【コラム】冷凍食品の人気が高まるインドネシア

冷凍食品は日本でもその手軽さや保存期間の長さなどから、仕事で忙しい人や学生などを中心に老若男女問わず根強いニーズがあります。

インドネシアでも、新型コロナウイルス感染拡大や調理に時間や手間がかからない手軽さなどの理由から冷凍食品の人気が高まっています。

今回のコラムでは、インドネシアにおいて冷凍食品の人気が高まった背景や、インドネシアの人々の食に対する考え方の変化についてご説明します。

 

インドネシア人の食費とその内訳

2019年のインドネシア中央統計庁(BPS)のデータによれば、インドネシア全体でみた場合の国民一人当たりの月の食費平均は593,450ルピアとなっています。

もう少し詳しくみてみると、インドネシアの都市部の人々の食費平均は660,289ルピア、農村部の人々の食費平均は508,685ルピアとなっており、少々開きがあることがわかります。

出典:インドネシア中央統計庁、Pungeluaran untuk Konsumsi Penduduk Indonesia per Provinsi, September 2016-2019を基に弊社作成https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi-september-2019.html

また、以下は食費の内訳を表しています。

 

この表からも分かるように、都市部・農村部のどちらでも加工済み調理食品の占める割合が非常に多くなっています。

インドネシア人は外食好きが多く、毎食全て自炊するというよりも、時々外食をしたり、飲食店やデリバリー、スーパーなどで加工済み調理食品を購入して食事を済ませたりする文化が定着していることが分かります。

以下のグラフはインドネシア国民の食費のうち、加工調理済み食品や飲料が占める割合を経済層ごとに表したものとなっています。

出典:インドネシア中央統計庁、Pengeluaran Untuk Konsumsi Penduduk Indonesia 2018「インドネシア人の消費と支出 2019」
より弊社作成(閲覧日:2020年9月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/06/29/a0c51afcd2c799871ed40f19/pengeluaran-untuk-konsumsi-penduduk-indonesia-per-provinsi-september-2019.html

経済層は以下のように分類されています。

・Quintile 1…最貧困層

・Quintile 2…貧困層

・Quintile 3…中間層

・Quintile 4…上位中間層

・Quintile 5…富裕層

 

どの経済層をみても加工調理済み食品や飲料が食費の中で占める割合は非常に大きく、傾向としては経済レベルが上がれば上がるほど家計の中で食費が占める割合が増加しています。

インドネシアは現在もなお成長し続けている国であり、更に特に中間層以上に食生活はますます多様化しているため、将来的にみてもさらにこの割合は増加することが見込めるでしょう。

加工調理済み調理食品に焦点を当ててみると、インドネシア人の1ヶ月あたりの消費の内にそれらが占める割合には年々上昇している傾向が見られます。

出典:インドネシア中央統計庁、Persentase Pengeluaran Rata-rata per Kapita Sebulan Menurut Kelompok Barang,Indonesia, 1999, 2002-2018
を基に弊社作成
https://www.bps.go.id/statictable/2009/06/15/937/persentase-pengeluaran-rata-rata-per-kapita-sebulan-menurut-kelompok-barang-indonesia-1999-2002-2018.html

 

このようなデータからインドネシア国民にとって加工調理済食品は重要な位置付けにあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

電子レンジの普及率

日本の冷凍食品といえば、電子レンジを使用して調理を行うことが主流だと思いますが、インドネシアの家庭における電子レンジの普及率とはどの程度なのでしょうか。

 

2017年9月に日本貿易振興機構(JETRO)が作成したレポート「拡大するASEAN市場へのサービス業進出〜地域横断的な視点からサービス業進出・拡大の方策を探る〜」(https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/111ae1b02e810d00.html)によれば、2015年におけるインドネシアの各家庭での電子レンジ普及率は1.7%であり、主要都市をみてみても首都ジ
ャカルタでは3.7%、ジャカルタに次いでインドネシア第2の都市と言われるスラバヤでも1.8%となっ
ています。

日本人の視点では冷凍食品=電子レンジと結びつけやすいですが、インドネシアでは冷凍食品を購入した後に自宅で焼く、揚げる、煮るなどの調理工程を挟んで食べることが多いため、電子レンジの普及率が低いことによって冷凍食品の家庭での調理に大きな問題を及ぼしているというわけではなさそうです。

 

インドネシアの人々の食習慣

インドネシアでは伝統的に米を主食にしていたものの、経済成長やそれにおける中間層の拡大によってインドネシアの人々の食習慣が多様化しました。

依然として米を主食としているものの、米の消費量は年々減少しています。

出典:index mundi、Indonesia Milled Rice Domestic Comsumption by Yearを基に弊社作成
https://www.indexmundi.com/agriculture/?country=id&commodity=milled-rice&graph=domestic-consumption

 

また、インドネシアの中で全体の8%程度を占める富裕層と呼ばれる人たちは、ジャカルタに多く集中しており、ジャカルタの人口のうち約30%程度が富裕層と言われています。

富裕層の人々の生活は多忙とされており、更に金銭面でも余裕があるため、惣菜やテイクアウトフード、デリバリーフード、外食などを幅広く利用しています。

また、富裕層だけでなく、近年急増している中間層もインドネシアの市場を考える上で非常に重要な存在でありますが、特に若い世代が多いインドネシア中間層の間では、購買力の増加から食に対してより多様性を求めるようになりました。

