【コラム】インドネシアにおけるオンラインプラットフォームによる水産物市場の最適化

新型コロナウィルス感染症の拡大により漁業セクターにも消費収縮、特に輸出需要減少の影響が出ており、地方市場の中には深刻な打撃を蒙っている場合もありますが、インドネシア政府海洋漁業省は、水産物ビジネスの発展、水産物市場の維持・支援策へのコミットメントを継続しています。

エディ―海洋漁業大臣は、新型コロナウィルスによって財政支出のパターンが大規模に変更されたのみならず、水産物の消費を含めて、消費者の消費パターンも大きな変更を経験しつつあると、指摘しています。

 

統計データが示すもの

インドネシア中央統計庁(BPS)は、新型コロナウィルスの人口動態への影響を調査しています。

それによりますと、パンデミック状況において、食品を買って持ち帰る消費パターンが51%増えた、と報告されています。

家庭で調理するか否かに関わらず、「家庭で食事をする」という消費パターンが世界的に増えていますが、インドネシアも例外でないことがわかりますね。

調査結果からは、家庭で料理する材料、または家庭で食する調理済み惣菜への出費が増えていることが読み取れます。

統計データは同時に、従来は雑貨の消費中心であったオンラインショッピングで、多様な商品を購入するようになり、オンラインの購入額が増加したと回答した人が被験者の46%に上ったことも示しています。

現在のインドネシア社会では、オンラインアプリを通した商品の購入及び宅配サービスの利用が普及してきており、上述のエディー大臣は加工した水産物、魚類の缶詰、Otak-otakと呼ばれる魚のすり身団子などの調理用、又は調理済み水産物の消費増加に期待を表明しています。

現在の傾向に対応するために、インドネシア政府は中小企業の水産物生産者を支援するために、「インドネシア海産物市場プログラム」を立ち上げ、水産業関連の国営企業(PT. Perinus)が水産物市場のデジタル化を推進するエンジンとなって、各地域の水産業者と協働する形をとっています。

 

インドネシア海産物市場プログラム

2020年11月6日、海洋漁業省は「インドネシア海産物市場プログラム(KKP)」を「誇り高きメイドイン・インドネシア」プログラムの一環として公式にスタートしました。

このプログラムでは、1,355社のインドネシア国内の中小企業がEコマースのプラットフォームに参加していますが、彼らは海洋漁業省の集中的な指導の下に、パンデミック状況下における製品のマーケティング手法を学び、オンライン購買者のマーケットへのアクセスを増やせるように支援を受けています。

人々は、地方漁港の近くの市場に出かけなくとも、家庭に居ながらにして新鮮な海産物を購入できるようになりました。

言い換えれば、地方の中小水産業者と一般消費者の双方にこのプログラムへのアクセスを提供し、水産物の生産基盤を強化し、水産加工業者が需要を把握しながら持続可能な仕方で成長できるように体制を整えようとしています。

このプログラムは同時に、製品、パッケージ、金融サービスとマーケティングへのアクセスなどを標準化することによって各地域製品の競争力を強化することを通して、中小水産事業者の供給体制、生活基盤の強化を目指しています。

インドネシア政府は、Tanihub、Aruna、Gojek、Grabといったデジタルマーケティングのプラットフォーム企業と提携して、本プログラムの目標を達成する方策を模索してきました。

こうした努力の一環として、Gojekは2020年10月28~29日に、本プログラムに参加する中小企業への研修プログラムを実施し、Grab及びArunaも同様の研修を計画しています。

さらに、インドネシア海洋漁業省の海産物関連製品競争力強化総局(PDSPKP)の局長、アルタティ・ウィディアルティ氏は「PDSPKPとの協力合意書への署名はまだだが、Shopee及びBukalapakというプラットフォーム企業も同様に、中小水産事業者への支援を本プログラムへのコミットメントを通して表明している」と述べています。

本プログラムに関して説明するウェブサイトにおいては、プログラムに参加する中小水産事業者84社に対してShopeeがオンライン研修を2020年10月16~19日に提供したことが述べられています。

その研修の内容は、オンラインプラットフォームにおいて、どのようにオンライン店舗を開店するか、オンライン店舗の設定、アカウントの設定、製品の設定、送料無料の設定方法、製品の写真、送付方法・製品価格・支払い方法の設定についてです。

研修実施後、Shopeeのチームは、中小水産事業者への支援として、店舗開設プロセス及び開設後の販売において問題が発生していないかをモニタリングしています。

また、中小水産事業者が追加の研修を希望する場合は、Shopeeは上級コース(Bimbel Shopee)を定期的に対面で開催し、開催場所の調整も行いたいと表明しています。

 

国営水産企業(PT. Perinus)による水産業のデジタル化への取り組み

政府による「水産業のデジタル化支援」の流れを受けて、国営企業のPT. Perinusはパンデミック
状況下で自らの水産物関連製品をオンラインプラットフォームで販売することを通して、政府の取り組みを後押ししようとしています。

同社のタカト・シーフードというブランド製品(下記写真参照)は、マグロステーキ、サバステーキ、エビフライ、タコ、イカ、フエダイ類、等の冷凍海産物をお手頃価格で販売しています。

出典 : perinus.co.id

 

PT. Perinusは既にオンラインプラットフォーム企業の一つ、Grabと提携してEコマースに取り組んでいますが、先述の他のプラットフォーム、Shopee、Tokopedia、Bukalapakなどでも同社製品は購入可能になっています。

国営企業が先頭に立って水産物販売のデジタル化に取り組むことで、業界全体の一層のデジタル化が進むと期待されています。

弊社では、インドネシアの最新情報や様々なトレンド、オンラインでの視察代行、調査代行なども承っております。

インドネシアの漁業にご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

引用文献

Statistik, B. P. (2020). Hasil Survei Sosial Demografi Dampak Covid-19 . BPS.
Kementerian Kelautan dan Perikanan (KKP). (2020). Manfaatkan Peluang di Masa Pandemi, Menteri
Edhy Buka Akses Permodalan untuk Entrepreneur Milenial.
Retrieved from KKP News Site: 
https://kkp.go.id/artikel/19957-manfaatkan-peluang-di-masa-pandemi-menteri-edhy-buka-akses-permodalan-untuk-entrepreneur-milenial

Kementerian Kelautan dan Perikanan (KKP). (2020). Aksi KKP bersama Platform Pemasaran Digital, Perkuat Pasar Laut Indonesia.
Retrieved from https://kkp.go.id/djpdspkp/artikel/24222-aksi-
kkp-bersama-platform-pemasaran-digital-perkuat-pasar-laut-indonesia

Ekonomi Bisnis. (2020, June 23). Ubah Pola Bisnis, BUMN Perikanan Ini Mulai Jualan Online.
Retrieved from https://ekonomi.bisnis.com/read/20200623/99/1256635/ubah-pola-bisnis-bumn-perikanan-ini-mulai-jualan-online

 

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