【コラム】インドネシア教育文化省の在宅学習のための取り組みと課題

インドネシアにおける新型コロナウイルス感染者数は拡大を続け、現在東南アジアで最も感染者が多い国となっています。

4月10日には首都ジャカルタで「大規模な社会的規制(PSBB)」が開始され、学校や企業、商業施設の営業や宗教活動を自粛するよう政府が求めています。

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「大規模な社会的規制(PSBB)」が発表されて以降、インドネシア全国で幼児教育施設から高等学校まで6000以上の学校で休校措置がとられており、生徒数に換算するとインドネシア国内で約2500万人以上の生徒が自宅で学習していると言われています。

インドネシアではここ数年でパソコンやスマートフォンの所有率、インターネット利用率などは大きく増加しましたが、それでも通信インフラ環境が整っていない地域はまだまだ多く、インターネットへのアクセスが制限されており、更に経済格差が大きいためオンライン学習のためのデバイスを用意できないなど在学学習のための環境が揃っていない家庭も多く存在するのが現状です。

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インドネシア教育文化省によると、インドネシアにおける在宅学習の状況については、以下の3つに分類されるといいます。

1.オンライン学習の環境が整っている

学習用のデバイスも所有し、インターネット環境も整っているため在宅学習に特に支障がない。

2.セミオンライン学習が可能

インターネット環境が十分整っているとは言えず、教師から生徒への課題がWhatsapp(メッセージアプリ)経由で送られる。教師と生徒の直接の対話は難しい状況。

3.オンライン学習が困難

オンライン学習のための環境が全く整っていないため制限が多く、ラジオを利用したり、教師が生徒の家を訪問することで日々の勉強を行っている。場合によっては休校措置をとることができない学校もある。

参考URL:インドネシア教育文化省WEBサイトより
https://www.kemdikbud.go.id/main/blog/2020/05/metode-pembelajaran-di-masa-pandemi-covid19-harus-sesuai-dengan-kondisi-daerah

 

インドネシア教育文化省は、休校措置がとられている間デバイスを使用して在宅学習を行うことはインターネットにアクセスできる家庭にとっては有効な手段としながらも、一方でこのテクノロジーにアクセスできない上記3の学校・生徒がインドネシア国内には多く存在するため、在宅学習により学習機会の不平等が生じてしまっているという問題についても指摘しています。

 

このような状況を受け、インドネシア教育文化省は、“Belajar dari Rumah (BDR)プロジェクト”を始動し、学習機会の不平等の解消に取り組んでいます。

BDRプロジェクトの一環としてTVRI(インドネシアの国営放送)と協力し、今年4月より自宅学習プログラムの全国放映を開始しました。

これは、インターネットへのアクセスが制限されている多くの家庭を支援するための代替学習の一つであるとインドネシア教育文化省は述べています。

4月に放送が開始され、現在は7月までの3か月間プログラムが放送される予定となっています。

この取り組みの効果を測定するため、インドネシア教育文化省はユニセフと共同で調査を実施した結果、3T(terdepan/辺境地域、tertinggal/未開地域、terluar/外縁地域)と呼ばれる地域、及び3T地域以外に居住する教師、生徒、保護者の99%が、本自宅学習プログラムについて知っている、という結果になりました。

また、調査によると3T地域に居住する教師の94%がこのプログラムを視聴しており、頻度は平均で3.2回/週。

3T地域以外でのプログラム視聴頻度の平均は4.1回/週でした。

3T地域に居住する生徒の52%はこのプログラムを視聴しており、一方3T地域以外の生徒は78.6%が視聴したという結果になっています。

 

また、調査結果によると自宅学習プログラムの好感度は高く、10段階で表すと学生のスコアは7.8、親のスコアは8.2、3T地域の教師のスコアは7、3T地域以外の教師のスコアは7.5でした。

まだまだ3T地域の生徒のプログラム視聴率は改善の余地があるとされながらも、インドネシア全体のテレビの普及率は約85%となっており、インターネットよりもテレビに手軽にアクセスできる家庭が多いため、インドネシア教育文化省は現在放送しているTVRIでのプログラム以外にも、地元のテレビ局との提携など更なるプロジェクトを検討していると述べています。

ただし、インドネシアにはテレビもオンライン学習が可能なデバイスも所有していない家庭もあるため、インドネシア教育文化省の今後の取り組みとしてテレビやオンライン学習以外の手段、例えばラジオや本、更にボランティアの活用についても言及しています。

参考URL:インドネシア教育文化省WEBサイトより
https://www.kemdikbud.go.id/main/blog/2020/05/hasil-survei-belajar-dari-rumah-tunjukkan-angka-positif

参考コラム:

上記のような取り組みに加え、インドネシア教育文化省はオンラインでの学習が可能な各家庭の生徒が在宅学習を円滑に進められるよう、無料で利用できる学習メディアを発表しています。

