【コラム】インドネシアの生姜事情と新型コロナウイルス感染症の影響とは

インドネシアの人々は、昔から香辛料や薬用の食品などを日常的に摂取しています。

食品のみならず、コスメなどの美容品にもその成分は幅広く使用されています。

しかし、連日ニュースになっている新型コロナウイルス感染症の影響で、赤生姜の価格が上昇しているのです。

今回のコラムでは、インドネシアの生姜事情と、新型コロナウイルス感染症のニュースの影響についてご紹介します。

 

インドネシア国内の生姜の生産事情

全世界でみると、インドネシア国内の生姜の生産量は世界で5番目に多い国となっています。

インドネシアだけで見てみるとジャワ島内で最も多く生産されています。

出典:Nation Master, Top Countries in Ginger Production より弊社作成(閲覧日:2020年3月6日)
https://www.nationmaster.com/nmx/ranking/ginger-production 

出典:Nation Master, Top Countries in Ginger Production より弊社作成(閲覧日:2020年3月6日)
https://www.nationmaster.com/nmx/timeseries/indonesia-ginger-production

出典:インドネシア中央統計庁、インドネシアの薬用植物統計(Statistik Tanaman Biofarmaka Indonesia)、2018年より弊社作成(閲覧日:2020年3月6日)
https://www.bps.go.id/publication/2019/10/07/65ba24004819d2bbb96bdf63/statistik-tanaman-biofarmaka-indonesia-2018.html

 

インドネシアの生姜の種類

インドネシアでは、生姜の根茎の香り、色、形、精油成分に基づいて以下の3種類に分類されています。

 

1. Red Ginger (赤生姜)

根茎は赤または明るい赤色で、サイズは小さく繊維が荒いのが特徴です。

さらに、味は辛くて香りが非常に強いため、食用ではなく医療用、生薬用に使用されています。

精油の含有量は約2.58〜2.72%と、生姜の種類の中でも最も多いです。

このために通常、生姜油(Ginger Oil)を生産するために栽培され、製薬産業のために使用されています。

 

2.White Ginger (白生姜)

根茎は中型で、形はやや平らで、白く、繊維が柔らかいのが特徴です。香りと味は赤生姜ほどは強くありません。

白生姜は、一般的には香辛料、飲み物、調味料として使用されます。

精油の含有量は1.5〜3.3%です。

 

3.Yellow Ginger (黄生姜)

黄生姜は日本では最もポピュラーな生姜の種類ですが、インドネシアでも市場などでよく売られています。

黄生姜の根茎は大きくて柔らかく、香りと味はそこまで強くありません。

料理、飲み物、キャンディー、スパイスの材料として広く使用されています。

精油の含有量は約0.82〜1.68%です。

インドネシアでポピュラーな生姜ドリンク

インドネシアでは生姜はとてもポピュラーな食材であるため、生姜を使用した各地方の様々な飲料やデサートがあります。

温かい飲み物はウェダンと言う名前が良く使われています。

代表的なものは以下の通りです。

 

1. Wedang Uwuh (ウェダン・ウーフ)

この飲み物はジョグジャカルタの伝統的な飲み物です。

生姜に加えて、シナモン、クローブ、スオウ、ナツメグ、レモングラスなどの香辛料、そしてロックシュガーまたはブラウンシュガーが使用されています。

鮮やかな赤い色と香りの良い甘くてスパイシーな味があり、体を温かくします。

Photo by JV05 Drajat Nahda Riyani

2.Sekoteng (スコテン)

スコテン、中部ジャワの生姜デザートです。ピーナッツ、パン、タピオカボール、シナモンが入っており、更に練乳を加えているデザートです。

Photo by Midori

3.Bajigur (バジグル)

バジグルは西ジャワの伝統的な飲み物です。

バジグルは、生姜、ブラウンシュガーとココナッツミルクが使われた飲み物です。

インドネシアではとても有名なポピュラーな飲み物です。

 

4. Bir pletok (プレトットク・ビール)

生姜、パンダンリーフ、レモングラス、スオウから作られた飲み物です。

ジャカルタにいるブタウィ族の伝統的な飲み物です。

プレトック・ビールにはアルコールは含まれていません。

この飲み物はスパイスが多く使われており、血液循環を促進する効果があります。

夜に暖かいものとして飲みます。

Photo by Ezagren

5. Kembang Tahu (クンバン・タフ)

このデザートは元々中国発祥のものですが、スマランで有名なデザートとして良く知られています。

材料は生姜、黒糖シロップ、パンダンリーブ、新鮮な大豆から作られています。

Photo by Midori

インドネシアでは生姜が健康のために様々な目的で用いられています。

身体のリフレッシュ効果、血液をサラサラにする効果、血行促進作用、整腸作用など、体に良い様々な効果をもたらす食材として、広く認知されています。

 

新型ウイルスにより価格が上昇している生姜

現在、世界各地で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が続いており、東南アジアも例外ではありません。

先日インドネシアも感染者が確認され、その後インドネシア国内ではマスクや消毒液の欠品や食料品の買い占めが起こるなどパニック状態になっています。

東南アジア各国でも感染者が確認されるなど、各国でも深刻な影響を与えています。

 

そんな中、インドネシアでは “JAHE MERAH MAMPU MENANGKAL VIRUS CORONA” (赤生姜が新型コロナウイルス感染症を予防することが出来る)というニュースがトレンドになっています。

アイルランガ大学の教授で、新型コロナウイルス感染症研究チームの一員であるアンワル・ニドム氏が、「新型コロナウイルス感染症はクルクミンを含む生薬で予防できる」という発言をしたことで、インドネシアの人々の注目を集めています。

クルクミンは生姜やレモングラス、ウコンに含まれる成分で、赤生姜はジャムゥや生薬などをよく摂取するインドネシア人にとってはとても身近なものです。

赤生姜が新型コロナウイルス感染症の予防に効果があるかどうかを証明する科学的根拠はないにも関わらず、この発言を受けてインドネシアではスーパーや市場で赤生姜を求める人が続出し、赤生姜の価格は上昇しています。

ジャカルタの市場では、赤生姜の価格は約Rp 50,000/kg程度でしたが、現在は約Rp70,000/kgにまで上昇し、市場によっては、Rp 90,000/kgもの値上がりをしているところもあるようです。

 

インドネシアの疫学者であり、インドネシア健康専門家協会(Ikatan Ahli Kesehatan Masyarakat Indonesia(IAKMI)執行委員会メンバーでもあるシャリザル氏は、「基本的にハーブは免疫力を高める効果がある」とする一方で、「赤生姜が新型コロナウイルス感染症を予防できるという仮定は、立証された事実ではない」と述べています。

これは連日インドネシアで大きなニュースとして取り上げられており、上述の通りインドネシアの人々の生活に広く浸透している赤生姜の価格の高騰は大きな打撃となっています。

 

いかがでしょうか。

弊社はインドネシアの視察、調査、専門家インタビューなど実績が多数ございます。

ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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