【コラム】インドネシアの学校における日本語教育事情

日本語は世界各国で学習されている言語のひとつですが、インドネシアは日本語学習者が世界で2番目に多いと言われています。

それではなぜインドネシアではそれほど多くの人々が日本語を学習しているのでしょうか。

今回は、インドネシアにおける日本語学習事情についてご紹介していきます。

 

インドネシアにおける日本語学習者について

2019年時点のインドネシアにおける日本語学習者数は706,603人と、中国に次ぎ2番目に日本語学習者数が多いことが分かっています。日本語学習者が多い理由としては、1980年代以降、インドネシアの高校における日本語教育が盛んになったことが挙げられます。

今でもインドネシアの高校では第二言語や選択科目の一つとして日本語を取り入れている学校が多くあります。そのため、インドネシアにおける日本語学習者の大部分は高校生が占めています。

また、学校以外で自発的に日本語を学習している人が日本語を学ぶきっかけとして、「日本のアニメや漫画、J-POP、ファッションなどに興味を持った」という人が多いようです。

日本のアニメや漫画はインドネシアでは大人気で、例えば「ドラえもん」はインドネシアの地上波放送で毎週放送されている程です。

NARUTOやワンピースもインドネシアで知らない人がいない程の人気です。

参考WEBサイト:https://www.sukasuki.org/2020/01/ada-berapa-banyak-pelajar-bahasa-jepang-di-indonesia/
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2019/indonesia.html

インドネシアの学校における日本語学習レベル

ここからは、インドネシアにおける、日本語の学習方法や日本語のレベルをご紹介していきます。

中学校

中学校で日本語のカリキュラムがある学校はそもそも少ないです。

日本語学習レベルは、簡単な挨拶や簡単な単語を学ぶレベル、となっています。

 

高校

高校においては、「さくら」や「にほんご☆きらきら」という教科書を使用して日本語教育を行なっている学校が殆どです。

高校では、日本と同じように教科書を利用しながら簡単な文法や会話を学習する方法が一般的です。

また、文法や会話だけでなく、チームを組んで日本の掃除についてインドネシアと違う点をインドネシア語で話し合う等、日本とインドネシアの文化の違いも学習しています。

また、高校レベルでは、ひらがな・カタカナまでの学習に留まり、漢字を書けない生徒が殆どです。

高校によっては「日本語クラブ」という日本語や日本の文化を学習する部活動もあり、そこで生徒は日本語でのスピーチに挑戦したり日本語の歌を歌ったりして授業だけで学習している生徒以上に高いレベルで日本語や日本文化を習得しています。

 

大学

大学においては、高校より専門性が高いレベルの学習となります。

難しい文法や、漢字といったより高度な日本語習得レベルが求められます。

4年制で日本語教育専攻の学科がある大学は現在、インドネシア全国に11校あります。

大学で日本語を学習している学生の多くは、日本語だけでなく日本の文化について興味があり、日本の伝統文化から現在の日本の流行に至るまで非常に詳しい学生が多いです。

また、日本語能力試験(JLPT)に向けて勉強に励んでいる生徒も多くいます。

 

日本語能力試験(JLPT)について

日本語能力試験JLPTはN1〜N5の5つのレベルに分かれています。

各レベルにおいて、「読む」「聞く」という2つの項目に分けた言語知識を目安に問題が作成されています。

N1が一番難しいレベルとなります。

各レベルに求められる日本語能力は以下の通りです。

N1:幅広い範囲で使われる日本語を理解することができる
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4:基本的な日本語を理解することができる
N5:基本的な日本語をある程度理解することができる

 

 

N1やN2レベルになると、日本人でも文法的に説明できないレベルの問題も沢山あり、難易度が格段に上がります。

日本語能力試験(JLPT)は日本語を学習するインドネシア人の間でとても重要視されており、日本語を学習するインドネシア人でこの検定試験を知らない人は殆どいないのではないでしょうか。

参考WEBサイト:https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html

 

インドネシアの日本語の教師

独立行政法人 国際交流基金によると、インドネシアで日本語を教えるための条件は以下の通りです。

小学校、中学校

日本語教師の資格は制度化されておらず、特別な資格を持っていなくても教えることが可能。

高校

日本語教育学科や、日本関係の学部の学士号(S1)を取得し、教育文化省が行う社会貢献プログラムに1年間参加する必要があります。社会貢献プログラムでは、実際に学校へ行き、生徒に日本語を教える経験をします。その後、日本で言う教員採用試験のような位置づけのPPG(Pendidikan Profesi Guru:教育要諦特別課程)に合格すると、高校の日本語教師の資格を得ることができます。

高校で日本語を教えている先生の中にもJLPTの試験を受ける人が多くいますが、先生の日本語レベルには地域によってばらつきがあります。

大学

学士号(S1)を出す学部で教える場合は、修士号(S2)を取得する必要があります。

学位取得を目指し、休学して日本へ留学する人もいます。

大学の日本語教師の日本語レベルは非常に高いです。

またインドネシアでは、各科目の教師が学校を越えて集まる教師会が定期的に開催されており、その教師会でも日本語の学習が行われており、そこではメンバーの間で日本語の学習方法が共有されます。

インドネシアにおける日本語教育は、独立行政法人 国際交流基金から様々なサポートを受けています。

国際交流基金のプログラムである「日本語パートナーズ」というプログラムは、日本語教育を行なっているインドネシアの中学校や高校に日本人が派遣され、ネイティブスピーカーという立場から日本語や日本文化を教えます。

このプログラムは机上の日本語学習だけではなく、日本人によるネイティブの発音を聞いたり、日本人から直接日本文化を学ぶことで日本に興味を持つ生徒を作り出すきっかけにもなっています。

 

また、先生側も本物の日本語に触れ、日本人と実際に会話をすることで、日本語の能力向上に繋がっています。

地方の高校で教えている先生達は日本語のレベル向上を図りたいと思っていても、普段はその手段があまりないため、そのような地方の先生達にとってもこの「日本語パートナーズ」は非常に良いプログラムであると言えます。

今回のコラムでは、インドネシアの学校における日本語教育事情についてご紹介しました。

世界4位の人口を誇るインドネシアにおいて、こんなにも日本語学習者(世界第2位)がいることは日本にとって非常に喜ばしいことです。

日本語はひらがな、カタカナ、漢字と表記方法が様々で学習が非常に難しい言語ですが、日本語を学習する人々の興味を持続できるよう、ICT技術を取り入れるなどの対策が取られています。

 

そして今後は、日本語教育の学習方法についての新しいアイデアも必要ではないでしょうか。

今、日本の産業界は人材不足といった課題に直面しています。

多くの人々が日本語を学び日本に興味を持っているインドネシアは今後日本の企業が優秀な外国人材を募集するうえで魅力的な国である事は間違いないでしょう。

 

弊社では、インドネシアの日本語教育についての調査、インドネシア進出のサポートの他インドネシアの優秀な人材の紹介等など様々な分野で支援を行なっております。

皆様からのお問い合わせやご相談をお待ちしております。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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