【コラム】インドネシアにおける地域別の貧困状況

2015年の国連サミットにおいて、国際社会が2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための方針として持続可能な開発目標=SDGsが設定されました。

SDGsは17のゴール、169のターゲットから構成されていますが、17のゴールのうち目標1として掲げられているのが「貧困をなくそう」というゴール目標です。

インドネシアにおいて、SDGsを達成するために国家開発計画長(BAPPENAS)が中心となって、取り組みを行なっていますが、現在のインドネシアにおける貧困状況はどのようになっているのでしょうか。

今回のコラムでは、2020年の中央統制局(BPS、以下BPS)のデータを元に、インドネシアにおける貧困状況について地域別で比較しながらご紹介していきます。

参考サイトURL: https://www.jica.go.jp/oda/project/1700570/index.html
https://miraimedia.asahi.com/sdgs-description/

インドネシアにおける貧困ラインについて

今回紹介する貧困状況のデータにおけるインドネシアの貧困ラインは、インドネシアのBPSが社会経済調査(SUSENAS)のデータに基づき以下のように定めています。

貧困ラインとは

一人一日2,100キロカロリー相当の食糧と、それ以外の必需品(住居・衣服・教育・保健等の)を得るのに最低限必要な支出水準

インドネシアの貧困ラインは、SUSENASが実施される度に見直しが行われており、2021年9月のインドネシア全体における貧困ラインはRp 472,525(月/人)以下で、都市部でRp433,281(月/人)農村部でRp 475,477(月/人)以下、日本円に換算して約3,500円(月/人)となっています。

参考WEBサイト: https://sulut.bps.go.id/indicator/23/761/1/garis-kemiskinan-provinsi.html

 

インドネシアにおける地域別貧困率

下図は、インドネシアにおけるそれぞれの地域の貧困ラインに基づいて算出された、インドネシアにおいて貧困率が高い5地域を比較したグラフです。

 

出典:Data dan Informasi Kemiskinan Kabupaten/Kota Tahun 2020を基に弊社作成(閲覧日:2021年8月22日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/30/337a88d303fca9911cb7b0a8/data-dan-informasi-kemiskinan-kabupaten-kota-tahun-2020.html

 

インドネシアにおいて最も貧困率が高い地域はパプア州で、以下、東ヌサトゥンガラ州、マルク州、ゴロンタロ州、アチェ州と続きます。

下図は、インドネシアにおいて貧困率が低い5地域を比較したグラフです。

出典:Data dan Informasi Kemiskinan Kabupaten/Kota Tahun 2020を基に弊社作成(閲覧日:2021年8月22日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/30/337a88d303fca9911cb7b0a8/data-dan-informasi-kemiskinan-kabupaten-kota-tahun-2020.html

 

インドネシアにおいて最も貧困率が低い地域はバリで、2番目は南カリマンタン、3番目と4番目は同率でジャカルタ特別州とバンカ・ブリトゥン州(2000年に南スマトラから分離)となり、5番目に中カリマンタン州です。

2つのグラフにより、貧困率が高い地域は農村部に集中しており、貧困率が低い地域は都市部や観光地となっている事が窺えます。

 

インドネシアにおける貧困層の地域別識字率

前項までは、インドネシアの地域別貧困層の割合をご紹介しましたが、貧困によって生じる教育への影響について、識字率を通して見てみると以下の通りになります。

 

下図は、貧困率の高い上位5地域と貧困率の低い5地域の貧困層における識字率と就学率を比較した表です。

 

貧困率の高い5地域における貧困層の識字率と就学率(2020年)

地域/州 貧困率 貧困層の識字率(15才〜24才) 貧困層の就学率(13才〜15才)
パプア 26.6% 87.98% 71.82%
東ヌサトゥンガラ 20.9% 97.8% 92.94%
マルク 17.4% 99.86% 95.14%
ゴロンタロ 15.2% 99.86% 79.35%
アチェ 14.9% 99.98% 97.68%

 

貧困率の低い5地域における貧困層の識字率と就学率(2020年)

地域/州 貧困率 貧困層の識字率(15才〜24才) 貧困層の就学率(13才〜15才)
バリ 3.8% 100% 90.37%
東カリマンタン 4.4% 100% 99.01%
ジャカルタ 4.5% 100% 97.51%
バンカ・ブリトゥン 4.5% 99.25% 84.91%
中カリマンタン 4.8% 100% 91.19%

出典:Data dan Informasi Kemiskinan Kabupaten/Kota Tahun 2020を基に弊社作成(閲覧日:2021年8月22日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/30/337a88d303fca9911cb7b0a8/data-dan-informasi-kemiskinan-kabupaten-kota-tahun-2020.html

 

貧困層(15才〜24才)における識字率は、貧困率が低い地域は殆どが100%なのに比べ、貧困率の高い地域の識字率は僅かに低いことが分かります。

また、貧困層(13才〜15才)における就学率については貧困率が高い地域の中でも格差があり、貧困率が高い5地域のうち東ヌサトゥンガラ、マルク、アチェにおいては90%台であるのに対しパプアやゴロンタロにおいては70%代と低い水準にあります。

 

インドネシアにおける貧困層の地域別雇用状況

貧困によって生じるインドネシアの雇用への影響について無職者の割合を通して見ていきます。

 

下図は、貧困率の高い上位5地域と貧困率の低い上位5地域における貧困層の無職者の割合を示した表です。

 

貧困率の高い5地域における無職者の割合(2020年)

地域/州 貧困率 貧困層における
無職者の割合
パプア 26.6% 24.68%
東ヌサトゥンガラ 20.9% 32.16%
マルク 17.4% 48.91%
ゴロンタロ 15.2% 42.75%
アチェ 14.9% 47.11%

貧困率の低い5地域における無職者の割合(2020年)

地域/州 貧困率 貧困層における
無職者の割合
バリ 3.8% 33.17%
東カリマンタン 4.4% 49.63%
ジャカルタ 4.5% 49.82%
バンカ・ブリトゥン 4.5% 38.43%
中カリマンタン 4.8% 44.74%

出典:Data dan Informasi Kemiskinan Kabupaten/Kota Tahun 2020を基に弊社作成(閲覧日:2021年8月22日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/30/337a88d303fca9911cb7b0a8/data-dan-informasi-kemiskinan-kabupaten-kota-tahun-2020.html

 

上図より、貧困層における無職者の割合は貧困率と比例していないことが分かります。

パプアは貧困率が一番高い地域ですが、貧困層における無職者の割合は低く、東カリマンタンやジャカルタは貧困率が低い地域ですが、貧困層の中での無職者の割合は高いことが分かります。

ここまでインドネシアにおける地域別の貧困状況について見てきましたが、インドネシアで貧困率が一番高い地域(パプア:26.6%)と貧困率が一番低い地域(バリ:3.8%)の割合の差を見ても、約23%の大きな格差があることが分かります。

政府はこのような貧困格差を解消するために、貧困層に対して、キャッシュレス食糧手当(BPNT)や教育のための現金直接給付(BLT)などの政策を行なっていますが、昨今では特に新型コロナウイルスの感染拡大への対策優先度が高くなっている事を要因に、貧困格差解消にはまだ時間が掛かりそうです。

弊社では様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。

セミナーの開催や講師派遣なども行っておりますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

 

 

株式会社インドネシア総合研究所
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