【コラム】インドネシア政府が電動二輪車の購入に補助金交付へ

地球温暖化の抑制に向けて世界では脱炭素の動きが加速し、各国政府ではカーボンニュートラルに向けた多方面の取り組みがなされています。インドネシアも例外ではなく、産業における脱炭素化や森林保護、ブルーカーボンの活用、乗用車・二輪車などの電動化の促進などの取り組みを通じて脱炭素化を促進しようとしています。そのような状況下、先日インドネシア政府は電動二輪車の購入への補助金導入を決定しました。今回のコラムでは、インドネシアにおける電動二輪車購入時の補助金交付の詳細と、実際に補助金対象となっている車種についてご紹介いたします。

インドネシアにおけるエネルギー計画と電動自動車・二輪車に関する計画

(出典:インドネシア共和国エネルギー鉱物資源省「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2021」より弊社作成)
参考:https://www.esdm.go.id/assets/media/content/content-handbook-of-energy-and-economic-statistics-of-indonesia-2021.pdf

現在インドネシアの一次エネルギー供給源は石油と石炭で7割以上を占めており、二酸化炭素排出量の多い化石燃料への依存度の大きさが課題となっています。そのため、インドネシア政府はエネルギー供給源を石油や石炭から転換することを目指しています。二酸化炭素削減に向けた具体的な計画や再生可能エネルギー導入に関しては、2014年に策定された国家エネルギー総合計画(Rencana Umum Energi Nasional : RUEN)に規定されています。インドネシア政府は、電動自動車の利用を増やすことを目標とし、以下の2点を同計画内で定めています。

【電動自動車・二輪車の利用促進に関する計画】
①2025年までにインドネシアの総自動車販売数の20%を電気自動車にする。
②2040年までには従来の内燃エンジン(ICE)車の販売をゼロにし、インドネシアで利用されている車の50%を電動自動車とする。
この2点に補足して、二輪車に関しても2025年までに1900万台の電動二輪車の利用、2050年にはすべての二輪車が電動化され累計2億1900万台に達すると予測されています。
インドネシアの電動自動車普及への取り組みの詳細に関しては関連記事「【産業】インドネシアにおける電気自動車普及への取組」をご覧ください。

関連記事:

参考:https://iesr.or.id/download/national-energy-general-plan-ruen-2020

インドネシアが今回打ち出した電動二輪車への補助金

インドネシア工業省によると、2022年9月時点でインドネシアにおける電動二輪車の保有台数が2万1,668台、電動自動車が3,317台数、電動三輪車が274台、電動バスが51台、電動トラックが6台であることを明らかにしました。

(出典:インドネシア工業省のデータより弊社作成)
参考:https://www.cnnindonesia.com/otomotif/20221013160146-603-860170/berapa-populasi-kendaraan-listrik-di-indonesia-saat-ini#:~:text=Jakarta%2C%20CNN%20Indonesia%20%2D%2D,dan%203.317%20unit%20mobil%20listrik.

インドネシア工業省は、2025年までに40万台の電動自動車、176万台の電動二輪車を生産することを目標にしており、現在、インドネシア政府が最も注力しているのは電動バイクの利用促進です。電動バイクの利用促進の試みとして、2023年工業大臣規定第6号が制定され、電動バイクを購入する際に700万ルピア(日本円で約67,000円)の補助金が交付されることが決まりました。本規定によると、電動二輪車補助金の受給者となるのは、人民事業融資(KUR)、中小企業向け製造支援、賃金補助金の受給者、900VAまでの電力補助金の受給者となっています。また、電動自動車・二輪車の購入への補助金交付をより簡素化することも計画されており、今後電動二輪車の購入は住民登録番号(NIK)や住民登録証(KTP)に基づいて行われることになります。この制度はまだ開始されたばかりですが、現状はまだ補助金を受給してバイクが購入された事例は多くはなく、20万台分の割り当てがある中で2023年8月28日時点では1,730人が登録手続き中で、454人が購入者認証中であり、225人が購入済みで、補助金の効果が十分とは言えない状況です。インドネシア国民の電動二輪車への関心が低いことや、補助金受給のための特定の要件があることが要因であるとみられており、政府は要件を変更あるいは削除することを検討しているといいます。

参考:https://www.kompas.com/tren/read/2023/08/05/143000965/daftar-motor-listrik-yang-dapat-subsidi-rp-7-juta-harga-mulai-rp-12-juta
https://otomotif.kompas.com/read/2022/11/10/171200615/kemenperin-targetkan-produksi-400000-mobil-listrik-dan-175-juta-motor
https://www.cnbcindonesia.com/news/20230731140517-4-458764/dikasih-subsidi-rp-7-juta-nyatanya-motor-listrik-belum-laku
https://landing.sisapira.id/#products

インドネシアで700万ルピアの補助金を受けられる電動二輪車を一部ご紹介

インドネシア政府は認証済みのメーカー・車種のみに購入時に700万ルピアの補助金を交付するとしています。詳細は電動二輪車購入の補助金に関する特設サイト「Sispira」のウェブサイトで確認することができます。ここでは一部の車種と補助金交付後の販売価格を参考としてご紹介いたします。

【Smoot/Zuzu】

出典:https://www.smoot.id/zuzu

補助金交付後:1,290万ルピア(日本円:約12万3,600円)

【Rakata/S9】

出典:https://rakatamotor.co.id/rakata-motor-s9/

補助金交付後:1350万ルピア(日本円:約12万9,400円)

【Selis/Agats】

出典:https://www.tokoselis.com/product/motor-listrik-selis-tipe-agats/

補助金交付後:2,180万ルピア(日本円:約20万8,900円)


今回のコラムでは、インドネシアにおける脱炭素化の一環としての電動自動車・二輪車に関する取り組みのご紹介と、電動二輪車の購入時の補助金導入、そして補助金対象の具体的な車種をご紹介いたしました。インドネシアでは、人々の移動手段としては自動車よりも二輪車が主流で、政府も電動二輪車への転換に注力していることがお分かりいただけたと思います。インドネシアも国際的な脱炭素化の情勢を受けて、環境配慮への機運が高まっています。日本の最先端の環境技術などの移転にご興味がおありの事業者の方はぜひ弊社までお問い合わせくださいませ。

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