インドネシア教育文化省が発表しているオンライン学習メディアは以下の通りです。

No メディア名 URL
1 Rumah Belajar oleh Pusdatin Kemendikbud
(教育文化省データ情報センターによる学習ハウス)
https://belajar.kemdikbud.go.id/
2 TV edukasi Kemendikbud
(教育文化省 教育テレビ)
https://tve.kemdikbud.go.id/
3 Pembelajaran Digital oleh Pusdatin dan SEAMOLEC.
Kemendikbud.
(教育文化省とSEAMOLECによるデジタル学習)
http://rumahbelajar.id/
4 Tatap muka daring program sapa duta rumah belajar Pusdatin Kemendikbud.
(教育文化省データ情報センターによるオンライン対面学習プログラム)
http://www.pusdatin.webex.com/
5 LMS SIAJAR oleh SEAMOLEC, Kemendikbud.
(教育文化省とSEAMOLECによるLMS SIAJAR)
https://lms.seamolec.org/siajar-lms.php
6 Aplikasi daring untuk paket A,B,C.
(オンラインアプリ)
http://setara.kemdikbud.go.id/kesetaraan
 7 Guru berbagi
(先生シェアリング)
https://guruberbagi.kemdikbud.go.id/
8 Membaca digital
(デジタル読書)
http://aksi.puspendik.kemdikbud.go.id/membacadigital/
9 Video pembelajaran
(学習ビデオ)
http://video.kemdikbud.go.id/
10 Suara edukasi Kemendikbud
(教育文化省 音声教育)
https://suaraedukasi.kemdikbud.go.id/
11 Radio edukasi Kemendikbud
(教育文化省 ラジオ教育)
https://suaraedukasi.kemdikbud.go.id/
12 Sahabat keluarga –Sumber Informasi dan bahan ajar pengasuhan dan pendidikan keluarga
(家庭用教材と情報ソース)
https://sahabatkeluarga.kemdikbud.go.id/laman/
 13  Ruang guru PAUD Kemendikbud h
(教育文化省 幼児教育用 先生の部屋)
 http://anggunpaud.kemdikbud.go.id/
 14  Buku sekolah elektronik
(電子教科書)
 https://bse.kemdikbud.go.id/
15  Mobile edukasi – Bahan ajar multimedia
(モバイルエデュケーション マルチメディア教材)
https://m-edukasi.kemdikbud.go.id/medukasi/
 16 Modul Pendidikan
Kesetaraan(平等な教育のためのモジュール)
 https://emodul.kemdikbud.go.id/
 17  Sumber bahan ajar siswa SD, SMP, SMA, dan SMK.
(小学校から高等学校までの教材ソース)
https://sumberbelajar.seamolec.org/
 18  Kursus daring untuk Guru dari SEAMOLEC.
(SEAMOLEC 教師向けオンラインコース)
 http://mooc.seamolec.org/
19 Kelas daring untuk siswa dan Mahasiswa
(学生のためのオンラインクラス)
http://elearning.seamolec.org/
20 Buku digital open-access
(オープンアクセスデジタル書籍)
http://pustaka-digital.kemdikbud.go.id/slims/

出典:インドネシア教育文化省、Covid-19感染拡大下での自宅学習のためのガイドラインより弊社作成(閲覧日:2020年5月19日)
https://www.kemdikbud.go.id/main/blog/2020/05/se-sesjen-pedoman-penyelenggaraan-belajar-dari-rumah-dalam-masa-darurat-penyebaran-covid19

その他、民間が提供するオンライン学習サービスもインドネシア教育文化省WEBサイト内で紹介されており、インドネシア通信大手のIndosatやTelkomsel、またQuipper社が展開するQuipper Indonesia、Google やMicrosoft社が提供するオンライン学習サービスなど多岐に渡ります。

参考URL:https://bersamahadapikorona.kemdikbud.go.id/category/aplikasi-pembelajaran/

 

インドネシア教育文化省は、インドネシアの全ての家庭が平等な在宅学習の機会を得られない状況の中、全ての子供に一元化された同じ学習サービスを提供しようとするのでなく、特に居住しているエリアや環境によって利用できる学習方法を調整する必要があるとしています。

インドネシアでは1か月以上に渡り学校が休校となり、在宅学習という措置が取られてきましたが、インドネシア教育文化省は予定されていた7月からの始業は「延期しない」旨を発表しました。

インドネシアでは通常7月から新学期が始まるため、例年通りのスケジュールで学校教育を進めていく方針です。

しかし、インドネシアにおける新型コロナウイルス感染者数の推移についてはまだまだ減少の兆しがない中で、学校生活でどのような規則を設けるのか、どのような対策を行うのかが更なる課題となっています。

インドネシアの教育分野にご興味がある方はお気軽に弊社までご連絡ください。

 

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