【コラム】インドネシアの不動産セクター2020年の概観 part2

先日のコラムでは、インドネシアの不動産セクター2020年の概観について、不動産セクターにおける最近の展開や、2015年にジョコウィ大統領によって導入された政策「住宅百万戸プログラム(OHM)」の近年の動向についてご紹介しました。

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Part2では、インドネシアの住宅価格指数、住宅供給指数の変動や、各地域の最新の状況やトレンドについてご紹介いたします。

民間ポータルサイトの不動産関連指数:2020年第3四半期

インドネシアの大手不動産情報検索サイトの一つ、Rumah.comは、自らのポータルサイト経由で収集された情報を分析し、以下のように幾つかの重要なトレンドを抽出しています。(Rumah.comは住宅情報検索サイトであり、以下の分析に利用されている不動産物件の種類は戸建住宅と集合住宅に限定されますので、ご留意ください)

 

住宅価格指数

Rumah.comによりますと、2020年第3四半期に、インドネシア全体の不動産価格指数(Rumah.com独自の指数、以下同様)は前期比0.5%上昇したものの、前年の指数との比較では0.5%の下落となりました。

 

第2四半期に比して微妙に上昇したのは戸建住宅価格上昇の影響が大きく、戸建の価格指数は前期比1%の上昇、前年比1.13%の上昇でした。

不動産供給指数については、年間を通して徐々に上昇していましたが、第3四半期は前期比で10%もの上昇を示しました。供給の上昇は、デベロッパー・サイドの自信回復を伺わせます。

しかしながら、第3四半期のコンドミニアムの価格指数は(全国平均としては)下落しており、第2四半期との前期比で1.05%、前年比1.4%の低下を記録しました。

コンドミニアム価格の下落は、中部ジャワ州、バンテン州、東ジャワ州等の非常に重要な都市圏におけるコンドミニアム需要の低下に起因すると考えられています。

特にジョグジャカルタでは、他地域の不動産価格指数が第3四半期に軒並み回復するなか、前期と同じ指標値に留まっています。

反対に西ジャワ州では、第3四半期にコンドミニアムの価格指数は前期比3.24%の上昇を記録し、東ジャワ州の1.74%増、ジャカルタの1.42%増を上回りました。

 

住宅供給指数

インドネシア全体の不動産供給指数は、2019年初めから緩やかな上昇基調を続けてきてい
ましたが、特に2020年の第3四半期は供給のやや大幅な上昇を記録し、同期供給指数は前
期比8.3%増、前年比24.9%増となっています。供給指数の上昇幅が大きかった地域として
は、ジャカルタ(32%)、西ジャワ(28%)、東ジャワ(14%)、バンテン(7%)が挙
げられます。

 

各地域の状況

不動産価格指数をインドネシア全体で見ると、第2四半期のロックダウンの後に経済活動が緩やかに再開された第3四半期において価格の上昇が見られるのは非常に自然なことに感じられますが、ジャカルタ首都圏の幾つか地域、例えば、北ジャカルタ、西ジャカルタ、ボゴール等では、第3四半期にも価格の下落が観察されました。

他方で、ブカシ、南ジャカルタ、タンゲランでは価格指数の上昇が記録されました。

 

価格上昇が最も大きかった3地域

中央ジャカルタ、南タンゲラン市、タンゲラン市の3地域は、ジャカルタ首都圏の中で第2四半期における大幅な落ち込みから最も大幅に反転した地域になります。

これらの地域では特に戸建住宅の価格が上昇し、供給数も増加しています。

中央ジャカルタでは、集合住宅と戸建住宅の両方を合わせた住宅セクターに関して、価格指数が第3四半期において前期比4.4%上昇し、タンゲラン市では2.2%、南タンゲランでは2%の増加でした。

 

