【コラム】インドネシアにおける太陽光発電の展望
インドネシア政府は、2025年までに再生可能エネルギーの電力供給上のシェアを23%まで高めることを目標として掲げています。この政策目標は、2030年までに温室効果ガスの排出を29%削減するという目標と併せて、持続可能なエネルギー供給システムの実現に向けた政府の決意を明確に示すものと解釈されています。
しかし、2020年の時点で言えば、上記23%の目標に対して半分の11.5%しか達成されていません。目標達成のために様々な取組を加速化するプログラムが実施されてはいますが、達成できる見通しが十分に確立されているわけではありません。
そうした状況下において、エネルギー鉱物資源省の省エネルギー総局のダダン・クスディアナ局長は、「目標達成を加速化するプログラムの一つは、太陽光発電所の設置である」と明言しています。
そこで問題になるのは、太陽光発電の発電能力はどの程度のレベルになるのか、太陽光発電は再生可能エネルギーの発電シェア全体を押し上げるほどの重大な能力を持ちうるのか、ということになります。
他の種類の再生エネルギーと比較して、インドネシアにおける将来の太陽光発電は、再生可能エネルギーの発電量拡大の先導的役割を果たす可能性があります。その理由としては、モジュール化の容易さ、発電容量の大きさ、施設設置期間の短さなどを挙げることができます。
その上、太陽光発電については、その潜在的可能性の大きさに比べて現状での活用の度合いが低い点も注目を集めています。この膨大な可能性をどの程度実現できるのか、という点がインドネシア政府にとっての大きな課題だと認識されています。
エネルギー鉱物資源省の再生可能エネルギー・新エネルギー総局のデータに基づくならば、太陽光発電の潜在的可能性は207.8ギガワットであるのに対して、既に稼働している太陽光発電の容量は0.135ギガワットしかなく、可能性の0.02%しか実現できていないことになります。
潜在的な可能性が大きいことに加えて、太陽光発電には資源の分布に関する地域的な偏りがなく、インドネシア全土において利用できる可能性があります。
各地域の潜在的可能性に関する現在の想定では、西カリマンタン州が一番大きく20,113メガワット、ジャカルタ特別州が一番小さく225メガワットと試算されています。
地域間の偏りがないという特性を考慮すると、太陽光発電の潜在的可能性が現実化することによりインドネシアのすべての地域で再生可能エネルギーの発電シェアが上昇することになります。
インドネシア政府は、エネルギー鉱物資源大臣規則2019年第13号(同大臣規則2018年第49号の修正)によって「屋根に太陽光発電所を」政策を継続・推進することで太陽光発電を拡大しようとしています。
太陽光発電は、ソーラー・モジュール、インバーター、配電盤、安全装置、及び電気メーターを含んでいます。国営企業のPT Perusahaan Listrik Negaraのデータによると、2020年6月時点におけるインドネシア全土で屋上太陽光発電は2,346機設置され、合計の発電能力は11.5メガワットとなっています。
また、エネルギー鉱物資源大臣規則2018年第49号が発布された後、1,300機の屋上太陽光発電機材が新たに設置され、その半数以上に当たる703機はジャカルタ特別州内のもので、それらの合計発電能力は、2,986.51キロワットピーク(kWp)となっています。
ジャカルタに続いて多いのは西ジャワ州で、656機、合計2,462.12kWpです。屋上設置型の太陽光発電に加えて、以下のリストにあるような大規模太陽光発電施設の建設も進められています。
出典:エネルギー鉱物資源省再生エネルギー・新エネルギー総局
インドネシア政府は、太陽光発電の可能性を現実化するための施策をさらに導入しようとしています。
屋上太陽光発電促進政策に加えて、政府は最近、水上太陽光発電施設を急増させることを目指しています。
国営電力会社(PLN)の2021~2030年の電力供給計画によると、ジャワ島の水上太陽光発電所の開発により、1,900メガワットの電力供給が予定されています。
エネルギー鉱物資源省の省エネルギー総局のダダン・クスディアナ局長は「水上太陽光発電の可能性は、内水面、つまり湖、貯水池及びダムのような場所での発電も含み、それらはPLNの2021~30年の計画案に盛り込まれている」と述べています。
水上太陽光発電は、太陽光の発電利用を促進するための政府プログラムの一つであり、発電コストの低さ、事業ライセンスの容易さ、土地収用が不要、比較的容易に大規模施設が設置可能、といった複数の利点を有しています。
近い将来において水上太陽光発電は、既に稼働している水力発電所との融合も奨励されることになるでしょう。
先のダダン局長は、「水上太陽光発電と水力発電の組合せは、通常はピーク時のみ運転する尖頭負荷発電施設として利用される水力発電所の稼働時間を増加させることを可能にし、水力発電施設をより効率的に運用できるようにする」と述べています。
現在稼働中の水上太陽光発電所の内、最も大規模なものの一つは、西ジャワ州チラタの貯水池に設置されたもので、145メガワットピークの発電能力を保有しています。
参考文献:
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インドネシアにおける太陽光発電の可能性は非常に大きく、大きなビジネスチャンスにつながっています。
2025年に政府目標の再生可能エネルギー利用率23%を達成するためには、太陽光発電の分野における巨大な投資が求められています。
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