【コラム】インドネシアで高まる猫人気とペットフード産業の展望

インドネシアでは、狭い居住空間への適応性や費用対効果の高さから、猫が最も人気の高いペットとなっています。Mordor Intelligenceの調査によると、パンデミックによる外出制限が大きく影響した2019年から2022年の間には、インドネシア国内の猫の飼育件数は約70.0%も増加しました。また、SNS上でのペットアカウントや猫ミームなどの流行も猫の人気急増に拍車を掛け、現在猫はインドネシアのペット人口全体の65.4%を占めるまでになったと言われています。

参考:https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/indonesia-pet-food-market/market-trends

目次

猫の飼育件数


2022年時点では、インドネシア国内でペットとして飼育されている猫の数は510万匹と、同じくペットとして飼育されている犬の数の6倍以上にも上ります。インドネシア国内の47.0%の世帯が少なくとも1匹の猫を飼っていると言われており、16歳から24歳までの若い世代が飼い主の70.0%を占めています。この傾向は、散歩や世話が少なくて済み、狭い居住スペースでも飼育可能であり、単独行動を好むマイペースな性格などといった猫の特性が、飼育へのハードルを下げているためと見られます。また、犬など他の中型〜大型動物と比べ餌代やかからないというコストパフォーマンスの良さも、猫の人気に拍車をかけています。猫の人気は止まることを知らず、インドネシアの飼い猫の数は、2026年末には590万匹に達すると予想されています。

宗教的要因

インドネシアにおける猫の高い人気は、国民の約87%がイスラム教を信仰していることに関係しています。イスラム法では、猫は純粋であり、バラカ(baraka, 神の恩寵)を持つ生き物と考えられており、人々の住居や礼拝所にさえ自由に入ることができるのです。猫は預言者ムハンマドに寵愛された動物でもあり、その清潔さからも、イスラム教徒にとって「ペット=猫」という様な構図が定着しています。一方、犬はイスラム文化では不浄の動物とされ、ペットとして飼うことは許されていません。イスラムの教典コーランには、人の手や物が犬(特によだれや鼻などの湿った部分)に触れた場合、その手や物を7回洗わなければならず、そのうち少なくとも1回目は土を使用する必要があるという教えもあります。

参考:https://seekersguidance.org/answers/purity/why-should-we-wash-seven-times-after-touching-a-dog/

ペットへの価値観の変化

近年、世界中で「飼い主とペット」から「親と子」へといった関係性の変化が見られており、英語圏では「fur baby(直訳:毛皮のある子供)」と言った言葉が生まれ、ペットを我が子のように可愛がる文化が以前にも増し、いわゆる「Pet Humanization(ペットの人間化/家族化)」が進んでいます。ペットに子供と同じコストをかけても構わない、もしくは子供を持つ代わりにペットを飼うといった様な価値観の普及から、ペット向けの商品やサービスにも、人間と同等レベルのものや高品質のものを求める傾向が高まっています。その中で今まさに拡大しているのが、ペットフード産業です。

インドネシアのペットフード産業とプレミアムペットフード


インドネシアはアジア太平洋地域で最大のペットフード市場の一つです。同国における猫一匹あたりの年間ペットフード支出は増加傾向にあり、2022年には291.9ドル(約45,767円)でした。アメリカの猫一匹あたりの年間ペットフード支出は一般的に180ドルから870ドルと言われているため、両国の物価の差を踏まえると、インドネシアのペットフード支出は高いほうであると言えるのではないでしょうか。ペットフード支出の増加の背景には、単純なる飼育件数増加のほかに、「ペットの家族化」によるプレミアムペットフードの需要急増が上げられます。プレミアムペットフードとは、化学的な保存料や酸化防止剤含有量が少なく、人間が食べられる程の質の高い原料を使用して作られた比較的高価なペットフードのことです。一般的なペットフードにも豊富な栄養が含まれていますが、更に栄養バランスにも優れ、ペットの日々の健康をしっかりとサポートするのがプレミアムペットフードです。

参考:https://edition.cnn.com/cnn-underscored/money/cost-of-owning-a-cat

インドネシアのプレミアムペットフード市場


インドネシアにおいて、プレミアムペットフードの需要は着実に拡大し続けています。2016年から2021年にかけての5年間で、プレミアムキャットフードの売上高は年平均成長率30.2%を記録しました。Royal CaninShebaのような日本でも有名な国際的プレミアムペットフードブランドは、インドネシアでも多くの支持を獲得しています。また2022年のデータでは、インドネシアではペットフードを購入する際、オフラインの小売店が売上全体の68%を占め、オンラインショップでの取引が32%を占めました。

まとめ

ペットに対する人々の意識が更に親密化する中、高品質なペットフードがペットの健康にもたらす利点に対する飼い主の意識の高まりと、プレミアムペットフード開発の進展は、今後数年間もインドネシアにおけるペット関連の支出を促進すると予想されます。この好機に、インドネシアにおける日本製品への高いイメージを上手く活用したブランディングで、インドネシアのペットフード市場へ進出してみませんか。インドネシア総合研究所では、ジャカルタの現地法人と密接に連携し、日本企業さまのインドネシアビジネスの展開をサポートいたします。インドネシアのペット産業へご関心をお持ちの方は是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問い合わせくださいませ。

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