【コラム】インドネシアのSIMカード事情
日本人がインドネシアを訪れた際に戸惑うことの一つに、SIMカードの仕組みの違いが挙げられるでしょう。
日本とは異なり、携帯電話本体と違うキャリアのSIMカードを使うことができる「SIMフリー」がインドネシアの主流です。
このSIMカードに関して、購入時の住民登録証(KTP)と家族カード番号の登録が、2017年10月末から必須になりました。
その背景には、住民登録証の電子化や、政府によるサイバー犯罪への警戒心の高まりがあります。
お得だけど難易度が高いSIMフリー
日本では多くの携帯電話に、特定のキャリアの携帯電話に対して、同じキャリアのSIMカードしか使用することができない「SIMロック」がかかっています。
一方で、インドネシアではどのキャリアのSIMカードでも使用することができます。
SIMフリーの主なメリットとしては、下記の点が挙げられます。
・より安い料金体系のSIMカードを選べる
・特別な契約なしに、SIMカードが入った携帯電話以外(タブレットやPC)でも、インターネット共有が可能
SIMフリーの制度下のデメリットとしては、キャリアによって料金に幅がある分、通信環境にも同様に幅がある点には気をつけなければいけません。
インドネシアの主要キャリアのSIMカードの通信速度をまとめたのが以下の図です。
Telkomsel | Indosat Ooredoo |
Smartfren | 3 Tri | XL Axiata |
BOLT! | |
平均ダウンロード速度 | 8.06 Mb/s |
3.63 Mb/s |
14.77 Mb/s |
3.15 Mb/s |
6.68 Mb/s |
7.03 MB/s |
平均アップロード速度 | 5.79 Mb/s |
2.95 Mb/s |
4.66 Mb/s |
3.44 Mb/s |
5.01 Mb/s |
1.19 Mb/s |
出典: nPerf, “Barometer of mobile Internet connections in Indonesia”より弊社作成(閲覧日:2019年8月28日)
https://media.nperf.com/files/publications/ID/2019-02-13_mobile-internet-connections-survey-nPerf-2018.pdf
SIMカードへの個人情報登録が必須に
インドネシア情報通信省(Kemkominfo)は、住民登録証(KTP)に記載された個人番号(NIK)及び家族カード番号(No KK)を用いた通信電話番号の登録制度を、2017年10月に施行しました。
この制度を開始した理由について、Kominfoは下記の3つの理由を説明しています。
①政府(この場合内務省を指す)はすでに電子KTPに関わるIT技術に関して準備を整えており、NIKとNo KKのデータが正しいかどうかをチェックする。通信オペレータにより、新規及び再登録のSMSが内務省に届けられ、有効かどうかが電子的にチェックされる。
②新規及び再登録された番号が顧客の身元の有効性を保証し、顧客にとっての通信サービスの快適さを生み、また担保する。
③かなり以前になされた登録が上記のような有効な手順にて行われていない。
本改正により、日本人を含め海外国籍の住民は、通信(キャリア)会社にて、パスポートと滞在ビザを直接提示しなければならなくなり、SMSからの登録が可能な一般的な方法に比べて不便です。
政府のネット犯罪への警戒が背景?
携帯電話と個人情報を紐付けするという政策は、国民情報の電子化に加えて、政府のサイバー犯罪への警戒の高まりも理由だと考えられます。
インドネシア情報通信省は2018年9月にも、情報通信部門のためのサイバー安全対策組織を作りました。ただ一方で、この動きは政府による情報統制が進む危険性もはらんでいます。
SIMカード事情はじめ、インドネシアのネットサービスへの政府の方策は刻一刻と変化し続けています。
現地進出を検討される際は、インターネットに関わる法体系や有力企業などをきちんと理解する必要があります。
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