【コラム】インドネシアにおける高齢者向け施設の現状

近年、日本において高齢者の単独世帯が増加傾向にあり、高齢者向け施設の需要が高まっています。

一方、インドネシアでは二世帯又は三世帯で子供や孫と同居している高齢者の割合が全体の約67%を占めており、家族と家で生活する高齢者が多くいます。

しかし、インドネシアは徐々に高齢者の割合も増え、人々の生活スタイルも徐々に変化していることから、今後高齢者施設の需要は徐々に高まってくると見られています。

では、現在インドネシアにおける高齢者向けの施設にはどのような種類があり、インドネシア国内ではどのような動きがあるのでしょうか。

今回のコラムでは、インドネシアにおける高齢者向け施設ついてご紹介していきます。

参考:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd141110.html
参考:https://www.j-longlife.co.jp/column/article/lack_of_a_nursing_home/

 

日本における高齢者向け施設

インドネシアの高齢者向け施設について紹介する前に、まずは日本の高齢者向け施設について、紹介します。

 

日本の高齢者向けの施設は、大まかに「要介護の方を対象とした施設」と「自立の方を対象とした施設」に分類されます。

また、運営主体として、社会福祉法人や医療法人によって運営されている公的施設と民間企業によって運営されている民間施設があり、その中で役割に応じて下記のように様々な種類に分類されています。

参考:https://www.minnanokaigo.com/guide/type/care-insurance-facility/

<要介護の方を対象とした施設>

【公的施設】

■特別養護老人ホーム(特養):中重度の要介護社が生活する施設
■介護老人保健施設(老健):リハビリを通して在宅復帰を目指す施設
■介護医療院(介護療養型医療施設):医療行為などが必要で長期療養を目的とした施設

【民間施設】

■介護付き有料老人ホーム:介護度に応じて一定の費用で介護サービスを受けることができる施設
■住宅型有料老人ホーム:入居者に合ったサービスを受けることができ、比較的自立した方が対象となる施設
■グループホーム:認知症の方専門の施設

<自立の方を対象とした施設>

【公的施設】

■ケアハウス:低所得で独居生活の高齢者を対象とした施設

【民間施設】

■サービス付き高齢者向け住宅:高齢者向けの賃貸住宅

参考:https://www.careritz.co.jp/magazine/13493/
参考:https://www.minnanokaigo.com/guide/type/

 

上記から分かるように、日本の高齢者向け施設は様々な種類があり、施設ごとに特徴が異なるため高齢者の希望や特徴に合わせて入居する施設を選ぶ必要があります。

 

インドネシアにおける高齢者向け施設

インドネシアでは、単独世帯で暮らしている高齢者の割合は高齢者全体のうち約30%です。約70%の高齢者は、子供や孫と一緒に暮らしています。

そのため、現状では日本ほど高齢者向け施設は整ってはいませんが、高齢者向けの施設としては下記の2つがあります。

■老人ホーム ( Panti werdha)

政府機関や民間企業が運営する高齢者向けの住宅施設で、インドネシアにおける高齢者向け施設として一般的です。

有料老人ホームが殆どで、生活に困窮している人に対して無料の施設もごく僅か存在します。

料金には部屋の掃除・洗濯・食事の提供・介護サービス等が含まれ、日本の老人ホームと同じような機能を有しています。

参考:https://www.liputan6.com/lifestyle/read/3122332/dilema-menitipkan-orangtua-di-panti-jompo#:~:text=Panti%20wreda%20ini%20adalah%20peninggalan,Rp%203%20juta%20per%20bulan.

■高齢者向け住宅

高齢者向け住宅は、自立している高齢者向けに、高齢者が安心して暮らせための設備や他の高齢者と交流できる施設を提供することを目的として作られています。

バリアフリーな設計に加え、各フロアのロビーに椅子を置くなど高齢者が交流しやすい作りになっています。

また、ジョコウィ大統領によって導入された政府の住宅百万戸プログラム(OMH)において政府も高齢者向けの低価格賃貸アパートを建設しています。

2018年には公共事業・国民住宅省(PUPR)により、インドネシアの東ジャカルタにあるチブブール(Cibubur)に初めての高齢者向け低価格賃貸アパートが建設されました。

参考:https://pu.go.id/berita/kementerian-pupr-bangun-rusun-khusus-lansia-di-cibubur
参考:https://www.liputan6.com/news/read/3485159/beginilah-fasilitas-rusunawa-khusus-lansia-pertama-yang-dibangun-kementerian-pupr

 

その他、日本企業がインドネシアの高齢者向け住宅事業に参入している例もあります。

ロングライフホールディング社は、2014年に西ジャワ州にあるチカランにある医療都市「メディカル・シティ」内に高齢者向け住宅を開業しました。

開業された施設には中庭やヴィラタイプの部屋があるなど、どちらかと言うと高所得者向けの高齢者住宅となっています。

また、ここで働くスタッフはEPAの枠組みで、日本での実務経験のある元看護師と介護福祉士が採用されています。日本で実務経験を積みインドネシアへ帰国しても、日本での経験を活かせていない元看護師や介護福祉士が多くおり問題になっています。

このロングライフホールディング社の取り組みは、そういった問題に対してもアプローチすることができます。日本でのケアサービスでの経験の実績を活かし、インドネシアの高齢者向け住宅事業をはじめとする、シニアサービス事業に貢献する日本企業の取り組みは今後も注目です。

参考:https://www.longlife-holding.co.jp/longlife-IBI/facility/india.html

 

日本では高齢者向け施設に入ることは今では一般的ですが、インドネシアの人にとっては、高齢者向け施設に入ることは「子供に捨てられる」と、ネガティブに捉える人も多くいるため、まだまだ日本ほど普及していません。

今後、ますます高齢者の割合が増加し、更に女性の社会進出が増え共働き夫婦が増えていくインドネシアにおいて高齢者向け施設は需要が高まっていくと考えられ、インドネシアにおける高齢者施設に対するイメージや考え方から変えていく必要がありそうです。

日本企業がインドネシアの高齢者向け施設の事業に参入し、これまでのイメージを払拭することができれば、更なるビジネスチャンスが生まれるのではないでしょうか。

弊社はインドネシアの視察、調査、専門家インタビューなど実績が多数ございます。

ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

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株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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