【コラム】インドネシア人の治療目的での医療費の支出について
インドネシアでは、中間層の拡大に伴い、都市部を中心に徐々に健康意識が高まる傾向にありますが、ここ数年で購買力が増し、生活が大きく変化したことにより、インドネシアでは「生活習慣病の増加」が問題となっています。
また、昨今全世界で感染者拡大が続く新型コロナウイルスについて、すでに心疾患や呼吸器疾患、糖尿病を患っている場合、感染した場合重症化しやすい傾向にあると言われていますが、インドネシアでは30代など若い世代の糖尿病患者も多くいます。
このような事情から、健康や病気の予防への関心が以前よりも高まってきていると言われています。
参考コラム:
では、実際にはインドネシアの人々の医療費の支出は一体どのくらいなのでしょうか?
インドネシアの人々の1か月あたりの医療費を、居住地域(都市部と農村部)別で見た場合のグラフは以下の通りです。
※以下は全て、予防目的ではなく治療目的での医療費のデータとなります。
出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(閲覧日:2020年7月13日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html
2019年のインドネシア人1人当たりの平均的な治療目的の医療費の支出は1か月あたり22,068ルピアで、これは一人当たりの総支出平均の1.8%に当たります。
居住地域別でみると、インドネシアの都市部にすむ人々の医療費は平均27,458ルピアであり、農村部の人々の月々の医療費の平均の約2倍となることが分かります。
インドネシア全体の医療費は過去5年で60%ほど増加しており、地域別でみると都市部では59%増加、農村地域では48%増加しました。医療施設別で見た治療目的の医療費の平均は以下の通りです。
出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(閲覧日:2020年7月13日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html
出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(閲覧日:2020年7月13日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html
インドネシアにおける医療費の支出の内訳で最も多いのは私立病院での治療費でした。
インドネシア全体で見ると、私立病院、公立病院、クリニックへの支出が2019年時点で前年よりも増加しています。
インドネシアの農村部と比較すると都市部の方が全体的な医療費への支出が多く、また、2018年と比較すると、2019年の伝統医薬への支出はインドネシアの都市部でも農村部でも減少しています。
では、インドネシアの人は治療用医薬品にどのくらい払っているのでしょうか?
出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(閲覧日:2020年7月13日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html
インドネシア人一人当たりの治療用医薬品代の平均は1か月あたり4,952ルピアですが、これは一人当たりの1か月の総支出の0.4%に当たります。
インドネシアの地域別で1か月あたりの薬代を見ると、都市部での医薬品代は農村部の倍近く、もしくは倍以上となっています。
また、インドネシア全体で見ると年々増加傾向にあり、2015年から2019年の間に月々の医薬品代の出費は58%増加しました。
以下は、治療用医薬品を更に細かく分類したグラフです。
出典:インドネシア中央統計庁(BPS)、Penguaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2019
(インドネシア国民の州別消費支出2019年9月)より弊社作成(閲覧日:2020年7月13日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi–september-2019.html
1か月の医薬品代で見ると、医療機関や医療専門家より処方された薬代への出費が最も多い結果となりました。
また、2018年と比較して、2019年の眼鏡、義肢、車いすの費用は大幅に増加している一方、伝統医薬や漢方薬の出費は減少していることが分かります。
インドネシアでは2014年に国民皆保険制度が導入されましたが、導入以降赤字が続いています。
病気に罹患してからの治療費は金額が大きくなるため、インドネシア政府としては今後予防医療にも力を入れ、そもそも病気にかからないような教育や予防接種プログラム、地域の栄養改善プログラム、定期的な健康診断などを行う方針を示しています。
インドネシアの人々の予防医療の支出状況についても今後コラムでご紹介予定です。
弊社では、インドネシアの最新状況に関するセミナーの実施や、オンラインでの調査代行を承っております。ご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
参考コラム:
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