【コラム】Indonesia Vision 2045を達成するためにインドネシアにとって必要なこととは
インドネシア政府は、独立100周年に当たる2045年に向けた国家ビジョンとして、「Indonesia Vision 2045」を構想しています。
Indonesia Vision 2045ではインドネシアが世界の先進国上位5カ国以内になることを目標に掲げ4つの柱をもとに様々な国家目標を示しています。
今回のコラムでは、Indonesia Vision2045を達成するために今のインドネシアにとって必要なこと、日本の関わり方について考えていきたいと思います。
Indonseia Vision 2045について
IndonesiaVision2045の大きな柱は、「人間開発と科学技術力の振興」「持続可能な経済発展」「公平な開発」「強靭な国土づくりとガバナンスの強化」の4つです。
4つの柱の詳細は以下の通りです。
(1)人間開発と科学技術力の振興
公平な教育の浸透
開発における文化的役割の増強
科学技術の振興
健康と生活の質の向上
労働改革
(2)持続可能な経済発展
投資促進と経済競争力の増強
産業と観光開発の加速
海の経済開発
食の安全と農民の福祉の強化
安全な水やエネルギーの確保
環境への貢献
(3)公平な開発
貧困撲滅
均等な機会と所得分配
地方格差是正
公平なインフラ整備
(4)強靭な国土づくりとガバナンスの強化
実質的な民主主義の実現
行政改革
正義の実現と汚職の追放
自由で活発な政治的
国家の安全保障
上記より、多角的な4つの柱を元にIndonesia Vision 2045は構成されていることが分かります。
以下でIndonesia Vision 2045の中でも「経済」と「教育」の観点から今後の課題を見ていきます。
Indonesia Vision 2045:インドネシア経済の現状と課題
新型コロナウイルスの感染拡大前、インドネシアのGDPは増加傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染拡大が本格化した2020年4月以降よりマイナス成長が続いています。
Indonesia Vision 2045を達成するためには、今後インドネシアの経済をどのように変えていく必要があるのでしょうか。
インドネシアのGDPを回復させるためには、まずは新型コロナウイルスを封じ込めるため、できるだけ早くワクチン接種を行うことが急務とされています。
また、ワクチン接種と併せて新型コロナウイルスの影響により失業した人々への社会保障プログラムも必要となってきます。
インドネシア国民へのワクチンの接種が一通り終了した後、経済の持続可能性を意識した取り組みを行う必要性があり、そのためにはインドネシアで加工した商品における輸出の強化が重要であると考えられます。
現在、インドネシアの輸出品はパーム油と石炭に依存していますが、未加工品は国際市場に価格が左右されやすく安定しないため、未加工品に依存するのではなく、インドネシアで加工した商品の輸出を増やし安定した輸出を目指す必要があります。
インドネシアで加工した商品の輸出を増やすことができれば、その商品を製造するための雇用を生み出すことができるうえにインドネシア経済を回すことが可能となります。
参考WEBサイト:https://www.ariseplus-indonesia.org/activities/perspectives/indonesia-economic-transformation-to-achieve-the-2045-vision.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/05/7d22f6e5cbbb671e.html
Indonesia Vision2045:質の高い労働者輩出へむけた教育の重要性
人口が増加し続けているインドネシアにおいて、今後労働者人口も増えていくと予想されていますが、首都ジャカルタ以外の労働人材の競争力は国際レベルで見るとまだまだ低いのが現状です。
Indonesia Vision2045を達成するためには質の高い労働力の輩出は大変重要と言えます。
インドネシア中央統計庁の調査によると、2019年における職業高卒業生の失業率は8.63%と高い数字となっており、インドネシアのガジャマダ大学のTadjuddin教授は、就職前に企業における職業教育*の必要性を訴えています。
職業教育によって、就職前の教育レベルが低い労働者やインフォーマルセクターで働く人々も自身の仕事についての知識やスキルを身につけることができ、人材力向上に繋がると考えられています。
*職業教育:一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育
参考WEBサイト:https://www.thejakartapost.com/news/2020/08/27/vision-of-indonesia-2045-hinges-on-skilled-workforce.html
https://www.imove-germany.de/de/alle_news/Indonesien-Vision-2045-haengt-von-qualifizierten-Arbeitskraeften-ab.htm
https://www.sgec.or.jp/scz/info/shokugyou.html
Indonesia Vision2045に対する日本の関わり方
Indonesia Vision2045に呼応するかたちで、日本においても2045年に向けた協力のあり方について議論し発信するプロジェクト「PROJECT 2045:For the Common Future of Indonesia and Japan」が2018年に始まっています。
このプロジェクトをリードする在インドネシア日本国大使館は、日本とインドネシアの連携は大変重要であり、少子高齢化が加速する日本と人口ボーナスの続くインドネシアは相互補完的な関係になり、両国にとってWin-Winとなる協力が可能と述べています。
Indonesia Vision2045を達成するうえで、インドネシアにおいて高度な技術や能力を備えている人材が不足していることが問題視されています。またインフラ整備が不十分な点が多く見られます。
その点において、日本の技術で補うことができればインドネシアの経済成長につなげることができるのではないかと考えられます。
一方、日本においては少子高齢化・人口減少の時代に突入しており、看護・介護分野における需要に対する人材が不足すると言われています。
日本では現在、インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアから看護師候補と介護福祉士候補者を受け入れています。
この制度を強化することで、日本で技術を積んだ看護・介護人材は帰国後、インドネシア国内の医療現場で活躍することができ、日本における看護・介護分野における人材不足の改善へと繋がるのではないかと期待されています。
このように、Indonesia Vision2045に沿って、日本側が双方にWin-Winになるビジネスを考えていくことで両国ともに経済成長をしていける関係性になることはとても重要と言えます。
今後インドネシアでビジネスを展開するうえで、Indonesia Vision 2045を意識していくことは重要なポイントになってくるでしょう。
参考WEBサイト:https://special.nikkeibp.co.jp/atcl/NBO/18/project2045/report2/
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