【コラム】インドネシアの人々の体調不良時の対応方法とは?
インドネシアのジョコウィ大統領は、独立100周年となる2045年までに、インドネシアが世界の先進国上位5か国以内になることを目標とする「Indonesia Vision 2045」を掲げており、達成するための一つの重要な軸として、人材の育成を掲げています。
インドネシア国民の健康、優れた人材育成・確保のためにも重要な側面として捉えられており、インドネシア政府は、今後インドネシアが国家として発展していくためにはインドネシア国民の健康は非常に重要な役割を果たすと考えています。
インドネシアの人々の健康問題を引き起こすものは全て国にとって莫大な経済損失をもたらすという考えが根底にあり、インドネシア国民の健康の推進は、国の発展のための投資と捉えられているのです。
近年の急速な経済成長に伴う所得水準の向上から、ここ数年でインドネシアの人々の間ではより健康意識が高まりつつありますが、今日のインドネシアの人々の健康状態は一体どのような状況なのでしょうか?また、インドネシアの人々は体調不良になった際、どのような対応をしているのでしょうか?
出典は全て以下のインドネシア中央統計局(BPS)の報告書からとなります。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Profile Kesehatan Ibu dan Anak 2020(母と子の健康プロフィール2020)より弊社作成(閲覧日:2021年2月1日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/12/31/b9a9aa33ab5a3cc23311d0a1/profil-kesehatan-ibu-dan-anak-2020.html
※ 以下の数値は、実際に医療機関を訪れた人や医師に相談した人など医療機関のデータに基づくものではなく、インドネシア中央統計庁(BPS)が行った調査結果となります。
インドネシアで、過去1か月以内に体調不良があった人、また体調不良があり、日々の活動に支障をきたしたと回答した人は以下の通りです。
インドネシアでは、過去1か月以内に何らかの体調不良があった人が約3割程度いることが上記のグラフからわかります。また、そのうち半数程度が、体調不良により日々の活動に支障をきたしたと回答しています。
ここで挙げられた体調不良には、発熱や咳、風邪、下痢、頭痛などの日常的に発生しやすい症状や、慢性的/急性疾患、事故、犯罪、その他健康上の問題が含まれます。
また、地域別、性別でみると以下の通りとなります。
地域別でみると、体調不良があった人は、都市部の方が若干割合が高いですが、実際に生活に支障をきたしたと回答した人の割合は、農村部の方が多くなっています。
また、性別でみた場合、体調不良があったと回答した人も、日々の活動に支障をきたしたと回答した人も、男性よりも女性の方が割合が高くなっています。
また、年齢別でみると以下のグラフとなります。
特に幼児や高齢者は、過去1か月以内に体調不良があったと回答した人の割合が高くなる傾向にあり、一方10代~20代の若年層は体調不良や、体調不良によって日々の活動に支障をきたしたと回答した人の割合が最も少なくなっています。
また、州別でみると、体調不良があったと回答した人、並びに体調不良があり日々の活動に支障をきたしたと回答した人が最も多かった州は西ヌサトゥンガラ州、最も少なかったのはパプア州となりました。
体調不良が あった |
体調不良があり、 日々の活動に 支障をきたした |
|
西ヌサトゥンガラ州 | 44.0% | 16.86% |
パプア州 | 16.27% | 8.57% |
では、過去1か月以内に体調不良があったと回答した人のうち、医療機関や専門家にて受診した人はどのくらいいるのでしょうか?
インドネシアでは、過去1か月のうちに体調不良があったと回答した人のうち、更にその約半分の人が、医療機関や専門家を受診したと回答しました。
地域と性別でそれぞれ比較したグラフは以下の通りとなります。
地域別でみると、農村部よりも都市部の方が、性別でみると男性よりも女性の方が、医療機関などで受診した人の割合が若干高くなっています。
体調不良の際に医療機関を受診したと回答した人が利用した医療機関や専門家は以下の通りです。
グラフの通り、多くの人が個人の診療所やプスケスマスなど、比較的規模の小さい医療機関を訪れて受診しています。
プスケスマスと呼ばれるインドネシアの保健所については、以下のコラムもご参照ください。
体調不良の際、医療機関に行かなかったと回答した人は、どのような理由を挙げているのでしょうか。
大多数の人が自分で治したため、もしくは必要ないと思ったため体調不良の時でも医療機関に行かなかったと回答しています。ここでの「自分で治した」とは、体調不良に陥った人が、医療従事者からのアドバイスや処方箋無しに、自分で薬の種類を判断して服用した人のことを指します。
インドネシアでは、ジャムゥなどの伝統薬や香油などを最初に試してみる人も多くいるようです。
また、かなり少数ではありますが、経済的な理由や地理的な理由で医療機関に行きたくても行くことができない人も一定数存在していることが分かります。
以下のグラフの通り、過去3年で、体調不良になった際に自分で治したと回答した人の割合が徐々に増加していることが分かります。
この背景としては、インドネシア保健省は2つの側面が考えられると指摘しています。
まず一つ目は、インドネシアの人々が経験する体調不良がそこまで深刻なものではないケースが多く、身近な薬品などで対応ができること、また経済発展に伴う購買力の増加などにより、購入できる薬の選択肢が増えている可能性です。
二つ目は、処方箋代・診察代を捻出できないなどといった経済的理由、近くに診療してもらえる医療機関がないなどの地理的な理由から、医療機関で受診したくてもできない人が増加している可能性です。
正確な背景については引き続き調査が必要としています。
インドネシアにおいては、健康・医療分野は非常に重要な課題の一つとされているため、今後も弊社コラムにて、インドネシアの健康事情や医療事情については様々なトピックをご紹介してまいります。
インドネシアにおける消費者調査や保健省、医療機関など専門家へのヒアリング代行も承っておりますので、ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
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