【コラム】インドネシアにおける卵事情
卵は、健康的に生きる上で必要な「ビタミン」、「ミネラル」、「タンパク質」などの必須栄養素が含まれており、更に調理も簡単で、一般的にも手に入りやすい手頃な価格であるため、世界中の人々の食生活に欠かせない食品の一つとなっています。
しかし、実はインドネシアでは、他国と比較して卵の消費量が少ないとされており、インドネシア農業省は国内の鶏卵消費量の少なさを今後解決すべき課題の一つとしてとらえている状況です。
今回のコラムでは、インドネシアの卵事情についてご紹介します。
インドネシアにおける卵の生産量、消費量、価格
2018年の各国の卵の生産量を見てみると、インドネシアの卵の生産量は日本よりも少ないことがわかります。
出典:Statistia,Leading egg producing countries wolrdwide in 2018 より弊社作成(閲覧日:2020年3月16日)
https://www.statista.com/statistics/263971/top-10-countries-worldwide-in-egg-production/
更に、1人当たりの卵の消費量で見てみても、インドネシアの卵の消費量は東南アジアの周辺諸国と比較しても多いとは言えないことが分かります。
出典:HelgiLibray, Egg Consumption Per Capitaより弊社作成(閲覧日:2020年3月16日)
https://www.helgilibrary.com/indicators/egg-consumption-per-capita/
冒頭部分に記載の通り、一般的に卵は栄養豊富な食材として知られていますが、インドネシアでは“卵を食べると潰瘍やかゆみを引き起こす可能性がある”といったような誤った情報を信じている人もいるようで、インドネシア農業省は「誤った情報を払しょくし、インドネシア人が卵に関する正しい情報を身に付けるための教育が必要である」と述べています。
インドネシアでは、卵の生産量並びに一人当たりの消費量は、インドネシア人の所得の増加、中間層の拡大などに伴い、徐々に増加傾向にあります。
出典:インドネシア中央統計庁、Rata-Rata Konsumsi per Kapita Seminggu Beberapa Macam bahan makanan Penting,
2007-2018(各食材の1人当たりの消費2007-2018)より弊社作成(閲覧日:2020年3月16日)
https://www.bps.go.id/statictable/2014/09/08/950/rata-rata-konsumsi-per-kapita-seminggu-beberapa-macam-bahan-makanan-penting-2007-2018.html
出典:インドネシア中央統計庁、Produksi Telur Ayam Petelur menurut Provinsi, 2009-2019(州別 鶏卵の生産量2009-2019)
より弊社作成(閲覧日:2020年3月16日) https://bps.go.id/linkTableDinamis/view/id/1079
特に2015~2017年にかけて、卵の生産量及び消費用が大幅に増加しています。
では、インドネシアでは卵はどのくらいの価格帯で販売されているのでしょうか?
日本とインドネシアの卵の価格を比べるとほとんど同価格帯であり、平均的な所得で比較するとインドネシアの卵は高い食材ということになります。
インドネシアと日本における卵価格の比較
卵の価格/kg | |
ジャカルタ | 約170円(Rp 24,200) (2020年3月) |
東京 | 185円 (2020年2月) |
出典:https://adampoultry.com/harga-telur-ayam-ras-blitar-hari-ini-update-harga-telur/
http://www.jz-tamago.co.jp/a02_1.phpより弊社作成(閲覧日:2020年3月18日)
インドネシアでは市場で一般的に販売されている卵は鶏卵でブロイラーの卵と地鶏の卵に分類されますが、その他アヒルの卵やウズラの卵もとてもポピュラーです。
卵の生産量の中でもブロイラー卵の生産量はインドネシアで最も多いですが、その他の卵の生産量も年
々増加傾向にあります。
出典:インドネシア農業省HPより弊社作成(閲覧日:2020年3月16日)
https://www.pertanian.go.id/home/?show=page&act=view&id=61
インドネシアでポピュラーな卵料理
インドネシアでは目玉焼きやゆで卵、オムレツといった卵料理はもちろん、その他にも地域独特の卵料理があります。
1. Kerak Telur(クラック・テロル)
直訳すると“卵の殻”となりますが、オムレツの一種です。
鶏の卵、干しエビ、もち米などの材料で作られており、 食感はサクサクしています。
ブタウィの伝統的な料理で、主に屋台で楽しめる一品です。
2. Telur Balado (テロル・バラド)
テロル・バラドは西スマトラのパダンの伝統的な料理です。
揚げ卵を使用しているのが特徴で、唐辛子、玉ねぎ、トマトなどからつくられた非常に辛いソースを絡めて食べます。
3.Tahu telur (タフ・テロール)
タフ・テロールは、東ジャワ料理は多くの人々から非常に親しまれている卵料理です。
白い豆腐を細かく切った後、溶き卵と混ぜて揚げて作られます。
4.Telur Pindang (テロル・ピンダン)
ジョグジャカルタの料理で、月桂樹の葉、レモングラス、ガランガル、塩などの調味料で煮込みます。
味付けは甘いですが、地方によってそれぞれの味付けが異なります。
~番外編~Telur Asin(テロル・アシン)
卵の塩漬けで、一般的にはアヒルの卵で作られます。
日本では生卵はポピュラーですが、インドネシアでは食品衛生上、生食は推奨されておりません。
基本的には中までしっかり火が通るよう調理して食します。
↑インドネシアのスーパーで常温で販売される卵
インドネシアにおける卵のその他の用途
インドネシアでは、様々な宗教儀式においても卵が使用されます。
インドネシアの様々な地域では、イスラム教の行事の一つであるムハンマド生誕祭において卵を使用して飾りつけをします。
卵の装飾を使用した預言者ムハンマドの生誕を記念するお祝いは、東ジャワ州バニュワンギではエンドンエンドンガン(Endong-Endongan)という名前で、その他バリやそしてカリマンタンのマカッサルでもよく見られます。
エンドンエンドンガンのイベントでは、バナナの幹に卵を刺して飾り、村の周りを練り歩きます。
バリ島のマレイベントでは、カラフルな装飾用の卵がモスクや家などの様々な場所に配置・装飾されます。
この伝統的な行事では、卵は預言者の生誕祭の行事の特徴の一つとなります。
卵は殻、卵白、卵黄の3つの部分で構成されていますが、皮膚は誕生、卵白は生命、卵黄は生命の終わり
として解釈されます。
たくさんの卵を使用するため、その時期のみ、卵の消費量は多くなる傾向にあります。
いかがでしょうか。
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