インドネシアのごみ問題とバクテリアによる有機廃棄物分解による希望

巨大な国土と人口を抱えるインドネシアで、大きな問題となっているのが「ゴミ問題」です。日本の倍以上の人間が日々暮らしを営んでいるのだから、単純計算で、排出されるゴミの量も日本の倍。

しかし、インドネシアのゴミ問題において量以上に深刻とされているのが、「人々の意識」「ゴミ処理システム」の二つであると考えられます。

目次

人々の意識

インドネシアのとあるメディアが、何気ない日本の街並みや駅のホームの写真を取り上げ、「素晴らしい」と絶賛します。何がすごいのかと言えば、歩道や駅のホームに、ゴミが落ちていないことを称賛しているのです。

裏を返せば、それだけインドネシアの状況が酷いということ。

インドネシアでは、数年前と比較すれば改善されてきているものの、未だにポイ捨ては日常茶飯事。環境問題・ゴミ問題への興味は非常に薄く、年を重ねた人であればその傾向はなおさら強まります。タバコの吸い殻、道端で売っているスナックが入っていたプラスチック袋など、ポイ捨てされたゴミを挙げていけばキリがありません。さらに、街中のみならず、川に捨てられるゴミの数々は、雨季に発生する洪水の原因にもなります。

また、インドネシア人のプライドも関係しているかもしれません。「ゴミを回収するのは社会的地位が低い人々」という偏見と、自分たちはあくまで「ゴミを捨てる側の人間」であるという認識が少なからずあります。この屈折したプライドが、インドネシアのゴミ問題解決を停滞させているのです。

ゴミ処理システム

日本では、街中にあるゴミ箱などに分別された状態で溜まったゴミは、定期的に回収され、一か所に集められて焼却されるというのが、大まかなゴミ処理の流れです。

しかしながら、インドネシアには、明確なゴミ処理のプロセスというものが存在しません。街中にゴミ箱は多数存在するものの、分別はおろか、ゴミが溜まった状態で数週間放置されているというようなことも頻繁に起こっています。

また、郊外や農村部では、「ゴミは焼却施設で処理するもの」という考えが根付いておらず、ゴミを素焼きすることも少なくありません。焼き畑に加え、こういった素焼きの際に発生する煙がヘイズとなり、自国のみならず他国にまで悪影響を与えています。

では、上記のようなゴミ問題にアプローチする手段として、一体どのようなものがあるか検討していきます。教育を通して、人々の意識を変えていくことは十分可能でしょう。また、国家規模でキャンペーンを展開するといった方法は、既に採用されているものでもあります。

 

バクテリアを用いた有機廃棄物の分解

上記の方法に加えて、より物理的なアプローチをとっていくことも一つの手です。具体的には、「バクテリアを用いて有機廃棄物を堆肥に変える」というものがあります。排出されるゴミを堆肥に変え再利用することで、ゴミの絶対量を減らし、ゴミ問題を改善していこうという流れです。

そもそも、「有機廃棄物」とはどういったものを指すのでしょうか。有機廃棄物とは、自然のものから発生したゴミのことで、プラスチックなどはここに含まれません。飲食店から出る生ごみ、食品工場からの廃棄物、さらには家畜の糞尿などが当てはまり、これらに共通するのは「再び自然に還る」ということです。有機廃棄物は、バクテリアなどの微生物のエサとなり、その際、発酵作用により発酵が起きるのです。

 

有機廃棄物処理のプロセス

微生物の働きにより有機廃棄物を分解していくプロセスは、主に「廃棄物混合」「第一次発酵」「第二次発酵」「発酵終了・分別」に分類することができます。

まずは「廃棄物混合」から「第一次発酵」までの流れです。回収された廃棄物(生ゴミ・浄化槽汚泥・発酵処理後物)を混合し、発酵槽と呼ばれる場所に投入します。投入された廃棄物には、すぐに微生物が集まり、発酵(第一次発酵)が始まります。この発酵をさらに促すために、1日に1回撹拌機を使い、廃棄物に空気を送っていきます。

続いて、「第一次発酵」から「第二次発酵」までの流れです。発酵槽内で発酵が始まると、大きな固形物は、撹拌機や発酵作用により細かく、小さくなっていきます。

その後、発酵熱により水分が蒸発していき乾燥が進むと、発酵が停滞していくため、ここでさらに家畜のし尿や飲料廃棄物を加えていきます。最終的に、水分が完全に蒸発しカサカサの状態になりますが、これを「第二次発酵」と呼びます。

最後に搬出・分別です。乾燥した堆肥を、搬出口を通して、待機しているトラックに積み込みます。必要に応じてふるい機にかけることで、ビニールなどの異物を分別します。こうして、有機廃棄物から堆肥が完成するのです。

 

有機廃棄物処理によるメリット

以上のような複雑なプロセスを経て、有機廃棄物を処理することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。一般的にゴミを焼却処理すると、大量の化石燃料を用いるため、多くの二酸化炭素が排出されます。

この作業が環境に与える影響は計り知れず、排出された二酸化炭素は、地球温暖化の原因になっているとも言われています。

一方、上で紹介した有機廃棄物処理の方法はどうでしょうか。

微生物の分解作用を用いることで有機廃棄物の再利用が可能となるのはもちろん、二酸化炭素の排出量を削減することで、環境問題にもアプローチすることができます。ゴミ問題を考えるうえで、この方法はかなり効果的と言えるでしょう。

 

日本の有機廃棄物処理をインドネシアに

記事の最初で、インドネシアのゴミ問題がいかに深刻であるかを述べました。インドネシアにおけるゴミ問題の状況を少しでも好転させていくために、日本の企業が協力し、有機廃棄物処理をインドネシアに輸出していこうとする動きがあります。

これがもし実現すれば、単純な環境ビジネスとしての側面だけでなく、効果的なゴミ問題対策としても注目に値するでしょう。現在、私たちインドネシア総研も、実現に向けてお手伝いをさせて頂いています。

 

インドネシアについて分からないことがあれば、お気軽にお問合せください。

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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