【コラム】インドネシアの医療機関〜その種類と数
弊社Webサイトで、2019年にインドネシアの医療機関数とその分類についてご紹介しました。
しかし、2016年から2020年にかけてインドネシア国内の病院数が約14.8%増加するなど、ここ数年での変化が大きいトピックです。
そこで今回のコラムでは、最新のデータを交えて、インドネシアの医療機関にはどのような種類があるのか、またその数はどうなっているのか、改めてご紹介したいと思います。
過去コラム:
医療機関の種類とその数
まずは比較のために、日本の医療機関について簡単にご紹介します。
日本では、医療機関は大きく「病院」と「一般診療所」とに分類されています。
分類の基準は病床数で、20床以上あるものは病院、19床以下の施設は一般診療所とされます。
令和元年の厚生労働省の調査によると、歯科を除いた医療機関数は110,916で、そのうち、病院が 8,300(約7.5%)、一般診療所が102,616(約92.5%)でした。
開設者別にみると、国公立・社会保険団体の病院数は1,575(約19%)、一般診療所は4,509(約4%)であるのに対し、私立(医療法人・個人)の病院は5,894(約71%)、一般診療所は84,666(約83%)となっています。
日本の医療機関においては、全体的に見ても私立が多いですが、特に小規模の一般診療所となるとその差は歴然であると言えます。
では、インドネシアではどうでしょうか。
インドネシアの医療機関は、大きく分けて以下の3つに分類できます。
2.保健センター(puskesmas)
3.クリニック(klinik)
それぞれの特徴は以下の通りです。
1.病院
保健大臣規則2010年第340号により、総合医療サービスを提供できること、救急対応ができること、治療、外来、入院、手術等に対応していることなどの条件が規定されています。
2020年現在のインドネシアの病院数は2,985で、公立病院が1,058、私立病院が1,927となっています。
2.保健センター
県や市などが運営する公立の医療機関で、初期医療・予防医療や地域住民への健康啓発活動などを行っています。
その数は全国で10,205です。Puskesmasは医師の常駐が基本ですが、ジャカルタやバリなどの大都市ではすべての施設で医師が常駐しているものの、パプア州では約48.2%のpuskesmasに医師が常駐していないなど、地域格差が大きいことが明らかに
なっています。
3.クリニック
保健大臣規則2014年第9号によると、初期医療及び/または専門医療サービスを提供する医療サービス施設を指し、少なくとも一人以上の医師と看護師(または助産師)がいることが条件となります。
2020年時点で、インドネシアには公立・私立合わせて11,347の診療所があり、10,238の初期医療を行うクリニック(klinik pratama)と1,109の専門医療・リハビリ等を行うクリニック(klinik utama)で構成されています。
出典:インドネシア保健省「インドネシア健康プロフィールデータ2021」より弊社作成
https://pusdatin.kemkes.go.id/folder/view/01/structure-publikasi-pusdatin-profil-kesehatan.html
数で見ると、病院に比べてより小規模な保健センターやクリニックが多いという点は日本と共通しています。
しかし、保健センターが各地に存在していること、また公立病院が病院数全体の約3分の1となっていることなど、公立の医療機関が比較的多いという点がインドネシアの特徴と言えるでしょう。
現時点で、インドネシアの公的医療保険制度は、公的医療機関と一部の私立病院でしか適用されません。
また、民間の私立病院は高額な医療費がかかるため、インドネシアの貧困層〜中間層は、安く利用できる公立の医療機関を利用するのが一般的です。
また、病床数を見ると、インドネシアの全国平均値は約1.4となっています。WHOでは人口1000人あたりに1病床を確保することを最低ラインとしていますが、全国的に見ればその基準は満たしていると言えます。
しかし、地域別に見てみると、ジャカルタが最も多く3.1、ついで北スラウェシが2.7、西パプアが2.3と続くのに対し、東西ヌサトゥンガラ地方はどちらも0.9となっており、ここでも地域差が大きいことが課題だと言えます。
参考:インドネシア保健省「インドネシア健康プロフィールデータ2021」
https://pusdatin.kemkes.go.id/folder/view/01/structure-publikasi-pusdatin-profil-kesehatan.html
厚生労働省「令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況:医療施設調査 結果の概要」(2021年10月2日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/19/dl/02sisetu01.pdf
