インドネシア・ブトン県とは?天然アスファルト・パチョリ・ニッケルが眠る南東スラウェシの秘境

3分でわかる!この記事のポイント
- ブトン県はインドネシアのどこにある?
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ブトン県は、インドネシア・南東スラウェシ州に位置する県で、ブトゥン島南部などからなる地域です。県都はパサールワジョで、面積は約2,681㎢、人口は約12万人(近年の統計)。2012年の行政再編後の現在のブトン県は7つの郡から構成され、約95の村・行政区が連なっています。天然アスファルト(アスブトン)の一大産地として知られ、香料植物パチョリの栽培も行われており、隣接するバウバウ市には歴史的なブトン王国の城塞都市が残っています。
- ブトン県の最大の特産品は何?
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天然アスファルト(アスブトン)が最大の特産品です。インドネシアのブトゥン島は世界有数の天然アスファルト産地として知られ、地元政府サイトでも「世界最大の天然アスファルト産地の大地」と称しているほどです。さらに、香水・化粧品の原料として世界市場に流通する香料植物パチョリ(パチュリ)の産地でもあり、ブトン県を擁する南東スラウェシ州一帯は世界有数のニッケル産地としても知られています。
- ブトン県はビジネス・投資の観点からどんな可能性がある?
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天然アスファルト・香料(パチョリ)・南東スラウェシ州のニッケルサプライチェーンという一次産品の供給地としてのポテンシャルに加え、未開発の観光資源や、インドネシア総合研究所が連携する地方政府との提携拠点としての重要性も高まっています。日本企業にとって現地パートナーシップを検討する価値のある地域のひとつです。
弊社インドネシア総合研究所は先日、ブトン県をはじめとするインドネシアの地方自治体との意見交換会を実施しました。現地の担当者と直接対話する中で、天然資源・人材・産業振興など多方面にわたる連携の可能性があらためて浮かび上がってきました。“ブトン県”という地名を初めて耳にされた方も多いかもしれません。今回は、この注目の地域についてご紹介します。
意見交換会について詳細はこちら
https://www.indonesiasoken.com/news/indonesia-specified-skilled-worker-retention-infrastructure/
インドネシアの穴場地域・ブトン県とは

インドネシアは17,000を超える島々からなる世界最大の群島国家です。多くの日本人がインドネシアといえばジャカルタやバリ島を思い浮かべるかもしれませんが、インドネシアの魅力はそれだけにとどまりません。今回ご紹介するブトン県(Kabupaten Buton)は、インドネシア・南東スラウェシ州(Sulawesi Tenggara)に位置する地方県で、スラウェシ島の南東端沖に浮かぶブトゥン島(Pulau Buton)の南部を中心に、ミュナ島南部やカバエナ島南部なども含む地域です。
ブトン県の面積は約2,681㎢、人口は約12万人(近年統計)で、県都はパサールワジョ(Pasarwajo)です。インドネシアの地方分権化政策の進展により、ブトン県はこれまでに複数の県に分割・再編されてきました。2007年には北ブトン県(Buton Utara)が、2012年には南ブトン県(Buton Selatan)と中ブトン県(Buton Tengah)が独立しています。また、かつてブトン王国の中心地であったバウバウ(Bau-Bau)も2001年に「バウバウ市(Kota Bau-Bau)」として独立した自治体となっており、現在のブトン県とは行政上の別区画となっています。現在のブトン県(狭義)は7つの郡(kecamatan)から構成され、郡の下には約95の村(desa)および行政区(kelurahan)が連なっています。
なお、ブトン島という「地理的な島」として見た場合には、バウバウ市・南ブトン県・中ブトン県・北ブトン県なども含む広大なエリアが広がっており、行政区画上の「ブトン県」とは区別して理解しておくことが重要です。このように、ブトン県はインドネシアの地方行政のダイナミズムを体現する地域であり、地域の分権化と発展を続けるインドネシアの縮図ともいえる存在です。
豊富な天然資源①:世界が注目する天然アスファルト「アスブトン」

ブトン県・ブトゥン島の名を有名にしているのが、天然アスファルト、通称「アスブトン(Asbuton:Aspal Buton)」です。インドネシアのブトゥン島は世界的にも有数の天然アスファルト産地として知られており、地元政府の公式サイトでも「世界最大の天然アスファルト産地の大地(Bumi Penghasil Aspal Alam Terbesar di Dunia)」というキャッチフレーズを用いているほどです。
天然アスファルトとは、地殻内で堆積岩が長い地質時代をかけてビチューメン(瀝青)を取り込んだ岩石から採れる天然の素材です。ブトゥン島の場合、島の地質がバンダ海に面した特有の堆積岩帯に位置しており、ビチューメン含有率が10〜30%にもおよぶ岩盤が広大な範囲にわたって分布しています。採掘した岩盤を破砕・分類することで、道路舗装をはじめとするアスファルト材料として利用されます。
アスブトンは、インドネシア国内の道路建設において極めて重要な国産資源として位置づけられており、インドネシア政府は以前から輸入アスファルトへの依存を減らし、国産アスブトンの利活用を推進する政策を進めてきました。日本を含む海外企業との資源開発・インフラ整備分野での連携についても関心が高まっています。
インドネシア国内における道路舗装の需要はますます高まっており、ジャワ島、スマトラ島、カリマンタン島、パプア島など各地への出荷ルートが整備されつつあります。このようなインドネシア国内のインフラ整備の追い風を受け、ブトン県産のアスブトンへの需要は今後さらに拡大すると見られています。天然アスファルトというニッチな分野においても、インドネシア・ブトン県はグローバルなサプライチェーンの重要な一角を担っているのです。
豊富な天然資源②:香料植物パチョリ(パチュリ)の産地

