【コラム】インドネシアでコロナ対策をしない人々とその理由

インドネシアでは新型コロナウイルス感染拡大を受け、首都ジャカルタ州や近隣の西ジャワ州など、各自治体は企業や個人の活動や移動を制限する「大規模な社会的規制(PSBB)」を導入し、違反者には罰則を適用しています。

「大規模な社会的規制(PSBB)」内では、企業の出社人数制限や、屋外の集団活動の人数制限、公共の場でのマスクの着用義務などが定められており、違反回数に応じて罰則や罰金額が引き上げられます。

その他、インドネシアでは公共の場でのマスク非着用者に対して、国歌斉唱や腕立て伏せ、コロナで亡くなった方の墓穴堀りを命じたり、罰則として棺桶に入らせたりするなど、一風変わった罰則がインドネシア国外のメディアでも報じられたため、ご存知の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

以前弊社のコラムでもご紹介しましたが、インドネシア国内で新型コロナウイルス感染者が確認されて以降、インドネシア政府は国民に対して手洗いやマスク着用、ソーシャルディスタンスの実施などを強く呼びかけており、基本的には多くのインドネシア国民が日々コロナ感染対策を行っています。

しかし、一度緩和されていたジャカルタでのPSBBが9月に再強化された原因の一つとして、PSBBが緩和された時期の「緩み」があります。

その時期、公共の場でのマスク非着用者も増え、飲食店などでもソーシャルディスタンスなどは適用されず、コロナ感染拡大前の元通りの風景が見られる場所も多くありました。

インドネシアではPSBBや移動規制にも関わらず、3月以降国内での感染者数が増加の一途をたどっており、現在は累計感染者数が30万人を超えています。

3月には1日当たりの新規感染者数が数十~100人程度だったのに比較して、10月現在は1日当たり3,000~4,000人台となっており、4,000人台後半となる日も少なくありません。

インドネシア統計局(BPS)の調査結果や、実際の現地の様子をみると、まだまだインドネシアの人々のコロナ対策には改善の余地があると言えそうです。

現在のインドネシア人のコロナ対策実施状況は以下の通りです。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perilaku Masyarakat Di Masa Pandemi Covid-19「Covid-19感染拡大の中でのインドネシア国民の行動」より
弊社作成(閲覧日:2020年
10月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/28/f376dc33cfcdeec4a514f09c/perilaku-masyarakat-di-masa-pandemi-covid-19.html

 

インドネシアの人々の公共の場でのマスク着用率は90%を超えますが、それ以外の対策方法は80%前後、ほとんどが80%未満となっていることが分かります。

割合でみるとインドネシア多数の人が対策を実施しているような印象ですが、冒頭部分でもご紹介した通り、インドネシアではマスク非着用や飲食店や公共の場でソーシャルディスタンスを実施しないなど、コロナ前の日常に戻りつつある場所も多くあり、コロナ対策がインドネシア全体で徹底されているとは言えない状態です。

↑「大規模な社会的規制(PSBB)」期間中にも関わらず道路が混みあっている様子(ジャカルタ市内)

 

年齢別でみたインドネシアの人々のコロナ対策の実施状況は以下の通りです。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perilaku Masyarakat Di Masa Pandemi Covid-19「Covid-19感染拡大の中でのインドネシア国民の行動」
より弊社作成(閲覧日:2020年
10月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/28/f376dc33cfcdeec4a514f09c/perilaku-masyarakat-di-masa-pandemi-covid-19.html

 

インドネシアでは、年齢層が高くなるほど、コロナ対策を日々実施している人の割合が増加しています。

新型コロナウイルスは、一般的に高齢者や基礎疾患がある人が重症化しやすい傾向があるということが報じられていることも、その理由の一つとして関係していると言えるでしょう。

一方、インドネシアの若年層でコロナ対策を日々実施していると回答した人は7割にも満たず、まだまだ改善の余地があると考えられます。

では、感染者がこれだけ増加しているなかで、コロナ対策を行っていないと回答した人はどのような理由で感染対策をしていないのでしょうか?

インドネシアでコロナ対策を実施していないと回答した人は、以下のような理由を挙げています。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perilaku Masyarakat Di Masa Pandemi Covid-19「Covid-19感染拡大の中でのインドネシア国民の行動」より
弊社作成(閲覧日:2020年
10月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/28/f376dc33cfcdeec4a514f09c/perilaku-masyarakat-di-masa-pandemi-covid-19.html

 

最も多かったのは“違反をしても罰則がない”という理由でした。インドネシア政府は、インドネシアの個人並びに企業の両方を対象に罰則を強化していく旨を発表していますが、人口が多いジャカルタなどでは違反者を全員取り締まるのはハードルが高く困難を伴うと考えられます。

更に、インドネシアにはコロナに対して楽観的な人も多く、BPSの調査によって回答者の約17%が「自分はかからない」と楽観的な回答していることが分かりました。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perilaku Masyarakat Di Masa Pandemi Covid-19「Covid-19感染拡大の中でのインドネシア国民の行動」より
弊社作成(閲覧日:2020年
10月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/28/f376dc33cfcdeec4a514f09c/perilaku-masyarakat-di-masa-pandemi-covid-19.html

 

また、年齢別でみると、「自分はコロナに感染しない」と回答した割合は20代の若年層が最も高く20%でした。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perilaku Masyarakat Di Masa Pandemi Covid-19「Covid-19感染拡大の中でのインドネシア国民の行動」より
弊社作成(閲覧日:2020年
10月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/28/f376dc33cfcdeec4a514f09c/perilaku-masyarakat-di-masa-pandemi-covid-19.html

 

一方、学歴別でみると、インドネシアでは最終学歴が低くなるほど「自分はコロナにかからない」と回答した人の割合が多くなり、特に最終学歴が小学校の人は30%以上にも上りました。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perilaku Masyarakat Di Masa Pandemi Covid-19「Covid-19感染拡大の中でのインドネシア国民の行動」より
弊社作成(閲覧日:2020年10月8日)

https://www.bps.go.id/publication/2020/09/28/f376dc33cfcdeec4a514f09c/perilaku-masyarakat-di-masa-pandemi-covid-19.html

「身近にコロナ感染者が出たらどうするか」という質問に対しては、半数近くが「自身の感染対策を厳しくする」と回答しました。

出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Perilaku Masyarakat Di Masa Pandemi Covid-19「Covid-19感染拡大の中でのインドネシア国民の行動」より
弊社作成(閲覧日:2020年
10月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/28/f376dc33cfcdeec4a514f09c/perilaku-masyarakat-di-masa-pandemi-covid-19.html

 

インドネシアの人々の新型コロナウイルスに対する意識や感染対策の実施状況は、年代や経済層(最終学歴)によって大きく異なっているため、学校や企業単位、コミュニティ、地域別でそれぞれに適した指導が必要と言えるでしょう。

弊社は、インドネシアでの市場調査は実績が多数ございます。また、コロナ禍でのオンラインヒアリング代行や調査も承っておりますので、ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

参考コラム:

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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