経済産業省「医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 インドネシア編」(2021年3月)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_Indonesia.pdf (2021年10月8日閲覧)
参考WEBサイト:https://blog.assist.id/apa-perbedaan-klinik-pratama-dan-klinik-utama/
インドネシアの病院|分類とその数
では、インドネシアの病院について、もう少し詳しく見てみましょう。
病院の分類は、保健大臣規則2020年第3号で定められています。
まず、提供する医療サービスから、総合病院(RSU)と専門病院(RSK)に区分されます。
2020年のデータでは、RSUの数は2,449、RSKは536となっています。
また、開設者別に見ると、下記のように分類されます。
①中央政府(国・軍・警察・国営企業)
②地方自治体(州・県・市)
③私立
2016年から2020年までのRSUの数の推移を見ると、中央政府管轄の病院はわずかに減少していますが、地方自治体管轄と私立の病院は増加しています。
2016年から2020年までの増加率は、州・県・市立病院が約21%、私立病院が約24%となっています。
出典:インドネシア保健省「インドネシア健康プロフィールデータ2021」より弊社作成
https://pusdatin.kemkes.go.id/folder/view/01/structure-publikasi-pusdatin-profil-kesehatan.html
インドネシアの病院|格付け
インドネシアの病院はA〜Dの4クラスに格付けされています。これは、医師・医療スタッフ数、病床数や設備によって決定されます。
最も高いAクラスの病院は、高度な医療を提供する設備が整っており、より小規模な病院からの紹介先となっています。
Bクラスも部分的にそのような機能を担っています。最も多いのはCクラスの病院で、一般的な中規模病院がこれにあたります。
出典:インドネシア保健省「インドネシア健康プロフィールデータ2021」より弊社作成
https://pusdatin.kemkes.go.id/folder/view/01/structure-publikasi-pusdatin-profil-kesehatan.html
さらに、各病院は、第三者機関であるKARS(インドネシア病院認証委員会)による認証を受ける必要があります。
現在、すでに認証を受けている病院数は2,484で、全体の83.2%です。
「中期国家開発計画(RPJMN) 2020~2024年」では、健康医療サービスの平等を目指し、2024年までに全ての病院が認証を受けることを目標としています。
認証は、先に述べた各クラスごとに、下記のように表されます。
認証種別 ランク 全体に占める割合
perdana | ☆ | 26% |
dasar | ☆☆ | 8.4% |
madya | ☆☆☆ | 15.5% |
utama | ☆☆☆☆ | 13.4% |
paripurna | ☆☆☆☆☆ | 36.5% |
これらは、先に述べたA〜Dクラスの下位分類にあたり、認証を受けた病院は「Aクラスのparipurna(5つ星)」のように表すことができます。
認証病院が最も多いのはアチェ州で、州内の病院の約92.9%が認証を受けています。反対に、最も少ないのはパプア州で、約68.1%にとどまっています。
これ以外に、国際認証機関であるJCIによる認証を受けた病院も、2021年現在で28施設あります。
国内の病院数の0.2%とごくわずかではありますが、インドネシア国内で高度な医療が受けられる病院も増えていることがうかがえます。
ちなみに、日本でJCI認証を受けている病院は、2021年現在で30施設です。
参考:インドネシア保健省「インドネシア健康プロフィールデータ2021」
https://pusdatin.kemkes.go.id/folder/view/01/structure-publikasi-pusdatin-profil-kesehatan.html
参考:https://krakataumedika.com/info-media/artikel/akreditasi-rumah-sakit
https://www.worldhospitalsearch.org/
以上のように、インドネシア国内では、比較的安く医療が受けられる公立の小規模診療所が多く存在し、病院数も増加傾向にはあるものの、地方間の医療格差、及び貧富の差により受けられる医療サービスに大きな差があることが問題となっています。
一方で、シンガポールやマレーシアなど海外への医療ツーリズムが人気を集めていることや、高額な医療サービスを提供する私立病院が増加しているという事実から、富裕層向けの医療ビジネスが国内でさらに発展する余地も大いにあると言えそうです。
弊社では、過去に医療関係のウェビナーも開催しております。
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