【コラム】インドネシアにおける小規模産業について
2020年インドネシアの実質GDP成長率は、新型コロナウイルスの影響を受け−2.07%となり、インドネシアの経済はアジア通過危機直後以来初めてとなる通年でのマイナス成長となりました。
また、インドネシアにおいて新型コロナウイルスの影響を大きく受けた産業のひとつは製造業で、そのなかでも小規模産業(IMK)が挙げられます。
小規模産業は、社員数が少ないため、その点で新型コロナウイルスの影響も受けやすいと言えます。
今回はインドネシアのこれら小規模産業の現状について、新型コロナウイルスによる影響の観点でご紹介致します。
本コラムに掲載したデータは全て、以下のインドネシア中央統計局(BPS)の2020年COVID-19パンデミック期における小規模産業についての報告書からの出典です。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Industri mikro dan kecil di masa pandemic covid-19 2020(COVID-19パンデミック期の小規模産業)を基に弊社作成
(閲覧日:2021年10月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2021/08/25/d2ff97cc365e98eedd4fad7f/industri-mikro-dan-kecil-di-masa-pandemi-covid-19–2020.html
今回のコラムで使用している用語の定義については以下の通りです。
<小規模産業>
従業員が5〜19人の小規模企業と従業員が1〜4人の零細企業が行っている産業
<対象となる産業の種類>
インドネシア標準産業分類(KBLI)によって分類されている産業のうち、以下のKBLI10~KBLI33の24の産業を小規模産業の対象としています。
KBLI 10.食品
KBLI 11.飲料
KBLI 12.たばこ
KBLI 13.繊維
KBLI 14.アパレル
KBLI 15.革、革製品
KBLI 16.木材、木製品(家具以外)、竹製品
KBLI 17.パルプ製品
KBLI 18.印刷、記録媒体
KBLI 19.石油精製
KBLI 20.化学原料、化学製品
KBLI 21.医薬品原料
KBLI 22.タイヤ、チューブ製品
KBLI 23.セメント
KBLI 24.基礎的な鉄鋼業
KBLI 25.ワイヤーを利用した製品
KBLI 26.半導体、エレクトロニクス部品
KBLI 27.変圧器、整流器、電力安定器
KBLI 28.特別な機械
KBLI 29.四輪以上の車輪のある車のスペア、パーツ・アクセサリ製品
KBLI 30.船舶、ボート
KBLI 31.家具
KBLI 32.その他加工
KBLI 33.船舶、ボート、海洋構造物の修繕
インドネシアにおける小規模産業の割合
インドネシアにおける小規模産業の州別の割合は下図の通りです。
小規模産業を行っている企業の割合が最も高いのは東ジャワ州で、ジャカルタ首都特別州、西ジャワ州、中部ジャワ州と続きます。
また、インドネシアにおける小規模産業は、ジャワ島がインドネシア全体の43.66%を占めています。
インドネシア標準産業分類(KBLI)別に見ると、インドネシアにおける小規模産業の中で一番多い業種は「食品業」で、小規模産業の24.8%の割合を占めています。
「食品業」に次いで多いのが、「セメント製造業」(11.56%)、「アパレル業」(9.67%)となっています。
インドネシアの小規模産業の成長率
下図は、2018年〜2020年にかけてのインドネシアの小規模産業の成長率の推移です。
インドネシアの小規模産業は2018年、2019年ともに5%を超える成長をしていましたが、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年は大幅にマイナス成長となっていることが分かります。
また、2020年の第二四半期における、産業種類別の成長率を見ると医薬品原料(KBLI 21)のみがプラス成長(16,69%)となり、それ以外の分野は全てマイナス成長となっています。
特筆すべきは新型コロナウイルス以前に小規模産業を支えていた食品とアパレルにおいて、人々の移動制限や外出自粛制限の影響でマイナス成長が続いており、2020年は特に外食関連で影響を受けた食品産業の成長率は−11.8%、アパレル業の成長率は−33.02%と大きな打撃を受けています。
新型コロナウイルスによる小規模産業の会社の状況
下図は小規模産業の会社の状況を表しています。
2020年に廃業した会社は小規模産業全体の7.06%で、廃業はせずとも生産を止めている会社は小規模産業全体の11.25%となっています。
上図より、小規模産業に分類できる会社のうち約18%は生産活動が停止状態になっていることが分かります。
また、小規模産業の中でも産業の種類によりその状況は異なり、各分野と比べて好調な産業の例をあげると「半導体」「エレクトロニクス部品産業(KBLI26)」は、テレワークの導入等が要因となって、需要が高まり、生産を継続している会社の割合が全体の約96%となっています。
続いて小規模産業でも比較的パンデミックの影響が少ない地域をあげると、ジャンビ州、アチェ州、北マルク州で、これらの州では小規模産業でも80%以上の会社がパンデミック中も通常通り生産を行なっていることが分かっています。
一方、「たばこ産業(KBLI 12)」、「変圧器・整流器・電力安定器産業(KBLI 27)」、「船舶・ボート産業(BLI 30)」は、2020年を通して一時的に生産を止めた会社の割合が高く、それぞれ、52.8%、22.43%、19.84%でした。
ここでもう一度、2020年の第二四半期に、一時的に生産を止めている会社の数が多い産業である「食品産業」に目を向けてみましょう。
小規模産業の中でも企業数が多い食品産業の停滞は、小規模産業全体の統計に及ぼす影響も大きく、食品産業の立ち直りが小規模産業の今後の成長率を左右すると言っても過言ではありません。
小規模産業の中でも分野ごとに新型コロナウイルス感染拡大から受けた影響の度合いは異なりますが、いずれにしても多くの分野において今回のコロナパンデミックによる打撃を受けていることが分かります。
小規模産業は、大規模産業と比較すると企業体力が弱い企業が多いため、新型コロナウイルスによる生産停止の長期化により廃業に繋がるリスクも高まります。
新型コロナウイルスによる移動制限や外出制限の継続は、今後も特に小規模産業の経済活動に更なるダメージを与え、それが更に産業界全体の深刻な状況に発展しかねない状況であり、これからの政府の取り組みについては注視する必要がありそうです。
弊社では様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。
セミナーの開催や講師派遣なども行っておりますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。
関連コラム:
株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム