【コラム】インドネシアの産休・育休事情

令和2年度の厚生労働省の調査によると、日本では、在職中に出産する女性の81.6%(有期契約労働者の62.5%)が育児休業を取得しています。一方で、男性の育休取得率は12.65%と、増加傾向にはあるもののまだまだ低い水準です。

女性はもちろん、男性に対しても育児休業が取得しやすい環境が整うことは、女性の社会進出に欠かせない要素の一つです。

来年4月から施行される改正育児・介護休業法では、育休の分割取得や男性の育休取得を促進するための枠組みを設ける等、日本政府も力を入れています。

 

では、同じく女性の社会進出が進むインドネシアでは、どのような制度があるのでしょうか。

今回のコラムでは、インドネシアの産休・育児休業制度についてご紹介します。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r02/07.pdf (2021年11月15日閲覧)

 

インドネシアの女性の出産・育児休業制度

まず、女性の場合をみてみましょう。

インドネシアでは、労働法2003年第13号により、公務員を含む女性被雇用者が産前・産後に1.5ヶ月ずつ、合計3ヶ月の有給休暇を取得できることになっています。この休業期間は、給料の100%が支払われます。

一方で、日本のような育児休業制度は法的には定められていません。

インドネシアではメイドやナニーを雇うことが一般的であるため、女性が比較的早く社会復帰を果たしているのです。

参考:https://www.social-protection.org/gimi/gess/ShowWiki.action?wiki.wikiId=1295

インドネシアの男性の育児休業制度

では、インドネシアの男性の育児休業制度はどうでしょうか。

上述の労働法2003年第13号では、男性の有給での育休は、たった2日間しか認められていません。

公務員の場合、インドネシア国家人事院 (BKN)規則 2017年第24号で、病院からの診断書があれば、男性が最長1ヶ月の休暇を取得することが認められています。

ただし、名称としては育児休業ではなく、「重要な事由による休暇(CAP: Cuti Arasan Penting)」となっています。

また、地域によっても異なり、アチェ州では最長でも14日間しか認められません。

インドネシアにおける男性の育休の取得は、全体的にハードルが高いということが窺えます。

一方で、民間企業の中には独自の男性育休制度を設けているところもあります。

例えば、PT Johnson & Johnson Indonesiaでは、最低2ヶ月の育休を取得することを義務化しているようです。

参考:https://www.ruangmom.com/cuti-melahirkan-untuk-suami.html
https://industri.kontan.co.id/news/kini-ayah-berhak-cuti-melahirkan-2-bulan
https://employers.glints.id/resources/cuti-melahirkan-untuk-suami/

インドネシアでは育休は必要ないのか?

先に述べたように、インドネシアではメイドなどを雇うことが前提になっていることが、産休・育休の短さと関係がありそうです。では、インドネシアでは育休は必要とされていないのでしょうか。

答えはもちろんNOです。

インドネシア国内でも、育休制度の拡充を求める声があがっています。たとえば、BBCの記事によると、2017年に法的な育休期間を2日から14日に延長するよう求める請願が出されています。

また、女性の社会進出という観点だけでなく、別の観点から見ても問題点が指摘できます。

それは、インドネシアにおける妊産婦の死亡率の高さです。

2017年のデータで、インドネシアの10万人中177人と、東南アジアの他の国と比較しても高い数字となっています。

その理由は、現在でも16%ほどの妊婦が自宅で出産しているといった衛生面での問題点や、定期的に産婦人科を受診していない妊婦が26%いるなど、妊産婦への教育不足や医療体制が十分でなく、病院へのアクセスに時間がかかることなどがあげられます。

このような状況下にあって、母親の精神的不安や身体的負担を軽減するには、父親が産休・育休を取得しサポートできる体制を整えることが重要となるでしょう。

Kompas.com 2021年8月24付 ”Indonesia Gagal Turunkan Angka Kematian Ibu Melahirkan, Ini Alasannya
(インドネシアが妊産婦の死亡率抑制に失敗した理由)”を参考に弊社作成

参考:https://www.kompas.com/sains/read/2021/08/24/173000823/indonesia-gagal-turunkan-angka-kematian-ibu-melahirkan-ini-alasannya?page=all.
https://www.bbc.com/indonesia/majalah-41481452

 

以上のように、インドネシアにおける育休制度は、法的には十分に整備されていないのが現状です。

しかし、家族を大事にする文化が根付くインドネシアにおいて、育休制度の充実はますます求められていくでしょう。

もし今後、インドネシア人の雇用を検討するのであれば、育休制度の拡充に目を向けてみるのもよいのではないでしょうか。

 

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