【コラム】インドネシアのごみ問題から考える循環型社会
インドネシアは毎日大量のごみが排出されており、国や自治体を悩ませる深刻な問題となっています。
弊社は数年前よりインドネシアのごみ問題に注目し、これまでも何度かコラムでご紹介しましたが、今回のコラムではインドネシアのごみ問題から考える循環型社会についてご紹介します。
日本のごみ(廃棄物)の種類
インドネシアのごみ問題についてご紹介する前に、日本で定められているごみ(廃棄物)について簡単にご説明します。
私たちが日頃ごみと呼んでいる廃棄物は、大まかに「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の2種類に分類されます。
下図は廃棄物の種類と分類です。
出典:e-reverse.com 産業廃棄物とは を基に弊社作成(閲覧日:2021年3月31日)
https://www.e-reverse.com/service/e-reverse/introduction/industrial_waste/
■産業廃棄物
事業活動によって生じる廃棄物のことを言います。木屑・紙屑・廃酢・廃アルカリ等。
産業廃棄物は、法で定められた6種類と、政令で定められた14種類の計20種類があります。
■一般廃棄物
産業廃棄物以外の廃棄物のことを言います。一般廃棄物は、事業系一般廃棄物、家庭系一般廃棄物、特別管理一般廃棄物に分けられます。
参考:https://www.kamtecs.co.jp/disposal/about.html
インドネシアの廃棄物の種類
インドネシアにおける廃棄物の分類について、廃棄物管理法(2008年法律第18号)によって定められており以下の3種類に分けられています。
■家庭系廃棄物
家庭系廃棄物は、一般家庭により排出される家庭廃棄物のこと。
日本で言う一般廃棄物と同じような分類です。
■家庭系類似廃棄物
家庭系類似廃棄物は、商業・工業・公共施設などから排出される家庭込みに似た種類のごみのこと。
日本で言う産業廃棄物と同じような分類です。
■特定廃棄物
特定廃棄物は、有害物質を含むものや災害時の廃棄物のこと。
日本で言う特定管理産業廃棄物と同じような分類です。
日本とインドネシアのごみ(廃棄物)の大まかな分類は似ていることが分かります。
インドネシアのごみ(廃棄物)処理問題
2019年時点で、インドネシアでは年間6,400万トンのごみ(廃棄物)が排出されていますが、そのうちの60%は埋め立てられています。
更に埋め立ての前処理として、日本のように焼却処理をせず重機で平らにし開放投棄する”オープンダンピング”という方法が採用されています。
“オープンダンピング”で投棄すると、ハエやネズミなどがごみをあさり伝染病等を媒介する脅威や、生ゴミが分解する家庭で発生するメタンガス等の汚染物質が周囲に発散してしまう等の問題があります。
また焼却処理のようにごみの量を減らすことができないため、ごみの量は増え続けインドネシア全国に380ある埋立地は殆ど満杯近くになっているのが現状です。
インドネシアはこのままオープンダンピング処理を続けていくと、近い将来廃棄物の埋め立てに対応できなくなってしまいます。
廃棄物処理はインドネシアで社会問題となっており、早急に解決しなければいけない課題です。
参考:https://www.kompas.com/sains/read/2020/12/18/070200023/indonesia-hasilkan-64-juta-ton-sampah-bisakah-kapasitas-pengelolaan?page=all
参考:https://www.idntimes.com/news/indonesia/aldzah-fatimah-aditya/klhk-jumlah-sampah-nasional-2020-mencapai-678-juta-ton
そこで弊社インドネシア総研は、数年前より、宮城県に拠点を置く県南衛生工業社と提携し”発酵処理”を通してインドネシアのごみ処理問題改善のために取り組みを行なっています。
県南衛生工業社は、前述で紹介した廃棄物の種類の中の食品等の製造工程から生じる*有機廃棄物に注目し、発酵処理の事業を行なっております。
