【コラム】インドネシア人の予防目的での医療費の支出について

インドネシアでは、近年都市部の人や富裕層を中心に健康意識が高まってきていますが、2014年に導入された国民皆保険制度は導入以降赤字が続いており、肥満や生活習慣病の増加から健康問題は深刻な問題の一つとなっています。

健康的な生活には、治療、手術、リハビリなどへの多額の出費が必要ないため、医療費に関する出費が少なくて済みます。

反対に、病気にかかると医療費の負担が増えるだけでなく、仕事の生産性が低下し、通勤通学の機会も失われる可能性があるため、病気を予防し、ある一定の健康を達成し維持することは、肉体的、精神的、社会的にも重要です。

実は、「予防医療」という言葉はインドネシアでも特に真新しいものではなく、病院に関する2009年法律第44号、健康に関する2009年法律36号、国家社会保証制度2004年法律40号の文書にて、インドネシア国民の健康問題や病気を未然に防ぐため予防医療サービスは重要な活動として強調されています。

しかしながら、インドネシア政府の今までの取り組みはまだまだ十分とは言えず、治療から予防医療へ今後シフトしていく旨を示し、取り組みを始めたのは比較的最近のことです。

インドネシア政府は、人材の確保や、拡大が続く保健省の予算削減のためにも、今後予防医療に積極的に取り組んでいく意向で、インドネシア保健省は健康増進プログラムとして、公衆衛生改善のための情報提供、予防接種、地域の栄養改善活動、Posyandu(総合保健サービス)での定期健診の実施など、予防医療に関連する医療・保健サービスの取り組みを行っています。

先日のコラムでは、インドネシア人の治療目的での医療費の出費についてご紹介いたしましたが、インドネシア人の予防医療サービスへの支出は一体どのくらいなのでしょうか?

参考コラム:

 

以下は、インドネシア人一人当たりの、1か月あたりの予防医療費用です。

出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(閲覧日:2020年7月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html

2019年時点で、インドネシアにおける予防医療分野での一人当たりの支出の平均は7,711ルピア/月でした。これは1か月あたりの総支出の0.6%に当たります。

医療分野での出費でみると、予防コストのための一人当たりの毎月の出費は支出の約22%に当たります。

居住地域別でみると、インドネシアの都市部に住む人の予防医療の出費は平均9,491ルピア/月で、農村部の出費平均月5,454ルピアのほぼ2倍に当たります。

過去5年間で、インドネシアの人々の1か月あたりの予防医療コストは毎年増加傾向にあり、2015年から2019年にかけて、2,729ルピアから7,711ルピアに182%増加しました。

回答者の居住地域別でみると、過去5年でインドネシア都市部の人の1か月の予防医療費は159%増加しています。

一方、農村地区での出費はインドネシア都市部には満たないものの、過去5年で206%も増加しています。

出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(閲覧日:2020年7月16日)

https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html

 

2018年の予防医療出費に対する一人当たりの平均月額支出は予防接種が最も多く、1,247ルピアとなっていますが、2019年時点で最も出費が多かったのは健康診断で1,445ルピアでした。

予防サービスには、妊婦健診、予防接種、健康診断、家族計画の他、その他の医療費には、マッサージ、フィットネス、カッピング、デトックス、ヨガ、フットサル、フィットネスエクササイズ、サプリメントや漢方薬の購入などの健康維持費も含まれます。

インドネシアの居住地域別でみた月々の項目別予防医療費は以下の通りです。

出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(
閲覧日:2020年7月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html

 

2019年のインドネシアの都市部での予防サービスの最大の出費は健康診断の費用で1,951ルピア、農村部での最大の費用は予防接種費用で940ルピアでした。

いずれの地域も“その他の医療費”が2018年から2019年にかけて倍近く、もしくはそれ以上増加していることが分かります。

また、全体の傾向として、インドネシアの都市部の人の方が農村部の人よりも、予防医療サービスへの月々の出費が多い傾向にあるという結果となっています。

インドネシアの健康開発政策としては、今後健康の促進と予防の強化を通じて医療サービスへのアクセスと質を向上させる取り組みを積極的に行っていく意向です。

今年2月にはジャカルタにて「インドネシア国民健康ワークショップ」が開催され、インドネシア中央保健省、地方保健省の関係者ら2,000名以上が参加し、インドネシアの今後の人的資源の形成のための予防医療活動について議論が行われました。

取り扱われた健康問題は、母子健康の改善(妊産婦死亡率と乳児死亡率)、コミュニティの栄養改善の加速、健康な生活社会運動(Gerakan Masyarakat Hidup Sehat/GERMAS)、家族計画、疾病の予防と管理、医療システムとガバナンスなどが含まれ、促進的かつ予防的側面から議論がなされました。

弊社では、インドネシアの最新状況に関するセミナーの実施や、オンラインでの調査代行を承っております。

ご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

参考コラム:

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