【コラム】インドネシア国内の地域間貿易と輸送手段
インドネシア国内は1万以上の島々から成る島嶼国であり、地域間貿易はインドネシア経済にとって極めて重要な役割を果たしています。
今回のコラムでは、地域間貿易を「(インドネシア国内の)州から州への商品の貿易と流通」と定義し、インドネシアの地域間貿易における州間の売買と輸送手段についてご紹介していきます。
本コラムの出典は全て以下のインドネシア中央統計局(BPS)の報告書からとなります。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perdagangan antar wilayah Indonesia 2020 (インドネシアの地域間貿易2020)より弊社作成(閲覧日:2021年3月23日)
https://www.bps.go.id/publication/2021/03/15/0b4b9db5b41fd7d2756d94fd/perdagangan-antar-wilayah-indonesia-2020.html
インドネシアの地域間貿易の特徴
34州の州から成り立つインドネシアでは、各州がそれぞれの需要を満たすために州間で地域間貿易を行っています。
近年、インドネシアにおける輸送の急速な発展により州間の地域間貿易は以前より活発になり、地域間貿易の発展はインドネシア全体の経済に貢献しています。
2019年時点でインドネシアにおける地域間貿易取引総額は1628兆ルピアに達し、総量は2億,5370万トンとなっています。
販売取引額が購入取引額より多ければ黒字、販売取引額より購入取引額が多ければ赤字とすると、34州のうち地域間貿易が黒字の州は半分以下の13州でその他の州は赤字となっています。
下記は2019年の地域間貿易収支上位3地域と下位3地域の収支額を比較したグラフです。
2019年の地域間の貿易収支上位3位に入る州はジャカルタ、東ジャワ、南スマトラで下位3位はバンテン、ランプン、バリです。
以下よりこの6つの地域に注目して、地域別の地域間貿易の特徴をご紹介していきます。
インドネシアの地域間貿易における地域別の特徴
ジャカルタ
インドネシアの首都であるジャカルタは2019年の地域間貿易において、279兆ルピアの黒字となっています。
主な輸出地域は、バンテン、西ジャワ、中部ジャワで、中でもバンテンが輸出額の半分の割合を占めています。
主な輸出品はデクスライト(ディーゼル燃料)、自動車でこの2つが輸出額の約60%を占めています。
主な輸入品は鉱石、冷凍魚、ステッカーとなります。
また、輸送手段は主に陸上輸送で行われています。
東ジャワ
スラバヤが州都の東ジャワは2019年の地域間貿易において、122兆ルピアの黒字となっています。
主な輸出地域は、ジャカルタ、中部ジャワ、西ジャワとジャワ島に集中しています。
また、東ジャワからの輸出•輸入先の1位はジャカルタとなっています。
主な輸出品は、鉱石、タバコ、薬で、主な輸入品は化学製品、タバコ、自動車となります。
輸送手段は主に海上輸送で行われています。
南スマトラ
パレンバンが州都の南スマトラは2019年の地域間貿易において、37兆ルピアの黒字となっています。
主な輸出地域は、バンテン 、ジャンビ、ランプンと南スマトラから近い州に集中しています。
主な輸出品は、ゴム液、石炭、パーム原料です。主な輸入品は携帯電話が第一位であることが特徴的です。
輸送手段は主に陸上輸送で行われています。
バンテン
ジャワ島西部に位置するバンテンは2019年の地域間貿易において、329兆ルピアの赤字となっています。
主な輸出先は、東ジャワ、西ジャワ、ジャカルタというようにジャワ島に集中しており、主な輸出品は鋼板、自動車、鉄製品となっています。
また、主な輸入先は、ジャカルタ、西ジャワ、南スマトラで、主な輸入品はデクスライト(ディーゼル燃料)、ゴム液、酸化カルシウムとなります。
輸送手段は陸上輸送のみで行われています。
ランプン
スマトラの南端に位置するランプンは、2019年の地域間貿易において、60兆ルピアの赤字となっています。
主な輸出先は、西ジャワ、ジャカルタ、ジョグジャカルタというように、先述のバンテンと同じく、ジャワ島に集中しています。
主な輸出品はセメント、砂糖、ゴム液で、主な輸入品はコーヒー豆、アスベスト、自動車です。
輸送手段は主に陸上輸送で行われています。
バリ
観光地として有名なバリですが、2019年の地域間貿易において、33兆ルピアの赤字となっています。
主な輸出先は、西ヌサトゥンガラ、東ジャワ、ジャカルタとなっております。
主な輸出品はクローブ、飼料、パン・お菓子・麺で、主な輸入品は自動車、潤滑油、医療機器となります。
主な輸送手段は陸上輸送で次いで海上輸送で行われています。
6つの地域を比べると、地域間貿易においてインドネシア国内で貿易格差があることがわかります。
貿易格差の原因として、海上輸送のコストが高いことや、倉庫などの施設の格差、天然資源などの資源格差が挙げられます。
政府は貿易大臣規定第92号において地域間貿易より広義の意味を持つ島同士の貿易である島間貿易についての取り決めを発表しています。
この規定では、インドネシア国内で海上運送によって行われる島間の取引貨物は事前に貨物データを提出する義務があることを定めています。
事前に提出された貨物データは、貨物が船に積み込まれる前に財務省のシステムを介してオンラインで確認できるようになります。
また、事前に貨物データを提出していない場合は警告がいきそれでも守らなかった場合は事業基本番号(NIB)の取り消しが行われます。
政府は、この規定によって将来的に島間・地域間貿易活動を組織化することで貿易格差をなくすことや不正な密輸を防ぐことを目指しております。
また経済調整大臣によると、インドネシア政府はナショナル・ロジスティクス・エコシステム(NLE)という物流全体(上述の貨物データ管理システムを含む)を管理できるシステムを利用し政府と民間の物流プラットォームを統合することで、物流コストの削減と物流の効率化を目指しています。
NLEにより物流システムを整備し、国内だけでなく海外においての貿易について競争力を高める狙いもあるようです。
インドネシア政府が注目している、地域間・島間の物流システムの整備についてはまだまだ課題も多くありますので、海外企業の進出チャンスと考えられます。
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