【コラム】インドネシアの大学生おける就職活動事情

日本での新卒の学生の就職活動は大学在学中に行うことが一般的です。毎年就職活動の時期になると、黒のスーツを着た学生を街中でよく見かけます。

一方インドネシアの大学生における就職活動事情はどのようになっているのでしょうか。

今回のコラムではインドネシアの就職活動について、採用する側、就職する側双方の視点でご紹介していきます。

 

インドネシアの大学生における新卒採用について

日本では就労経験のない学生を一斉に採用する「新卒一括採用」が一般的ですが、インドネシアにおいては、新卒採用枠はありません。

日本のように在学中に就職活動を行って内定をもらうケースは稀で、学校卒業後に就職活動を行い、企業から内定を貰うことが殆どです。

それでは新卒採用枠がない中で、インドネシアの学生達はどのように就職活動を行なっているのでしょうか。

 

インドネシアにおける就職活動の方法

インドネシアにおける就職活動は以下の様な方法で実施されます。

合同説明会

大量採用を行いたい大手企業を中心に、「合同説明会」がホテル等の大会場で行われています。

しかしながら、こちらでは新卒の学生の採用枠が設定されてないのが通例です。

この合同説明会には、数百人〜数千人の就職希望者が訪れ、インドネシアの学生はそこで会社の採用情報を得ることができ、興味のある会社と接点を持つことができます。

合同説明会では、参加者が履歴書を持参し、面接へと繋がることもあるようです。

参考WEBサイト:https://www.jobstreet.co.id/career-resources/persiapan-berburu-pekerjaan-di-acara-bursa-kerja/

 

求人サイト

日本と同様にインドネシアにも「求人サイト」があり、サイトを通じて職探しをすることができます。

しかし、日本のように新卒者専用の求人サイトというものはないため、「新卒受け入れ可」等のキーワードを入れて検索するしくみとなります。

求人サイトから応募をする流れは日本と似ており、履歴書を企業に送り書類が通過すると面接へと進むといった流れになっています。

 

インターンシップ

在学中に「インターンシップ」として、実際に企業で働き、そこからその会社への就職に繋げるという方法もあります。

インターンシップは、無償ではなく労働対価の支払いが発生し、実際にその会社で働いた場合の労働状況などを事前に体感確認することができます。

インドネシアの学生向けインターンシップは、日本のそれ以上に実務的な内容を体験することができる機会が多いように思えます。

参考WEBサイト:https://allabout.co.jp/gm/gc/456727/
https://www.successfulgraduate.co.id/6-kiat-sukses-untuk-mendapatkan-pekerjaan-pertama/

 

インドネシアと日本の就職活動を比較してみると会社への応募方法に関しては日本との類似した点もあることが分かります。反面、インドネシアでは新卒採用枠がないというところが日本の制度・慣習と大きく異なる点であるといえるでしょう。

 

インドネシアの学生に人気のある就職先

次に、インドネシアの学生の間で人気のある就職先の傾向について、日本との比較で見てみましょう。

以下は新型コロナウイルス蔓延以前、2020年度卒の日本の学生に人気な就職先ベスト7です。

 

日本の学生に人気のある就職先ベスト7(2020年度卒業生)

順位 業界 企業名
1 商社 伊藤忠商事
2 食品 味の素
3 旅行 JTBグループ
4 レジャー・アミューズ オリエンタルランド
5 運輸 ANA
6 旅行 HIS
7 商社 丸紅

出典:就職人気企業ランキングを基に弊社作成(2022年1月9日)https://service.gakujo.ne.jp/data/ranking201903

 

2020年度卒業の日本の学生に人気のある就職先は、総合商社の伊藤忠商事が1位です。

以下、2位は、大手食品会社の味の素、続いて3位〜6位は観光業であるJTBやHIS、ディズニーランドを運営するオリエンタルランド、航空業であるANA、そして7位は総合商社の丸紅がランクインしています。

新型コロナウイルス蔓延前である2020年度卒の日本の学生の間で人気のある就職先として、業界で見ると大手商社、大手観光業に人気があったことが分かります。

 

一方、インドネシアの学生に人気のある就職先は、以下の通りです。

インドネシアの学生に人気のある就職先ベスト7(2018年)

順位 業界 企業名
1 銀行 インドネシア銀行
2 国家公務員 財務省
3 石油・ガス プルタミナ
4 国家公務員 インドネシア金融サービス庁
5 日用品 ユニリーバインドネシア
6 IT グーグルインドネシア
7 航空 ガルーダインドネシア航空

出典:インドネシアにおける就職人気企業ランキングを基に弊社作成(2022年1月9日)https://prospectsasean.com/most-attractive-employers-indonesia-business/

 

上記は2018年の情報ですが、1位はインドネシアの中央銀行であるインドネシア銀行でした。

2位、4位は国家公務員である財務省とインドネシア金融サービス庁です。

また、3位にランクインしているプルタミナは、ジャカルタに本社を置くインドネシア国営では最大手の石油・天然ガス関連企業です。

5位、6位は外資企業が続き、7位にはインドネシアの国営航空であるガルーダインドネシア航空がランクインしています。

インドネシアの学生に人気の高い企業は、国家公務員やインドネシアの国営企業など、国が経営する手堅い企業であることが特徴だと言えます。

また外資系の大手企業など高い給料が支払われる企業にも人気が集まりました。

上記のランキングには入っていないですが、インドネシアでは学校教師も高い人気のある職業の一つです。

教員は決して給料が特別高いという職種ではありませんが、地方に住んでいても安定した職を確保できる手堅い職種であるという点が人気の理由の一つであると言えます。

 

インドネシアにおける大卒の初任給

インドネシアにおける平均的な大卒の初任給(月収)は、Rp52,000,000(約41,000円)〜Rp.71,500,000(約57,000円)です。

インドネシアにおける2021年の平均月収170ドル(約19,000円)と比較すると2倍近くです。

しかし、インドネシアにおいて大学を卒業する人の割合は、インドネシアの労働人口の約3%にしか過ぎないのが実情です。

この実情に目を向けると、インドネシアで安定かつ好条件の企業に就職できるチャンスは、とても限られた人にだけ与えられたものであると言えるでしょう。

大学進学率の低いインドネシアにおいて、「志を持った若者に学問の機会を等しく与える」という観点だけでなく、「企業に就職する労働者の付加価価値向上による、ハイレベルな産業社会の形成」という観点からも、大学への進学率向上は今後の重要な課題であると言えるでしょう。

参考WEBサイト:https://www.ceicdata.com/ja/indicator/indonesia/monthly-earnings

 

今回のコラムでは、インドネシアにおける就職活動事情についてご紹介しました。

新卒採用枠がなく、卒業後に就職活動をするインドネシアの学生にとって、就職活動は学生自身の情報収集や取り組みが大変重要であることが分かりました。

また、インドネシアで日本企業が新卒採用を実施したい場合は、インドネシアの学生に自社の採用情報をわかり易く見てもらう工夫が必要であると言えます。

弊社は現地の複数の大学とのMOUを締結しております。皆様のインドネシアでの採用活動としての学生調査等を通じて日系企業の皆様へのお手伝いの他、インドネシア進出のサポートなど様々な分野で支援を行なっております。

是非ご相談をお待ちしております。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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