価格が伸び悩んでいる地域

ジャカルタ首都圏の中で、本年第3四半期においても価格が伸び悩んでいる地域は、西ジャカルタ、北ジャカルタ、ボゴールで、西ジャカルタは前期比0.3%、北ジャカルタは0.2%、ボゴールは0.8%の下落を記録しました。

Rumah.comのノヴィタ氏は「西ジャカルタに関しては、近隣地域、特にタンゲラン市との価格差の存在が、価格の伸び悩みに影響している」と説明しています。

2020年第3四半期の時点で、タンゲラン市の不動産価格は平米単価1,250万ルピアで、西ジャカルタの2,380万ルピアの約半分に過ぎず、タンゲラン市のインフラ整備状況、上位中間層向け住宅の供給数を考えても、住宅購入を考える消費者はジャカルタ中心部から多少遠くなるとしても、西ジャカルタではなくタンゲラン市での住宅購入を選択すると想定されています。

現在の住宅供給のトレンド:主要デベロッパーはジャカルタ郊外に注目

パンデミック状況の中でも、ジャカルタ首都圏の幾つかの地域では戸建住宅と集合住宅の双方のカテゴリーで供給数が増えています。

ブカシでは2020年第3四半期に、前期比13.3%の供給増加を記録し、南タンゲランでは11.9%増、タンゲラン県では10.7%増を記録しました。

Rumah.comのノヴィタ氏によりますと、首都圏の郊外地域における供給指数の増加は、多くのデベロッパーが中間層から富裕層にかけての消費者向けの住宅開発を、ジャカルタ中心部よりも安価な価格帯で提供することに注力していることを示している、と述べています。

タンゲラン県における平均の不動産価格は、平米単価600万ルピアで、ブカシは平米単価900万ルピアです。これらの価格は、ジャカルタ州内の平米単価、平均2,000万ルピアと比較すると相当に安いと消費者に判断されている、とノヴィタ氏は説明しています。

 

検索指数

西ジャワ州全体での検索指数は、2020年第3四半期に前期比88.8%上昇し、同州内で特に顕著な上昇を記録したのは、ブカシ市は115%、ボゴール94.3%となっています。

バンテン州全体としては、54.1%増で、同州内で最も大きな伸びを記録したのはタンゲラン市で64%増となっています。

同時期のジャカルタ州内も前期比59%増という大きな伸びを記録しています。最も検索されている地域である、ボゴール、ブカシ、タンゲラン市に共通する状況は、これらの地域では有名デベロッパーが上位中間層向けのお手頃価格の物件が豊富にある、という点です。

また、交通インフラの目に見える整備状況が、これらの地域のジャカルタとのアクセスが確実に良くなるという印象を多くの住民が持っていることも反映されていると考えられます。

 

現在のトレンド:まとめ

2020年第3四半期に価格指数や検索指数の上昇が見られることは、不動産市場の明らかな回復傾向を示しているとは言え、価格指数が対前年で依然としてマイナスとなっている現状に象徴されるように、不動産市場の完全な回復にはまだ時間がかかると見られています。

政府による種々の政策によって、特に「雇用創出法(オムニバス法)」によって消費者、特に投資家の関心が喚起されることが期待されています。とりわけ、不動産取引に関連する税金、つまり不動産取得税(BPHTB)、固定資産税、付加価値税等の免除、減免に関する追加政策が望まれています。

こうした状況の中で、購買者が高い関心を寄せているのは、価格指数のノビシロであり、タンゲランやブカシといったアクセスの良い、また今後アクセスがますます良くなると想定される地域では、現状の価格がそれほど高くないので、価格の更なる伸びが期待されるという意味で投資対象としての魅力が依然として高い状態にあります。

もちろん、タンゲランやブカシには有名デベロッパーが開発したショッピングモール等のファシリティーも充実しており、交通アクセスと価格がタンゲランやブカシといった自立都市の基本的な魅力となっていることは議論の余地のないところです。

 