その結果が、現在のインドネシアの健康ブームなどにも寄与しています。

インドネシアの健康に関しては、以下のコラムをご覧ください。

 

先ほども説明させていただいた通り、インドネシアの人々は外食を好む傾向にあるため、富裕層のみに止まらず、インドネシアの低~中間層の人々も、1食100円程度で利用できるワルンやカキリマといった屋台などを利用して、日々の食事をとっています。

特にジャカルタなどの都市部ではひどい渋滞のせいで、時間帯やエリアによってはなかなか気軽に外食しにいけないこともあり、近年オンライン交通サービスのGojekやGrabが展開するGoFoodやGrabFoodなどのフードデリバリーサービスも非常に盛んになっています。

比較的単価が安いメニューも多い上、自宅にいながらオンラインで注文できるため、特にジャカルタなどの都市部においてここ数年で市場が急激に拡大しています。

最近では、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための外出自粛要請の状況も受け、一度購入すれば保存がきき、頻繁に買い足さなくても済む冷凍食品の需要が更に伸びました。

 

新型コロナウイルス感染拡大の食への影響

インドネシアにおいて冷凍食品の人気が高まった理由のひとつに新型コロナウイルスが挙げられます。

インドネシアでジャカルタを始めとするいくつかの州や県にて、2020年4月から「大規模な社会規制(PSBB)」が出されており、規制は緩和されつつも現在も尚政府はPSBBの延長を続けております。

PSBBの影響を受け、インドネシア国民の外出頻度はコロナ禍以前と比較すると大幅に減少しました。

現在は徐々に変化してきつつありますが、日本と同じようにテレワークを行う人々も多くいるようです。

そういった理由からレストランなどの売上は減少傾向にあり、その一方でデリバリーや冷凍食品といったものの売上は上昇傾向にあります。

売上が減少したレストランの中には、冷凍食品の販売やデリバリーを新たに始めるところもあり、インドネシアのファストフードチェーン「Es Teler 77」は2020年5月上旬に自社のホームページにて新型コロナウイルス拡大を受け、衛生的かつ清潔、簡単に調理ができて手頃な価格の食べ物に対する市場のニーズに応え、冷凍食品や調理済み食品、ケータリングなどを開始したと述べています。

地域に制限はあるものの、自宅まで直接配送してくれるため、この外出を控えるコロナ下の状況ではもってこいのサービスだと言えるでしょう。

画像引用:https://www.esteler77.com/news/read/es-teler-77-hadirkan-frozen-food-ready-to-eat-ready-to-cook-dan-

 

また、外食を好む人の多いインドネシアでは、ワルンといった屋台やレストランが多く存在しています。

コロナの影響で積極的に家の外に出なくなったのにも関わらず、家で食事を作る習慣がない人も多いインドネシアの人々にとって、冷凍食品は食事の選択肢の一つとして、今後さらにインドネシアの人々の生活に浸透していくのではないかと考えられます。

一見、コロナの影響でなかなか外食ができないとなると、食事の選択肢が狭まったのではないかと考える人も多いかもしれませんが、外食ほど手軽とはいかないものの、種類も豊富で調理も簡単な冷凍食品の本格的な台頭がインドネシアの人々にとって非常にニーズのあるものだということが分かるでしょう。

また、インドネシアの人々は、日本人と比較すると独立開業傾向、個人でのビジネス開始に意欲がある人が多く、コロナ禍においても、個人レベルでのビジネスや副業として、冷凍食品の販売を開始した人も多くいるようです。

コロナ以降、「コロナ禍で冷凍食品ビジネスを成功させる方法」といったインドネシア語でのWEBサイトが多く見受けられるようになりました。

 

ビジネス的な側面からみる冷凍食品

ビジネス的な側面からみる冷凍食品を見てみると、食生活が多様化している現在、冷凍食品ビジネスは非常に需要が高いビジネスの一つであると言えます。

他の飲食店ビジネスをスタートするのに比べて冷凍食品ビジネスは初期投資費用が非常に安く、家族経営で冷凍食品ビジネスを始める人もいるようです。

また、インドネシアの冷凍食品ビジネスはまだまだ新興市場である上、インドネシア国内における冷凍食品需要は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてさらに増加傾向にあるため、今後もさらにホットになっていくビジネスであると言えます。

先ほども述べたように、ファストフードチェーン店が冷凍食品のデリバリー販売を始めたり、家族経営で冷凍食品を販売する人々が台頭したりと、手軽に始めやすいビジネスとして冷凍食品ビジネスは注目を集めています。

 

まとめ

「手軽に安く美味しい食事を食べたい」という思考の強いインドネシアの人々にとって冷凍食品は非常にニーズのあるものであると同時に、まだまだ発展段階であるため、今後より一層冷凍食品の種類や調理方法に多様性が生まれるのではないかと推測できます。

新型コロナウイルスの影響を受け、外食が主流だったインドネシアの人々の「食」の中に冷凍食品が参入してきました。コロナで先が見えない中、食は人の生活に欠かせないものであるため、冷凍食品の人気は今後も高まっていくのではないでしょうか。

弊社では、インドネシアにおける冷凍食品や食に関する最新情報、オンライでの視察代行、調査代行なども承っております。

ご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

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