*有機廃棄物:産業廃棄物の一種で、食品等の製造工程から生じる、野菜かす、醸造かす、発酵かす、魚および獣のあら等の固形状の不要物を総称したもの。成分が動植物に由来し養分とエネルギーを有しているため資源となる潜在力を秘めており日本でも注目されている。
県南衛生工業社による有機廃棄物処理
弊社が取り組んでいる事業内容をご説明する前に、県南衛生工業社の有機廃棄物処理技術についてご紹介します。
県南衛生工業社は、“ハザカプラント”というプラントを利用し、バクテリアによる“発酵処理”により有機廃棄物処理を行っています。
発酵処理の方法・行程は以下の通りです。
【STEP1:廃棄物の混合】廃棄物と発酵処理後物を混合する。
【STEP2:発酵槽に投入】混合したものを発酵槽の投入口に入れる。
【STEP3:攪拌(かくはん)する】1日に1回攪拌(かくはん)機を使い、発酵を促す。
【STEP4:発酵前期】発酵温度は70℃〜90℃に達し、熱により大腸菌などの病原菌やウイル血、雑草の種子は不活化する。
【STEP5:液状廃棄物散布による2次発酵促進】
レストランなどの分離槽汚泥や飲料廃棄物、家畜の血液、し尿などの液状廃棄物を散布し発酵の停滞を防ぐ。
【STEP6:発酵後期(2次発酵)】食べ残しは微生物によって分解され、水分も蒸発してカサカサの状態に。
【STEP7:発酵終了・搬出】乾燥してサラサラな堆肥が完成。トラックへ搬入。
【STEP8:ふるいによる分別】ふるい機によりビニールなどの異物を分別。
【“完熟堆肥”が完成】
参考:http://hazakaplant.co.jp/hazakaplant/processing
焼却処理の場合は、「乾燥」→「燃焼」→「後燃焼」の3工程のみでのため焼却処理に比べると工程が多いですが、焼却処理に比べて様々なメリットがあります。
下図は、焼却処理と発酵処理を項目別に比較した図です。
出典:ハザカプラントHPハザカプラントについてを基に弊社作成(閲覧日:2021年4月3日) http://hazakaplant.co.jp/
費用面では、どちらも初期投資・維持管理費用が必要になりますが、維持管理費用は発酵処理の方が低くなります。
また、発酵処理は処理後堆肥として自然に返すことができ、処理中に排出される物質も少量のCO2のみのため環境に優しい処理方法と言えます。
このように、発酵処理は焼却処理に比べ環境に優しく様々なメリットがあることが分かります。
弊社と県南衛生工業社との取り組み
前述の発酵処理技術を利用し、弊社が行なっている取り組みをご紹介します。
インドネシア大学との取り組み
以前から、インドネシア大学では、校内の有機廃棄物をコンポスト化(堆肥化)し、プランターの土壌改良につなげる取り組みを行なっていました。
そこに注目し、インドネシア大学の校内のコンポスト化においてハザカプラントを導入することで効率的に堆肥化し、農業生産に活かすことができないかと考えております。
インドネシア大学校内でのハザカプラントによるコンポスト化が成功するとボゴール大学、自治体と裾野を広げ、ゆくゆくはインドネシア全土へ拡大するという構想を練っております。
このプロジェクトは2017年に始まり現在までに以下のような取組み・現地視察が終了しております。
【2017年〜現在までの取組み・現地視察内容】
・県南衛生工業社とインドネシア大学とのMOU締結
・周辺自治体との意見交換(デポック市・ボゴール市・ジャカルタ特別州・南タンゲラン市)
・デポック市の廃棄物処理状況についての視察
・汚泥処理施設の視察(ジャカルタ特別州)
・固形廃棄物処理の視察(ジャカルタ特別州)
・ジャカルタ特別州関係者によるハザカプラント視察(宮城県)
今後、更にプロジェクトを進め、廃棄物の発酵処理技術をインドネシアへ拡大していくことを目標としております。
ハザカプラントの導入がインドネシア全土へ拡大すれば、インドネシアの社会問題となっているごみ(廃棄物)処理について解決の一手となり、インドネシアの循環型社会につなげることができるのではないかと考えております。
このような取り組みについて、ご興味のある企業様がおありしたら、導入〜実施までご支援致しますので、お問い合わせお待ちしております。
株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260