【コラム】インドネシアにおける園芸作物の概要と作物生産状況

インドネシアでは経済発展により、アッパーミドル世代の人々が増加し、健康を気に掛ける人が増えたことで、野菜や果物など園芸作物の需要が高まりました。

一方で、農業に従事している労働者の中で園芸農業に従事している労働者は10%程度に過ぎず、作物によってはインドネシア国内の需要に対して生産が追いついていないのが現状です。

今回のコラムではインドネシアの「園芸作物」について紹介します。

参考:https://reachout.aciar.gov.au/tapping-into-indonesias-highvalue-horticultural-markets

 

インドネシアで許可されている園芸事業

2010年に制定された法律第13号に基づき、インドネシアにおいて許可されている園芸事業は下記の7つです。

・種子事業
種子の育成・生産・流通等を行う。

・栽培事業
市場の需要、などを考慮し栽培を行う。

・収穫・収穫後の事業
定められている品質基準を守り収穫を行う。収穫後の洗浄・選別・等級付け・放送等を行う。

・加工事業
食品の品質や安全基準を守り加工を行う。

・流通事業
園芸作物を消費者に届けるための流通を行う。

・研究事業
栽培・収穫・加工・流通・貿易・マーケティングについて研究を行う。

・アグリツーリズム事業
農場体験や味覚狩りなど、都市居住者が農場や農村でよかを過ごすためのサービスを行う。

参考: https://belajartani.com/7-jenis-usaha-hortikultura-yang-diperbolehkan-di-indonesia/

 

インドネシアにおいて上述の園芸事業を行っている会社は計113社あり、地域別の分布は下図の通りです。

出典:Statistik Perusahaan Hortikultura dan Usaha Hortikultura Lainnya 2020を基に弊社作成(閲覧日:2021年3月19日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/27/376c079bd5b65bd98d7176f9/statistik-perusahaan-hortikultura-dan-usaha-hortikultura-lainnya-2020.html

 

園芸事業を行っている会社が1番多い地域は全体の64%を占めるジャワで、計73社の会社が存在します。

2番目に多いのはスマトラで、ジャワと比較すると少ないですがインドネシア全体の19%を占める21社の園芸会社が存在します。

残りは、バリ、ヌサトゥンガラ、カリマンタン、スラウェシ、マルク、パプアに少しずつ存在しています。

 

園芸作物の種類と割合

園芸作物は一般的に下記の4つに分類されています。

野菜

加工せず(加工したとしても最小限の加工)で使用される植物の一種。特定の時期にしか収穫ができない季節野菜と、通年収穫できる通年野菜の2種類に分類される。

果物

栄養素やビタミンの供給源として食べられる植物の一種。ほとんどの果物は何年にも渡って何度も収穫できる多年生植物に分類されるが、メロンやスイカなど季節性の果物もある。

薬用植物

薬効成分が多く含まれる葉・茎・果実・根茎などを用い薬・化粧品・健康などのために使用する植物で、インドネシアではジャムゥ(天然漢方薬)にもよく使用される。

観賞植物

美しさを見て楽しむために使用される植物の一種で、ガーデニングやプレゼント、儀式に使用される。

参考:https://belajartani.com/4-jenis-tanaman-hortikultura/

 

上述の4種類の園芸作物のうち、インドネシアの園芸会社が取り扱っている作物の割合は下図の通りです。

出典:Statistik Perusahaan Hortikultura dan Usaha Hortikultura Lainnya 2020を基に弊社作成(閲覧日:2021年3月19日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/11/27/376c079bd5b65bd98d7176f9/statistik-perusahaan-hortikultura-dan-usaha-hortikultura-lainnya-2020.html

 

薬用植物の割合が一番多く、全体の35%を占めています。次いで果物が全体の27%を占め、野菜の18%と続きます。観賞植物の割合は3%ほどで、取り扱っている会社が割合的には少ないことが分かります。

 

インドネシアの園芸作物項目別の統計

続いて、インドネシアで生産されている園芸作物の項目別の統計を見ていきます。

 

野菜

インドネシアで生産量が多い野菜の上位5種類は下図の通りです。

出典:Produksi Tanaman Sayuranを基に弊社作成(閲覧日:2021年3月19日)
https://www.bps.go.id/indikator/indikator/view_data/0000/data/61/website_55/1

 

インドネシアで生産量が多い野菜5種類は、エシャロット・キャベツ・小さい唐辛子・じゃがいも・大きな唐辛子です。

上図より、2018年から2019年にかけて5種類全ての生産量が増えていることがわかります。

インドネシアから海外への輸出額が一番多い野菜はエシャロットで2019年の輸出額は1058万米ドルとなりました。エシャロットの主な輸出先は、タイ・シンガポール・マレーシアなどの近隣諸国です。

