【コラム】地震大国インドネシアの地震と耐震事情
インドネシアは日本以上に大小含め多くの地震が発生する地震大国で、一年あたりの地震の発生回数は中国に次ぎ世界2位とも言われています。
実際に、昨年11月にも首都ジャカルタのあるジャワ島でマグニチュード5.6の地震が発生し、震源が浅かったために多数の犠牲者を出す事態となりました。
その3日前にはスマトラ島南西沖を震源とするマグニチュード6.9の地震があり、ジャワ島では12月上旬にもマグニチュード5以上の地震が相次いでいます。
参考WEBサイト:
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221123/k10013901301000.html
https://sp.m.jiji.com/article/show/2880841
なぜ、インドネシアではこれほどまでに地震が多いのでしょうか?
今回のコラムでは、インドネシアで地震が多発している背景と耐震事情について、紹介致します。
冒頭でも紹介致しましたように、国連開発計画(UNDP)の世界報告書「”災害リスクの軽減に向けて”~開発に課せられた課題」によれば、
1980年から2000年の地震発生頻度でインドネシアは世界第2位でした。
ちなみに、このランキングで日本は4位でした。
マグニチュード5.5以上の地震発生回数(年平均)
順位 | 国名 | M5.5以上の地震発生回数(年平均) |
1 | 中国 | 2.10 |
2 | インドネシア | 1.62 |
3 | イラン | 1.43 |
4 | 日本 | 1.14 |
5 | アフガニスタン | 0.81 |
6 | トルコ | 0.76 |
7 | メキシコ | 0.76 |
8 | インド | 0.67 |
9 | パキスタン | 0.62 |
10 | ペルー | 0.62 |
(図 UNDP発表を元に弊社作成)
インドネシアで地震が多い理由
インドネシアでこれほど地震が多い理由は、この国の地理的特徴にあります。
インドネシアの国土はインド・オーストラリアプレート、ユーラシアプレート、太平洋プレートの3つのプレートにまたがっており、
「環太平洋火山帯」あるいは「環太平洋造山帯」と呼ばれる地域に属しています。
太平洋を取り囲むように位置する環太平洋火山帯では、火山活動や地震活動が活発で、
世界の地震の約90%がこの火山帯で発生しています。
インドネシアでもこれらプレートの境界や内陸活断層で大地震が発生しています。また、日本もインドネシア同様、この火山帯に属しています。
インドネシアは国土面積が広く、活火山やプレート境界を多く国土内に持つため、環太平洋火山帯に位置する国々の中でも地震が多いと言えます。
インドネシアの耐震対策と日本との比較
島国の日本とインドネシアでは、環太平洋火山帯による地震の発生という点はもちろん、地震が起こった際に津波などが起こりやすいといった共通点があります。
一方で、地震対策や耐震技術という観点では、インドネシアは日本と比較すると、かなり脆弱であると言わざるを得ません。
日本の建築基準法は、大地震など自然災害が発生するたびに見直され、過去に何度も改正されてきました。
新たに建築される建物を建築基準法に則って耐震化することはもちろん、古い建物についても、専門家による耐震診断・改修を行うことが推奨されています。
参考WEBサイト:
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
https://www.taishin-jsda.jp/
一方でインドネシアの地震対策はいまだ十分とは言えません。
インドネシアでも、建築物の耐震性を高め地震に備えるために、建築におけるインドネシア国家規格(Standar Nasional Indonesia: SNI)が設定されています。このSNIでは構造や性能、建築資材に至るまで最低限の品質要件が設定されています。
参考WEBサイト:https://bsn.go.id/main/berita/detail/11776/rawan-gempa-bsn-tetapkan-sni-bangunan-tahan-gempa
現代的な建築が比較的多いジャカルタではSNIを満たした建築も多く、インドネシアの他の地域と比較すると、地震被害が抑えられています。しかし、郊外では耐震性が不充分で安価なレンガ造りの建物が多く、地震に対する対策の重要性の周知が低いと言えるでしょう。
また、建物の基礎の脆弱性や、コンクリートの品質の低さが、地震の際の崩壊のしやすさをますます高めているとされています。
インドネシアでは森林伐採の進行や木材価格の高騰に伴い、持続可能で環境に適合した伝統的な竹や木の建築よりも、耐震性が不充分で安価なレンガ造りの家を選ぶ人が増えてきました。
しかし、特に貧困層の住宅の多くは適切な基礎や設計を考慮せずに建築されており、安全性に不安が残る状況です。
そのため、日本では大きな建物被害や人的被害が発生しないような規模の地震でも、インドネシアでは建物が倒壊し、大きな被害につながることがあります。
日本の耐震技術や地震対策のノウハウは世界でもトップクラスであるため、このような技術や知識をインドネシアへ伝え、実践することができれば、地震大国として両国の地震による被害を減らすきっかけになるのではないでしょうか。
弊社では、調査や現地視察や業界キーマン、当局キーマンのご紹介、アポイント、同行による交渉サポート等、様々な方法で皆様のインドネシアビジネスのサポートを行なっております。
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