【コラム】インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアにおける伝統市場活性化のインパクト分析③

前回のコラム「インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアにおける伝統市場活性化のインパクト分析②」では、カリマンタン、マルク、パプアにおける伝統市場活性化政策についての調査結果から、同政策がもたらした具体的な変化について詳しくご紹介いたしました。

連載3回目となる今回のコラムでは、インドネシアの伝統市場活性化の地域差、そして新型コロナウイルス感染症による伝統市場への影響についての2つの観点から、現状を明らかにしていきます。

まだ連載1回目「インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアにおける伝統市場活性化のインパクト分析①」及び2回目「インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアにおける伝統市場活性化のインパクト分析②」をご覧になっていない方は、是非先にそちらもご覧ください。


地域別まとめ

前回のコラムでは、インドネシアにおける伝統市場活性化前後の市場活性化指数(0から100のスケールで、物理、経営、経済、社会文化の 4 つの側面に分類され割り出されたもの)について、インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアの伝統市場全体では、45.16ポイントから51.61ポイントまで上昇したことをご紹介いたしました。

その中でも、活性化後の指数が最も高かったのは東カリマンタン州で54.37ポイントでした。東カリマンタン州は物理的側面での指数が最高で、経営、経済、社会文化的側面の指数も、カリンプア(カリマンタン、マルク、パプアの総称)の平均を上回っています。東カリマンタン州に次いで市場活性化指数が高いのは北マルク州で、活性化後の指数は54.12ポイントでした。北マルク州は、カリンプアにおいて物理的側面と経営的側面の指数が2番目に高い州でもあります。

これは、伝統的な市場を衛生的な市場に活性化させようとする北マルク州政府の努力が実ったものです。同州の伝統市場は、保健、衛生、食品衛生、及び環境衛生が高い水準で維持された貿易センターとして設計されています。一方、カリンプアの平均指数を下回ったのは、パプア州と西パプア州でした。

これらの州の伝統市場活性化前後における市場活性化指数は、パプア州では41.04点から45.04点、西パプア州では45.00点から49.69点と僅かな成長にとどまっています。パプア地域の4つの側面、特に衛生に関わる物理的側面を改善する更なる努力が、インドネシア政府に求められています。

新型コロナウイルス感染症による影響

続いて、新型コロナウイルス感染症拡大がインドネシアのカリマンタン、マルク、パプアの伝統市場にもたらした影響について見ていきましょう。

まずは、物理的側面における影響についてです。新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアの伝統市場では、ウイルス蔓延防止のための対策が敷かれました。同地域の伝統市場において、46.96%が蔓延防止に関するボードや看板を新たに設置し、30.11%が消費者のための手洗い場を増設したほか、15.75%において入場時の体温測定が導入されました。

また、感染拡大が落ち着いてきた以降も、ニューノーマルへ対応した新たな取り組みが継続されており、伝統市場全体の公衆衛生向上につながっています。インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアの伝統市場の69.22%の販売員は、消費者との取引・交流の際、常にマスクを着用しているほか、大多数が手洗い、アルコール消毒を積極的に行っており、更に同地域の62%の販売員は、他の販売員や消費者と適切な物理的距離を保っていることが報告されています。

新型コロナウイルス感染症が拡大した時期は、世界中多数の事業が経済的打撃を受けましたが、インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアの伝統市場は経済的側面においてどのような影響を受けたのでしょうか。生鮮食品を扱う同地域のような伝統市場は、パンデミック期に営業縮小したのではないかと考えられがちですが、実際はコロナ禍において46.70%の伝統市場で来場者が増加しました。

営業日を縮小した伝統市場は僅か3%にとどまり、58%が以前と同様に営業し、39%で営業日の増加が見られました。また、伝統市場の28%で売上高が減少したのに対し、25%では売上高の変化が見られず、47%では売上高が上昇していたことも明らかになりました。

また同時期にオンラインショッピングを提供する伝統市場も増え始め、北カリマンタンでは14.29%、東カリマンタンでは8.57%、北マルクでは6.98%の伝統市場がオンラインショッピングに対応しています。

一方で西カリマンタン、マルク、西パプアの伝統市場はオンラインショッピングに対応しておらず、他の地域においてもオンラインショッピングを提供している伝統市場はごく一部なため、カリンプアの伝統市場全体における割合としては3%にとどまっています。

前回のコラム「インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアにおける伝統市場活性化のインパクト分析②」(リンク挿入)においても挙げたように、伝統市場のデジタル化が経済的側面における課題となっています。

最後に、新型コロナウイルス感染症拡大後の伝統市場では、経営的側面においてどのような変化が見られたのでしょうか。インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアの伝統市場全体では、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、新たに経営者層による市場の衛生管理・監督が行われるようになりました。

パンデミック期において、積極的に蔓延防止策を実施した経営者の割合は76.2%、インドネシア政府により指示された健康プロトコルの伝統市場における実施状況を適切に監督した経営者の割合は75.8%、伝統市場の定期的な消毒を実施した経営者の割合は74.2%に上りました。また、蔓延防止策や健康プロトコル違反に対する措置を講じた経営者の割合も67.6%と、地域全体で概ね適切な管理体制がとられていたことが分かる結果となりました。

まとめ

今回の連載では、「カリマンタン、マルク、パプアにおける伝統市場再活性化の影響に関する伝統市場の概要 2022 年分析」(インドネシア中央統計局,2023)を基に、インドネシアのカリマンタン、マルク、パプアの伝統市場活性化政策施行後の現状についてご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。過去2つのコラムでも触れたように、伝統市場の物理的側面、経営的側面、経済的側面、社会文化的側面の4つの側面の調和をとること、そして本コラム内でも触れたように、特にパプア地域を中心に全体の地域差をなくすことが、今回の調査を経て明らかになった大きな課題です。

伝統市場は、インドネシアの経済成長を牽引する重要な役割を担っています。伝統市場には、地域社会の経済の中心としての役割だけでなく、伝統市場に関わる零細・中小企業が持続的に成長・発展することで、雇用の拡大などの利益をもたらす媒体となることが期待されています。伝統市場活性化政策に続く、インドネシア政府の新たな動向に注目が高まっています。

弊社インドネシア総合研究所では、インドネシアの各地域における市場調査のほか、現地視察の手配及びアテンド等も承っております。ご関心をお持ちの方は是非下記お問合せフォームよりお気軽にご相談くださいませ。

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