【コラム】生産減少が続くインドネシアの茶葉~インドネシアの最新お茶生産事情~

インドネシアにはお茶を飲む文化があり、インドネシアの人々にとってお茶は非常になじみ深い飲み物です。

インドネシア国内の茶葉生産はオランダ植民地時代に東インド会社によって導入され、それ以降紅茶(ブラックティー)と緑茶を生産しています。そのころからインドネシアの人々の間ではお茶を飲む習慣が根付いたと言われています。

しかしながら、近年インドネシアでは茶葉の生産量が減少傾向にあります。FAO(国際連合食糧農業機関)によると近年世界的にはお茶の需要は拡大しており、お茶の生産量も上昇傾向にあるにも関わらず、インドネシア国内の茶葉の生産や国外への輸出量は近年減少傾向にあり、インドネシア国内でも取り組むべき問題としてインドネシア評議会など各方面から指摘の声が挙がっています。

本コラムでは、インドネシアの最新お茶生産事情についてご紹介します。

以下のグラフは、全てインドネシア中央統計局(BPS)の報告書から弊社が作成したものです。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Statistik The Indonesia 2019 (インドネシアのお茶の統計2019)より弊社作成
(閲覧日:2021年2月26日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/30/03d297c46954412b6da4ad46/statistik-teh-indonesia-2019.html

また、本コラムの“茶葉”の種類は、緑茶と紅茶(ブラックティー)を合計したものです。

 

インドネシア国内のお茶の生産

以下は、インドネシアでお茶の生産量が多い州並びに茶畑の面積が大きい州のグラフです。

茶葉の総生産量も茶畑の面積も、トップの西ジャワ州と次いで2位の中部ジャワ州をあわせると、インドネシア全体の80%以上をジャワ島が占めていることが分かります。ジャワ島外では、北スマトラ州と西スマトラ州が茶葉の生産が盛んな州となっています。

また、以下は業態別で見たインドネシア国内の茶葉の生産量推移です。冒頭部分でも触れた通り、インドネシア国内のお茶の生産量は近年徐々に減少傾向にあります。

上記のグラフのように、インドネシアで最も茶葉が生産されている企業形態は小農園業で、2019年時点では、合計で約129,000トンの茶葉が生産されました。

以下はインドネシア国内の茶畑の面積の推移を表すグラフです。

 

茶葉の生産量と同様に、インドネシア国内で最も茶畑の面積が広い経営業態は小農園業者です。2019年時点でのインドネシア国内の茶畑の総面積は約111,000haでした。インドネシア国内の茶畑の面積も、茶葉の生産量と同様、徐々に減少傾向にあるようです。

インドネシア国内の茶葉の生産量並びに茶畑の面積が近年減少している理由としては、より成長速度が速く、且つ収益性の高い農作物の生産への切り替えなどが行われていることが背景の一つとして挙げられます。茶葉の生産コストが高いことも後押しし、茶畑からアブラヤシ農園やその他の野菜などの生産へ転換するケースなどが多いようです。その結果、過去5年でインドネシアの茶葉生産量は大きく減少しました。

現状は収益性が重視されているため、特にインドネシア政府としては茶畑を保護するための政策や取り組みなどが行われていないのが現状です。

また、インドネシア茶評議会(Dewan The Indonesia/DTI)によると、インドネシア国内のプランテーション全体の茶樹の40%がすでに老齢化しつつあるため生産性が低下しており、その点も近年インドネシア国内での茶葉の生産量が減少している要因として挙げられるそうです。

生産性の向上のためには茶樹の若返りが必要ですが、茶畑の所有者の多くは小規模農園であり、その管理方法・品質は基準を満たしていない農園も多く、また茶樹の手入れのためのコストも農園にとっての大きな負担となることが課題として挙げられます。

その他、海外からの格安な茶葉の輸入が増えていることも何らかの影響を受けているようです。

 

インドネシアの茶葉の輸出入

以下は、インドネシアから国外への茶葉の輸出量と輸出額推移です。


量も年々減少傾向にあります。最大の輸出国は隣国マレーシアで、次いでロシア連邦、ア
メリカ合衆国への輸出が多くなっています。

 

インドネシアから国外への茶葉の輸出量が減少している一方、インドネシア国内への諸外国からの茶葉の輸入量は近年増加傾向にあります。

上記のグラフのように、インドネシアはベトナムやケニアから茶葉を輸入しておりますが、インドネシア商工会議所(Kadin)によると、安価であまり高品質とは言えない茶葉の輸入が増加しているようです。インドネシア茶評議会(DTI)の調査によると、輸入茶のうち約90%は低品質の茶葉だったそうです。輸入された安価で低品質な茶葉は、インドネシアの茶葉で作られる製品に混合されており、インドネシア商工会議所やインドネシア茶評議会からは、品質のよいインドネシアのお茶の質を低下させることになりかねないとの指摘の声が挙がっています。

このような状況を受け、インドネシア商工会議所は、インドネシア国内の産業を保護する目的でも、低品質な輸入茶葉への関税率を見直すよう政府に要請しています。現在インドネシア国内への茶葉の輸入関税は20%ですが、世界貿易機構(WTO)が定める基準の40%を大きく下回っており、インドネシア商工会議所は特に低品質の茶葉に対しての関税率の引き上げを検討すべきとしています。

https://www.cnnindonesia.com/ekonomi/20190314114204-92-377184/kadin-minta-bea-masuk-impor-teh-kualitas-rendah-naik

 

インドネシア農業省は、インドネシア国内の茶葉生産量を2024年には32万トンにしたいという目標を掲げていますが、近年の茶葉の生産量の減少傾向や輸出入の状況を鑑みると、あと4年ほどで現状の2倍以上の生産体制にするには農園の保護など多額の資金が必要となるため、政府の補助なしでは目標実現は大変厳しいと見られています。

しかし、前述の通り世界的にはお茶の需要は徐々に高まっており、つまりインドネシアにも生産・輸出拡大のチャンス自体はまだまだあると言えます。インドネシア茶評議会は、インドネシア政府が輸出品に適切な規制を設け、国内の茶葉生産を保護していくこと、農園の体制強化を行っていくことが重要な課題と述べています。

 

参考WEBサイト:
https://jelajah.kompas.id/ekspedisi-teh-nusantara/baca/pasang-surut-teh-indonesia-di-kancah-dunia/
https://ekonomi.bisnis.com/read/20200116/99/1190850/pemerintah-perlu-anggaran-khusus-untuk-teh
https://kemenperin.go.id/artikel/21499/Menggairahkan-Kembali-Industri-Teh-Nasional
https://ekonomi.bisnis.com/read/20200116/99/1190839/peningkatan-produksi-teh-terkendala-lahan-yang-terus-berkurang

 

いかがでしょうか。

弊社では、インドネシアの農業に関する最新情報や様々なテーマに関する調査やオンラインでのインタビュー手配などを行っております。ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

参考コラム:

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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