。こうしたゲームを通じ、地域の文化や連帯の大切さが改めて確認されていると言えるでしょう。
新型コロナウイルスの流行により、インドネシアでも、地域での交流や対面での大掛かりな催しの機会は大きく減少しました。しかし、感染の収束に伴い、今年はコロナ禍以前の賑わいが地方のコミュニティにも戻ってくることが期待されます。

今回の記事では、今年のインドネシアの独立記念日について、祝い方やイベントの概要をご紹介しました。
独立記念日の周辺にインドネシアに滞在する予定がある方は、いつもと違った雰囲気が楽しめるでしょう。ビジネスでご渡航をされる方は、独立記念日は祝日のため会社や学校は休みになりますのでご注意ください。

弊社では、現地の文化に造詣の深いスタッフが多数在籍しており、様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。また、異文化研修も多数実績がございます。ご興味がある方はお気軽にお問合せください。

株式会社インドネシア総合研究所
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