【コラム】インドネシアにおけるイスラム教徒のメッカ巡礼と2021年の対応
インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を抱える国であり、人口の約9割がイスラム教を信仰しています。
イスラム教には「信仰の告白(シャハーダ)」「礼拝(サラー)」「喜捨(ザカート)」「断食(サウム)」「巡礼(ハッジ)」という信仰の5つの柱があり、その中でも巡礼はムスリムにとって一生に一度の重要な義務です。
今回のコラムではインドネシアにおけるメッカ巡礼についてご紹介していきます。
ハッジ(大巡礼)とは
ハッジ(大巡礼)とは、イスラム教の宗教義務の一つで、サウジアラビアにあるイスラム教の聖地”メッカ”への巡礼のことを指します。
ハッジはイスラム歴の巡礼月8日から12日にかけて行われ、毎年行われる時期が異なります。
ハッジを終えたイスラム教徒は「ハージ」又は「ハッジャー」として別名が与えられます。
ハッジはイスラム教徒が行う5大義務の一つとされていますが、“財力や体力を有する者が一生に一度行うべきもの”とされており、絶対的な義務ではありません。
しかし、イスラム教徒にとってハッジを行うことは大変名誉ある行為とされており、イスラム教徒の人々は死ぬまでに1回ハッジを行いたいと考えています。
ウムラ(小巡礼)とは
ハッジの時期以外に行われるメッカ巡礼はウムラ(小巡礼)と言われています。
ハッジのように巡礼後名前が与えられることはなく義務を達成したとみなされるものではありませんが、ハッジより比較的費用面も安く抑えることができ、ウムラを行うムスリムも多くいます。
参考:https://www.islamcenter.or.jp/about-islam/hajj/
https://www2.jiia.or.jp/report/keyword/key_0302_matsumoto.html
https://www.digima-japan.com/column/life/2876.html
インドネシアのムスリムにおけるハッジ(大巡礼)とウムラ(小巡礼)について
ハッジは、年に1度世界中のムスリムがメッカに集まる多くの人が集中する時期のため、サウジアラビア政府によって国別に受け入れ枠が決められています。
世界最大のイスラム教徒人口を誇るインドネシアですが、2017年時点でサウジアラビア政府が定めたインドネシアからの受け入れ枠は年間に23万1000人と非常に少ないため、インドネシア国内のムスリムのハッジの順番待ちが10年にも及ぶと言われています。
また、ハッジを行うための費用は非常に高く中間層が増えているインドネシアの人々にとっても簡単に手に届く金額ではありません。
このような事情により、ハッジを行うことが難しいインドネシアのムスリムの人たちの間でウムラの人気が高まっています。
2019年の8月31日〜12月26日の間でウムラを行なった国別の人数はインドネシアが世界2位となりました。
2019年以降、インドネシアのムスリムによるハッジ(大巡礼)とウムラ(小巡礼)は増加していくと予想されていましたが、新型コロナウイルスの影響により巡礼に変化が起こっています。
参考:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/170201/mcb1702010500005-n1.htm
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2017/03/03/berapa-jamaah-umrah-indonesia
https://www.bareksa.com/berita/umroh/2019-12-30/periode-4-bulan-hingga-desember-2019-jemaah-umroh-asal-indonesia-capai-443-ribu
新型コロナウイルスの影響による巡礼
世界的に新型コロナウイルスが蔓延した2020年以降のハッジについて、新型コロナウイルスの感染が避けられず例年より規模が縮小して行われました。
2020年のハッジについて
2020年のハッジは、7月29日からの5日間でした。
この時期は世界的も新型コロナウイルス の禍中であり、ハッジそのものは中止になりませんでしたが、参加者はサウジアラビア国内に居住するイスラム教徒の一部1000人のみに限定されました。
また、ハッジが認められた人々には、検温や移動制限が課されました。
インドネシアにおいて、2020年は22万1000人がハッジを行う予定でしたが、サウジアラビアのハッジの取り決めを受け、インドネシア政府はインドネシアから出発するハッジ巡礼を取りやめました。
2021年のハッジについて
今年(2021年)のハッジは、7月17日からの5日間の予定です。
今年も去年に引き続き国外からの受け入れは行われず、サウジアラビア国内の人に限り6万人まで受け入れが可能となり、去年に比べ参加人数の制限は緩和されました。
しかし、メッカ巡礼を認める対象として新型コロナウイルスのワクチンを接種した人又は、抗体保有者で基礎疾患がない人、対象年齢は、18歳〜65歳と制限が加えられました。
インドネシア政府は、今年も新型コロナウイルスの影響を受けインドネシアから出発するハッジ巡礼を取りやめました。
また、ハッジ巡礼取りやめに関して宗教大臣令(第660号)が発行されました。
参考:https://www.sankei.com/article/20210406-JXI5BQS2BZITPNXWTDHTPSWVME/
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/post-96501.php
https://www.cnbcindonesia.com/news/20210612185042-4-252653/terbatas-60000-jemaah-kuota-haji-2021-cuma-buat-warga-saudi
新型コロナウイルスの影響で2年連続インドネシア国内からの出発が取り止められたため、来年以降のハッジに向けてインドネシアの宗教大臣はサウジアラビア政府とハッジについてのコミュニケーションを強化すると述べています。
世界一のイスラム教徒の人口を抱えるインドネシアからのハッジ巡礼は、サウジアラビア政府にとっても経済活性のための大きな存在となるため、2022年のハッジはどのようになるのか注目です。
現時点では、2021年にハッジが予定されていた人々は2023年に、2022年にハッジが予定されていた人は2024年に延期されることが発表されています。
参考:https://www.tribunnews.com/nasional/2021/06/14/indonesia-akan-intensifkan-komunikasi-dengan-arab-saudi-untuk-haji-2022
インドネシアにおいてイスラム教の宗教行事や宗教義務は国を挙げての大きな決定がなされるため、インドネシアでビジネスをするうえで宗教行事や宗教義務についてアンテナを張ることは大変重要だと言えます。
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