ブトン県を語る上で欠かせないもうひとつの特産品が、パチョリ(Patchouli)です。パチョリとは、シソ科パチョリ属(ミズトラノオ属)の常緑多年草で、学名はPogostemon cablin。インドネシアを原産地のひとつとし、熱帯気候の肥沃な土地で栽培される植物です。
パチョリの最大の魅力は、その葉から水蒸気蒸留法で得られる精油(エッセンシャルオイル)にあります。甘くスパイシーで土のようなエキゾチックな香りを持ち、高級香水の「ベースノート」として世界中の調香師に重用されています。また、熟成するほど香りに深みが増すという珍しい性質を持ち、香水だけでなく、アロマテラピー、化粧品、洗剤、紙タオルなど幅広い製品に使用されています。
世界全体のパチョリオイル生産量は年間約1,500トンとされており、そのうちインドネシアが約80%を占める世界最大の生産国です。日本市場においては、従来ベトナムや中国産のパチョリを仕入れるケースが多く見られましたが、原産地・最大生産国であるインドネシア産パチョリの直接調達という選択肢は、品質管理やコスト面でも大きなメリットが期待できます。
パチョリは漢方薬(藿香/カッコウ)としても長く用いられており、解暑・健胃の効能があるとされています。アロマテラピーの観点からも、抗うつ・抗ストレス・抗炎症・肌の新陳代謝促進といった作用が期待されており、ウェルネス市場における需要は今後も拡大が予想されます。インドネシアでパチョリが栽培される地域は、南東スラウェシ州を含む熱帯地方の各島に広がっており、インドネシア・ブトン地域でのパチョリ産業には今後の発展余地が十分あります。
豊富な天然資源③:ブトン周辺を含む南東スラウェシ州のニッケルポテンシャル

インドネシアは、世界のニッケル生産量において第1位を誇る国です(2023年:約203万トン)。中でも南東スラウェシ州は、コラカ県・北コナウェ県・ボムバナ県など世界的に著名なニッケル産地を複数擁するインドネシア有数のニッケル鉱業地帯です。ブトン県単体の最大の強みはあくまで天然アスファルト(アスブトン)にありますが、ブトン県を擁する南東スラウェシ州全体としてのニッケルサプライチェーンは、日本企業にとって見逃せないポテンシャルを持っています。
ニッケルは、ステンレス鋼や電気自動車(EV)用電池の材料として国際的な需要が急増しており、日本・中国・韓国をはじめとするアジア諸国の製造業にとって欠かせない戦略資源となっています。インドネシア政府もニッケルの付加価値加工(精錬・電池材料化)を国内産業として育成する方針を明確にしており、日本企業との資源・製造分野での協業ニーズも高まっています。
このような資源外交の文脈においても、ブトン県を含む南東スラウェシ州という地域軸での理解と情報収集が、インドネシアビジネスを検討する日本企業にとって重要な視点となっています。
SNSで世界が驚いた:青い瞳を持つブトン族の人々
インドネシア・ブトン島には、天然資源や歴史遺産に加えて、世界中のSNSで大きな話題を呼んだもうひとつの「神秘」があります。それが、鮮やかな青い瞳を持つブトン族(ブトゥン族)の人々の存在です。
2020年、ジャカルタ在住の地質学者でアマチュア写真家のコルチノイ・パサリブ氏が、ブトゥン島を訪れた際に先住民族の子どもや大人たちを撮影し、Instagramに投稿しました。その写真が瞬く間に拡散し、複数の国際メディアでも取り上げられる大きな話題となりました。
インドネシアの人々の多くは黒または茶色の瞳を持ちますが、ブトン族の一部の人々は、澄み切った海を思わせるような鮮やかな青い瞳を持っています。両目とも青い場合もあれば、片目だけ青いオッドアイの場合もあり、その組み合わせは人によってさまざまです。
この特徴的な瞳の色は「ワールデンブルグ症候群(Waardenburg Syndrome)」と呼ばれる稀な遺伝子疾患によるものとされています。神経堤細胞に影響を与える遺伝子の突然変異が原因で、一般的には約4万2,000人に1人の割合で発症するとされていますが、ブトン族の部族間では親から子へと遺伝する形で受け継がれており、地域内では比較的多く見られます。この症候群には、青い瞳のほかに、毛髪の一部が白くなる白毛症(若い年代での白髪)、難聴、皮膚の一部の色素欠如といった症状が伴う場合もありますが、視力そのものへの大きな影響は報告されていません。
茶褐色の肌と澄んだ青い瞳という唯一無二のコントラストは、多くの人々を魅了し、インドネシアという国の民族的多様性と奥深さをあらためて世界に示す出来事となりました。インドネシアには490を超える民族集団が暮らしており、それぞれが独自の文化・言語・身体的特徴を持っています。ブトン族の青い瞳は、その豊かな多様性のひとつのあらわれといえるでしょう。
ブトン島を訪れる旅行者にとって、美しい海やバウバウ市のウォリオ要塞跡などの歴史遺産に加え、こうした独自の民族的特性もブトン島の魅力として語られるようになってきています。
美しい海と豊かな自然:ブトン島の観光資源としての可能性