注目の地域:ブカシ

大手不動産仲介サイトを運営するRumah.comは、2020年第3四半期のブカシにおける不動産価格指数は前期比19.6%上昇し、他方で同地域の不動産供給指数は前期比46.8%増という大幅な増加を記録した、と報告しています。

ブカシ地域では、集合住宅と戸建住宅の両方の供給が増加しています。

上述の通り、首都圏郊外の衛星都市における供給増加は、ジャカルタ中心部の代替となる住宅地を探している中間層または上位中間層向けの住宅供給に各デベロッパーが注力していることの表れであると想定され、ジャカルタ州内の住宅用不動産の平均価格が平米2,200万ルピアであるのに対して、ブカシ地域のそれは900万ルピアであり、現状でもブカシの価格上の優位性は非常に大きいと考えられます。

特に注目に値するのは、新型コロナウィルス感染症が依然として猛威を振るっている状況下において、ジャカルタ首都圏でRumah.comのプラットフォームを通しての不動産物件検索回数が相当に増えていることです。

ブカシを含む西ジャワ州という単位で考えると、2020年第3四半期における検索回数は前期比で88.8%も上昇していますが、最も上昇率が高いのがブカシ地域になります。

ブカシ地域の同期の検索回数は前期比115%も上昇しており、ボゴールなどの西ジャワ州内の地域にも大幅な上昇は見られますが、ブカシには及びません。

ブカシ、ボゴール、タンゲラン市といった郊外都市の不動産検索回数の上昇は、これらの地域でのインフラ開発が目に見える形で進んでいることの影響が大きいと捉えられています。

地域間の移動手段が整備され、アクセスが良くなれば良くなるほど、現時点での低価格地域が選好されることになると考えられます。

出典:  Rumah.com     Indonesia (2020)     Rumah.com  Indonesia Property Market Index Q4 2020 | Rumah.com
https://www.rumah.com/panduan-properti/rumahcom-indonesia-property-market-index-q4-2020-36607

 

いかがでしょうか。

コロナ・パンデミックの影響で大きな打撃を受けた不動産セクターですが、政府による同セクターへの支援策とホテルが実施してきたようなプロモーション戦略に牽引される形で、今後遠くない時期に商業不動産セクター全体が回復基調を示すことが期待されています。

 

参考WEBサイト:

Bank Indonesia. (2020). Perkembangan Properti Komersial (PPKOM).
Kementerian Pekerjaan Umum dan Perumahan Rakyat. (2020, November 3).
Tingkatkan Kepemilikan Hunian Layak, Realisasi Program Sejuta Rumah
Hingga Akhir Oktober 2020 Capai 601.637 Unit. Retrieved from https://www.pu.go.id/berita/view/18970/tingkatkan-kepemilikan-hunian-layak-realisasi-program-sejuta-rumah-hingga-akhir-oktober-2020-capai-601-637-unit

Kementerian Pekerjaan Umum dan Perumahan Rakyat . (2020, January 3).
Capaian Pembangunan Rumah Tembus 1,25 Juta Unit. Retrieved from https://perumahan.pu.go.id/berita/view/227/capaian-pembangunan-rumah-tembus-1-25-juta-unit

Kompas. (2020, July 29). Alokasi Tambahan Rp 1,5 Triliun untuk Perumahan Terkait 3
Program Artikel ini telah tayang di Kompas.com dengan judul "Alokasi Tambahan Rp 1,5 Triliun untuk Perumahan Terkait 3 Program", Klik untuk baca: https://properti.kompas.com/read/2020/07/29/191334. Retrieved from
https://properti.kompas.com/read/2020/07/29/191334021/alokasi-tambahan-rp-15-triliun-untuk-perumahan-terkait-3-program?page=all

BUMN inc. (2020). Target Penyaluran KPR Bank BTN Naik Menjadi 300.000 Unit Per Tahun. Retrieved from http://bumninc.com/target-penyaluran-kpr-bank-btn-naik-menjadi-300-000-unit-per-tahun/?more=2

 

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