【コラム】インドネシアの太陽光発電事情

12月上旬にスペイン・マドリードで開催された、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)では、温暖化対策に消極的な国に授与される不名誉な賞「化石賞」に日本が選ばれました。

また、温暖化対策を求める若者の運動を世界に広げたスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが現地でデモを行うなど、環境問題とその対応が全世界的な喫緊の課題であることが伺えます。

これまでの弊社の記事でもお伝えしてきた通り、インドネシアでも環境問題とその対策は非常に活発な議論と実践がなされております。

ゴミ問題やバイオマス燃料など、様々な視点から紹介してきましたが、今回は太陽光発電という観点からお伝えします。

 

インドネシアが持つ太陽光のポテンシャル

赤道直下のインドネシアでは、日本など緯度の高い国と比べて日照量が多く、1日当たりの平均の照射太陽熱エネルギーは4800kWh/平方メートルにまで達します。

これをインドネシアの総面積を用いて計算すると、合計500GWに及ぶ太陽光エネルギーのポテンシャルを有していると概算できます。(世界銀行, Energy Sector Management Assistance Program :Annual Report 2018)

 

▼インドネシアの日照マップ

出典: Solargis, 「Global Horizontal Irradiation Indonesia」(閲覧: 2019年12月13日)
https://solargis.com/maps-and-gis-data/download/indonesia

また、インドネシアは多くの島から成る島嶼国であるという地理的な特性から、国全体を網羅する大規模な電源・送電システムを導入するのではなく、各地域での地産地消を目的とした小規模のオフグリッド電源・送電システムが好まれます。

具体的には、日本のように石炭火力発電所などから各家庭へ送電する集中型システムよりも、各家庭やその周辺地域で太陽光発電を行いその特定地域のみで消費する分散型システムの方が地理的制約に合致しているということです。

このような理由から、インドネシアでは太陽光発電が盛んに実践されているかと思いきや、実はインドネシアでは61MW程度の太陽光発電容量しか所有していません。

タイではすでに2.7GW、フィリピンでは897MWの発電容量が確保されており、これらのASEANの国々と比べてインドネシアは大きな遅れをとっています。

 

▼東南アジア主要国の太陽光発電容量(MW)

出典: 国際再生可能エネルギー機関IRENA, 「Renewable Energy Statistics 2019」より弊社作成 (閲覧:2019年12月13日)
https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2019/Jul/IRENA_Renewable_energy_statistics_2019.pdf

 

インドネシアが抱える太陽光発電の課題

インドネシアの潤沢な太陽光資源量と貧窮な太陽光発電量のギャップには、政策に関連する障壁が大きな要因としてあげられます。

例えば、BOOT(Build Own Operate Transfer)政策により、整備する時点では民間部門が建設、所有、運営を行なっていた太陽光発電所を、最終的に公共部門へ所有権を移転しなくてはなりません。

この制度の結果、民間部門は長期的な投資が難しくなり、発電所整備への意欲が削がれてしまいます。

参考: エネルギー経済・財務分析研究所IEEFA「 Indonesia’s Solar Policies 」(閲覧: 2019年12月13日)

また、太陽光発電に用いる太陽光パネルを「現地生産」のものを強く推奨しているため、建設のコストが非常に高くなっています。

「現地生産」の太陽光パネルは輸入品と比べ、はるかに価格が高く、質が低いので、建設会社にとっては大きなボトルネックとなっています。

さらに、日本のように政府による援助が少なく、既存の石炭火力発電所と同等の販売価格を強いられているため、市場での競争に負けてしまいます。

政府の太陽光発電に対する控えめな姿勢は、2019年に国営電力会社が提出しエネルギー・鉱業資源省(MEMR)に承認された2028年時点での太陽光発電量の長期目標が、インドネシア全土を合わせてたったの908MWに留まっていることからも伺えます。

参考: 国営電力会社「Rencana Usaha Penyediaan Tenaga Listrik (電力供給事業計画) 2019-2028」(閲覧:2019年12月13日)
http://gatrik.esdm.go.id/assets/uploads/download_index/files/5b16d-kepmen-esdm-no.-39-k-20-mem-2019-tentang-pengesahan-ruptl-pt-pln-2019-2028.pdf

 

このように、建設コスト等に関わる経済的な能力の問題以前に、行政上の課題が山積みであることが現在のインドネシアの太陽光発電の普及を妨げている最大の要因であると考えられます。

弊社は、インドネシア鉱物資源省や環境局、関連協会やPLN(国営電力会社)などともネットワークがございます。調査や現地のご視察など、ご興味がある方はお気軽にお問合せください。

 

過去の関連記事:

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次