ブトン県・ブトゥン島周辺の魅力は資源だけではありません。ブトゥン島周辺に広がる海は、透明度の高い美しいサンゴ礁海域として知られており、スキューバダイビングやシュノーケリングを楽しむ観光客にとっての新たな目的地として注目されています。近隣には有名なワカトビ(Wakatobi)国立公園があり、「インドネシアの海の宝庫」とも称されるスラウェシ海域の一角をなしています。
また、ブトン島の歴史的な中心地として知られるバウバウ市(現在はブトン県とは独立した自治体)には、16世紀に建設されたウォリオ要塞(Benteng Wolio Buton)がそびえ立っています。城壁の外周2,740メートル、面積22.8ヘクタールという規模は「世界最大級の城壁都市」のひとつとも呼ばれており、ブトン島を訪れる旅行者にとっての必見スポットです。ブトン王国の歴史と文化を今に伝えるこの要塞は、エコツーリズムや歴史文化観光の目玉として注目を集めています。
南東スラウェシ州の海域は、バンダ海やフローレス海に面し、豊かな海洋生態系が形成されています。ブトン県においても、漁業や海藻栽培が主要な産業のひとつとなっており、地域経済の基盤を支えています。また、農業分野ではトウモロコシ、キャッサバ、マンゴー、パパイヤ、カシューナッツなど多彩な農産物が生産されており、食料資源としての豊かさも際立っています。インドネシアを訪れる外国人旅行者が増加する中、バリ島や有名観光地に次ぐ新たな目的地としてのブトン島・ブトン県の知名度向上が期待されています。
まとめ:インドネシア・ブトン県は天然資源と歴史が交差する可能性の宝庫
インドネシア・南東スラウェシ州に位置するブトン県は、世界有数の天然アスファルト産地「アスブトン」を最大の特産品とし、世界の香水・化粧品市場に欠かせない香料植物パチョリを産し、さらにニッケル産業が盛んな南東スラウェシ州の一部を構成する地域です。加えて、約95の村から構成される豊かな地域社会と、透明度の高い美しい海が広がる自然環境は、今後の観光開発にも大きな可能性を秘めています。
インドネシアの多くの地方県と同様に、ブトン県もまた、日本から見えにくい「隠れた宝の地」のひとつです。しかし、天然資源の豊富さ、地方政府の積極的な姿勢、そして海上交通の要衝としての地理的優位性を考えると、今後の日本企業によるインドネシア進出・投資先として十分な検討価値があると言えます。
弊社インドネシア総合研究所は、インドネシアの地方政府との直接連携を通じて、人材・ビジネス・地域開発の分野で包括的な支援を行っています。ブトン県は、弊社インドネシア総研がパートナーシップを築くインドネシアの地方政府のひとつであり、地域のポテンシャルを日本のビジネスチャンスへとつなぐための活動を進めています。
インドネシアには現在38の州が存在し、各地に多様な産業資源・人材資源が眠っています。しかしながら、日本の企業や投資家にとって、地方の詳細情報を得ることは容易ではありません。インドネシア総合研究所では、ブトン県のような地方政府との直接連携ネットワークを活かして、日本企業がインドネシアの地方に進出・投資する際のアドバイザリーおよびコーディネーション機能を提供しています。
ブトン県の天然アスファルト(アスブトン)・パチョリといった資源分野での事業展開、または南東スラウェシ州のニッケルサプライチェーンへの参画、農業・漁業・観光分野でのビジネス展開にご関心のある日本企業の皆さまは、ぜひインドネシア総合研究所までお気軽にお問い合わせください。
インドネシア総合研究所は、ブトン県を含むインドネシアの各地方との連携を通じて、皆さまのインドネシアビジネスを総合的にサポートします。インドネシアに関するご相談・お問い合わせは、ぜひお気軽にお問合せください。