一方、海外からの輸入額が一番多い野菜はニンニクで野菜総輸入額の38.62%に達しています。

インドネシアのニンニクの年間の国内需要は58万トンですが、国内で生産されているニンニクは8.8万トンとインドネシアの国内の需要量に全く追いついていないのが現状です。その理由として考えられることは、ニンニクは亜熱帯地域での栽培に適しており、インドネシアのような熱帯地域では育ちにくい点です。

国内需要を満たす量を生産するのには、更なる技術的な改良が必要と考えられています。

参考: https://money.kompas.com/read/2020/05/25/160500026/impor-sayuran-melonjak-ini-penjelasan-kementan

果物

インドネシアで生産量が多い果物の上位5種類は下図の通りです。

出典:Produksi Tanaman Buah-buahanを基に弊社作成(閲覧日:2021年3月22日)  https://www.bps.go.id/indikator/indikator/view_data/0000/data/62/website_55/1

 

インドネシアで生産量が一番多い果物はバナナで、年間726万トンもの量が生産されています。

果物においても、野菜と同じように2018年から2019年にかけて5種類全ての生産量が増えていることが分かります。

輸出額が一番多い果物はマンゴーで、2019年の輸出額は3億4610万米ドルに達しました。インドネシアはインド・中国・タイ・メキシコに次ぐ世界第5位のマンゴー生産国です。インドネシアの農業大臣は、マンゴーの品質を向上することでマンゴーを柱としてインドネシアの果物全体の輸出実績改善に繋がる可能性があると注目しています。

参考: https://mediaindonesia.com/ekonomi/272029/ekspor-mangga-indonesia-rambah-pasar-dunia#:~:text=SEBANYAK%20291%2C5%20ton%20buah,nilai%20transaksi%20mencapai%20Rp489%20miliar

 

薬用植物

インドネシアで生産量が多い薬用植物の上位5種類は下図の通りです。

出典:Produksi Tanaman Biofarmaka (Obat)を基に弊社作成(閲覧日:2021年3月22日) https://www.bps.go.id/indikator/indikator/view_data/0000/data/63/website_55/1

 

インドネシアで生産量が一番多い薬用植物は生姜です。生姜は香辛料や薬用の食品によく使われる他、コスメなどの美容品にも使用されています。

また、2018年から2019年にかけてターメリックの生産量が約7万トン伸びていることが上図から読み取れます。その他の薬用植物も増加傾向にあります。

コロナ禍において、薬用植物は免疫力を上げるという点で注目されており、インドネシアの複数の地域で薬用植物の開発金が支給されています。

インドネシアの薬用植物の開発・生産が今後どうなっていくか注目が集まっています。

参考: https://www.ayojakarta.com/read/2020/04/18/15819/prospek-tanaman-obat-makin-menjanjikan-di-tengah-pandemi-covid-19

 

観賞植物

インドネシアで生産量が多い観賞植物の上位5種類は下図の通りです。

出典:Produksi Tanaman Florikultura (Hias)を基に弊社作成(閲覧日:2021年3月22日) https://www.bps.go.id/indikator/indikator/view_data/0000/data/64/website_55/1

 

インドネシアの経済成長に伴い地域社会の環境整備が盛んになったことで、観賞植物の需要が高まっています。インドネシアで一番生産量が多い観賞植物は菊で、インドネシアの観賞植物の総生産量の約50%に相当します。

菊の輸出が多い国は日本で、2019年は年間で48トンの菊が日本へ輸出されています。また、インドネシアの高地では、土地の気候を活かし薔薇の栽培も盛んに行われています。

今後、インドネシアの経済成長とともに購買力が向上、選択肢が増えることから、観賞植物の需要の増加が予想されています。また、輸出のニーズが高いとして、今後商業的な開発などを積極的に行っていくとインドネシア農業大臣は発言しています。

参考WEBサイト:https://www.alinea.id/bisnis/kementan-yakin-ekspor-benih-tanaman-hias-tetap-langgeng-b1ZVl9xPc
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2020/10/23/ragam-jenis-bunga-dominasi-produksi-tanaman-hias-indonesia

 

今回は、インドネシアの園芸作物についてご紹介いたしました。

園芸作物の生産量や輸出入額を知ることでインドネシアにおける園芸事業の今後の課題が見えてきました。

野菜の中で一番輸入額が多いニンニクについて、農業省は2024年までに輸入への依存を減らし国内の生産で賄うことを目標としニンニクの自給自足プログラムに取り組んでいます。ニンニクの自給自足を達成するために土地を拡張するうえで様々な技術が必要となるため、日本企業にとって大きなビジネスチャンスがあると考えられます。

インドネシアの経済成長とともに変化していく園芸分野の動向は今後も目が離せません。

参考WEBサイト:https://repository.ipb.ac.id/handle/123456789/96339
https://news.harianjogja.com/read/2020/08/23/500/1047833/kebutuhan-bawang-putih-indonesia-500.000-ton-produksinya-nasional-hanya-88.000-ton

 

弊社はインドネシアの視察、調査、専門家インタビューなど実績が多数ございます。

ご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

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